本文の先頭へ
LNJ Logo リベラリズムという種を撒こう!/「レイバーネットTV」参院選前に日仏ディスカッション
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 0615hokoku
Status: published
View


リベラリズムという種を撒こう!〜「レイバーネットTV」参院選前に日仏ディスカッション

●レイバーネットTV・第170号放送
 特集: 「崖っぷちの九条―参院選をどう見るか」
 放送日 2022年6月15日(水)19.30一20.40

アーカイブ録画(70分)

今回のレイバーネットTVのテーマはこれまでと違いワンテーマ、選挙のみです。参議院選の公示日は6月22日、投票日は7月10日に迫り、公示と同時に期日前投票が始まります。それなのに立憲野党の統一行動の盛り上がりに欠け、護憲派の間からも9条を守るどころか、攻撃に備えて日本も軍備増強だと聞こえてきます。ここではそんな状況を受けて「崖っぷちの九条―参院選をどう見るか」を テーマに、日本の状況を纐纈篤(こうけつあつし)さんに、オンラインでパリからフランス国民議会選挙のホットな話を伺いました。開口一番に纐纈さんが語った「改憲・護憲の議論は、今回が最後になるかもしれない!」という言葉には、寒気がしました。ではどのように今の状況を切り抜け、切り込んでいったらいいのか、番組では日仏をつないで、大ディスカッションになりました。(報告:笠原眞弓)

◆崖っぷちの九条―参院選をどう見るか

・司会=根岸恵子
・スタジオゲスト=纐纈厚(山口大学名誉教授・「共同テーブル」発起人)
・フランスゲスト=飛幡祐規(たかはたゆうき:ライター)、辻俊子(反原発活動:よそものネット)

◇7月の参議院選挙で、改憲勢力はどうなるのか

「この夏の選挙が、改憲か護憲かの議論をする最後の刻を迎えているかもしれない」と纐纈厚さんは開口一番強い口調で語り始める。私たちの投票行動によって、ファシストに乗っ取られるのか、我々民主主義者がこの憲法を握り返すのか! 選挙後にドアを開けたときに、そこにファシズムに汚染された国が忽然と現れるのか、と激しい言葉を重ね、危機を浮き彫りにしていった。今、動かなければ、今、書かなければ、今、話さなければ、おそらく指先からすり落ちて、2度と自分のような民主主義者の出番はやってこないのでないか。切迫した悲壮感から出ている彼の言葉は力強い。その原点は、父親の兄3人の軍人としての戦死だという。一方、リアルな戦争体験のない今の人たちの非戦の想いは弱くなるという。

◇左派共闘のフランスの国民議会選の第一回投票から

フランスの国民議会の投票は2回ある。放送の直前の6月12日にあった国民議会選挙をレイバーネット日本の仲間でもある飛幡祐規さんと辻俊子さんにレポートしていただいた。まずフランスの選挙制度の説明から始まった。大統領の任期が議会の勢力とのねじりを防ぐために7年から5年に変り、議会の任期とほぼ同じになってから、国民議会選挙の投票率が70%以上あったのに50%を切るまで落ちたという。しかも左派も新自由主義(ネオリベラル)政策をしたために、貧富の差がさらに開き、庶民層の政治離れが進んだ。

その中で、公共の財産を守り、格差の是正などを掲げる「屈しないフランス」のリーダー・メランションが期待されて左派連合NUPES(ニュップス)をつくることができ、総選挙に統一候補を立てられたことは画期的という。しかも、第1回投票の結果、僅差とはいえニュップスがトップになった。557議席のうち 406のニュップスの議員が第2回投票(7/19投票)に残っている。フランスは、過半数の議席が取れたら首相はその党から出せる。その仕組みを利用しての新自由主義やファシズムに対抗し、ヨーロッパで関心の高い気候問題(あと3年しか地球はもたない)など市民生活を守ることを挙げて居るのが「ニュップス」である。

◇扇動政治に踊らされている日本 

纐纈さんは、翻って日本は政府もマスメディアも、ウクライナ・ロシアの戦争を前面に立て、国防だ、防衛だ、自衛隊増強だと騒き、国内で起きている国家の大問題である少子高齢化、貧困化、差別の問題を隠している。それを「扇動政治」と指摘する。

◇野党共闘のできない今回の参議院選 フランスはどうか

野党共闘は、2016年の参議院選挙で36ある1人区全部で共闘が出来た。だが、今回は現在、12しかないと纐纈さん。

フランスでも共闘しにくいのは同じと、飛幡さん。2017年に315/557議席をマクロン側が制し新自由主義政治が行われた5年があった。その間にはコロナ禍があり、さらに貧富の差が開いた。そのことが、今回の共闘につながったという。フランスは市民運動のなかで、全国5人の億万長者が下から40%の人の資産を持っていると明らかにされた。市民生活の不具合が、現政権の進める新自由主義から来ていると明らかにされ、野党が共闘しようという動きになった。

◇参加しやすい市民運動

パリの北に住む辻俊子さんは、前回メランションが負けて若者が離れたが、今回トップだったので若者が戻ってきたという。12議席あるうち10議席を2回目の投票で争うというのだが、市民活動への参加方法もネットに詳しく、できる時間にビラ配りや家庭訪問(フランスでは許可されている)などしているそうだ。外国籍の辻さんも市民運動に参加したところ、原発の話などから場を与えられたという。

◇フランスは市民と政治が近いのに比べて日本は離れているのでは?

