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教育が子どもの未来を拓く/ドキュメンタリー映画『世界のはしっこ、小さな教室』
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教育が子どもの未来を拓く〜ドキュメンタリー映画『世界のはしっこ、小さな教室』

笠原真弓


© Winds - France 2 Cinéma - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendôme Production

 題名の通りである。世界には、こんな学校もあるのだ、こんな先生もいるのだと驚きつつ、一方ではあるだろうな、頑張ってほしいとも思えるのだった。

 登場するのはアフリカのブルキナファソ(未完成校舎、先生の宿舎もドアナシ、井戸は故障中、電気ナシ)、シベリア(トナカイのソリに机や教材を積んで各地を回る)、バングラディシュの小学校(少し大きめの船が校舎で集落に横付けして授業をする)。3カ所とも、全学年を一人で教えている。世界には、15歳以上の7人に1人(7億7300万人)が、読み書きができないという。ブルキナファソの村に行った女性は、先生になって初めての赴任先だ。自分の小さな子どもを母親に預けて何カ月も会えない。

 教える子どもたちは、様々な言語を持ち、公用語の1つのフランス語を少し理解できる子が50人のうちたった一人。先生は自費でソーラパネルを買い、夜も子どもの勉強をみる。

 シベリアでは、子ども2人を寄宿舎に預けて、トナカイのソリにテントも教材も積んで、10日ずつ移動しながら、遊牧民の子どもたちに教えている。彼らには、ただ読み書きだけでなく、トナカイを操ったり、氷に穴をあけて釣りをする技術も教える。それは、先生自身が6歳から寄宿生活だったため、民族としての生きる文化が伝わっていないことに対する悔やみがあるから。成績と環境が整えば、中学から寄宿生活になる彼らに、将来村に帰るという選択肢も残すためと先生は言う。

 少し大きな船が教室というバングラディシュの学校。学ぶことに飢えた子どもたちはどんどん吸収し、賢くなっていくと。とはいえ、古い因習が子どもたちを縛る。児童婚は禁止されていると子どもたちも知りながら、まさにその危機にいる少女がいる。その母親を説得し続け先生。中学の制服を着た少女の希望に輝く顔は見られるのか!ブルキナファソの学校では、フランス語の他にもう一つ公用語があり、その言語で詩まで作れるようになった生徒たちの顔が、輝いていくのだった。

 3人の先生が全員女性だったのは、偶然ではないだろう。教育が子どもの未来を拓くという事実を抑圧されている女性であるがゆえに、よく知っているからだろう。だからこそ、子どもらに学ばせたいという強い動機があり、その思いが映画を観る人にも伝わってきたのだと思う。

*2021年製作/82分/フランス作品 監督:エミリー・テロン
 7/21(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開


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