日本の近代国家の成り立ちを見れば明らかで、武士から武士へのクーデターに過ぎなかったし、明治維新以降も自分たちの力で政治を変えたというと感覚がないというのは、纐纈さん。だから政治が他人事になっている。戦後の護憲運動も、その点が薄かったと続ける。

◆〈休憩〉ジョニーH・乱鬼龍の歌と川柳

・ジョニーHさんの歌は、加川良の「戦争しましょう」を元歌に。この歌を初めて聞いた15歳のとき反発をしたが、聞くうちに違う思いが湧いてきたという。

・乱鬼龍さんの今月の川柳は「崖っぷちどころか破局まっしぐら」

◇第2部:どうしたら社会を変えていくことができるのか

・世界の貧富の差の広がり 

飛幡さんは、ヨーロッパはグローバルな金融資本主義社会で、2009年からの10年間で富裕層が豊かになり、さらにコロナで援助もあり大富豪になり、900万人が貧困層で、若者たちの貧困はひどいという。それなのに、金融資産の利益の税率を他の所得と同じような低く抑えている。さらに税制、タックスヘイブンなどで、富裕層はさらに優遇されているという。しかも福祉国家であったがそれもどんどん貧困化していると。

・纐纈さんは、日本の大学で弁当を配った経験から世界の貧困化を語る

100人くらいと思ったら、300人も来て、足りなくなった。涙が出たと。中流層の人たちにも貧困が広がり、食えないだけでなく、精神的にも追い詰められて子どもへの虐待などに表れて来るのではないかと指摘。これは、日本国内だけでなく、アメリカもフランスも世界に広がっている。

そして、今のウクライナ・ロシア戦争につながっていく。儲けは各国の武器商人。アメリカが軍事産業の利潤率が20%から22%上がった。この戦争が長く続くことを欲すると、日本を含めた各国の武器商人は公言していると怒りを込めて語る。

・フランスのメディアの寡占化にも話が及ぶ

驚くことに、極右の9人が、90%のメディアを握り、女性差別を含むヘイト放送を繰り返していると飛幡さん。一方、日本の言論の自由度は、世界で122位とは、纐纈さん。続けて、日本のメディアもフランスと同じようだという。つまり、櫻井よしこさんには言論の自由があるが、私(纐纈さん)や佐高信さんにはないと。

◇メランションの魅力はどこに?

メランションの魅力は「若い人を引き付けた」にあると飛幡さんは答える。彼は社会党にいたが、EUの新自由主義の受け入れに関する国民投票をした際、55%の反対があったにもかかわらず、サルコジはじめ社会党も受け入れてしまった。そこから彼は新しく政策綱領をつくり始める。若者の関心のある環境問題やLGBT、フェミニズムなどに力を入れ、デジタルに強い若者を起用してその層に分かりやすい、取り組みやすい政策綱領を示していった。「人間同士の調和と自然との調和」をスローガンにして、メランション自身もそれを通して進化したと言えると。

人間は競争していると滅びる。私たちの求めているのは、誰でも尊厳を持ち、差別なく、美を享受する権利がある。そんな社会を求めると。そこが、若者に響くのではないかと力をこめる。フランスの開かれた市民運動の体験者である司会の根岸さんも思わず、人間とのハーモニーを大切にして開かれた彼らの世界に対して、日本ではなぜそれが出来ないのかという。

◇脱資本主義、いのちの安全保障を参議院選のスローガンにしよう!

資本主義はモノとカネの世界で、人間は介在しない。人間を排除するほど、資本主義は大きくなる。戦争に日本が負けたとき、その原因をアメリカのようにモノづくりを怠ったからだと総括した。それが間違えの元。いったんは豊かになったが、周辺国が豊かになると、日本の基からあった貧困が表面化してきた。

そこで纐纈さんたちが行っている「共同テーブル」で掲げるスローガンが「いのちの安全保障論」だ。そこには、気候、食料、教育、文化のそれぞれの問題が含まれ、それらをお互いに生かしあうことで、人間の存在が光輝くと説く。

それは当然、脱軍事、脱原発、最終的には脱資本主義だ。野党共闘の中で、それを議論していこうというのだが、なかなか学ぶことが難しい。アメリカにサンダースがいる、イギリスにも、フランスにも、ドイツにもいる。日本にもそういう人が出てきたら、支えたい。

辻さんは、確かに若者が戻ってきたのは、この運動の柔軟さではないか。メランション自身が、柔軟さを保っていることは大きい。ただしフランス全体としては、棄権率の高さから楽観できない。メランションも若者に投票を促し、後で泣き言は言うなと釘を刺したとか。

飛幡さんは、若者に対して、全ての大学生と職業高校の学生に毎月15万円近くを支給するという政策をここ10年、バッシングに負けずに打ち出している。それに加え、文化的価値を大事にしたいという。また人口の半数を占める女性差別にも取り組んでほしいという。

纐纈さんは、学生に常に言っているのは、いのちは与えられたものだ、そのいのちを育てるのは己自身である。そして政治を武器に自らのいのちを燃やせと。今すでにファシズムという汚い花が咲き始めているかもしれない。それをみんなで摘み取って、リベラリズムという種を撒こうと激を飛ばした。

この7月の参議院選のスローガンは、反戦を含め「いのちの安全保障」「いのちを守る」を争点にしていきたいと締めくくった。

・レイバーネットTVは7、8月はお休みし、次回は9月です。

*スタジオ写真=小林未来


Created by staff01. Last modified on 2022-06-19 14:05:44 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について