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ウィシュマさん死亡事件から1年〜「収容やめろ!」約300人が東京入管前でデモ

報告=松本浩美

 名古屋入管でスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなってから1年が経った。3月5日および6日には彼女を追悼し、事件の真相究明と入管体制に抗議するアクションが全国10か所で開催。6日には全国で約600人が参加した。

 東京では約300人が集まり、集会とデモ行進が行われた。場所は入管収容施設の近くにある品川北埠頭公園。集会では、ウィシュマさんの妹、ワヨミさんからのメッセージが代読された。

「姉ウィシュマが亡くなってから1年が過ぎたが、魂がさまよっている感じがする。入管は姉を死なせてしまったのに、責任を認めようとしない。とても悲しい。これ以上人の命がうばわれないように、入管には再発防止を求める」

 また、山添拓参議院議員(日本共産党)もスピーチを行った。
「議員に一部開示されたビデオ(ウィシュマさんの亡くなるまでを映した映像)を観て感じたのは、入管職員がとても明るかったこと。息も絶え絶えの人に対してとは思えない。組織として被収容者を人間として扱っていない。在留資格のない人は収容してしまえという入管行政が職員の感情も変えているのではないか」

 その後、参加者全員で黙とうをささげ、ウィシュマさんの冥福を祈った。

●「がんばれ!」デモ参加者が被収容者にエール

 公園を出発したデモ隊が入管収容施設建物に近づくと、参加者はプラカを大きく掲げたり、手を振りはじめた。すると、建物からは「オーッ!」という歓声が。収容されている人たちによる声だ。デモ隊に向かって手を振る人の姿も。

 主催者は「ただいまは〇ブロック、〇階の人たちが手を振っています。皆さん、応えてください」とアナウンス。参加者は「おーい!」「がんばれ!」と被収容者に向かって激励。

 デモ隊が建物の正面玄関に差し掛かったあたりから、参加者の間から「収容やめろ!」のコールが自然と湧きあがった。 ちなみに、現在、品川の入管収容施設に収容されているのは30人ほど。コロナ感染対策で仮放免が進み、1部屋に1人が割り当てられているという。

●私たちは人間。普通の暮らしがしたいだけ

 終了後の集会では、参加した団体・個人から連帯のスピーチが行われた。いくつか紹介する。

〇仮放免者(難民申請するも不認定)

・エリザベスさん(ナイジェリア出身・90年代に来日)
「被収容者の面会活動を行っている。ウィシュマさんから何度も電話がきた。病気だと言われ、行きたかったが入管からダメと言われた(仮放免の場合、県外に出るのに入管の許可が必要)。日本政府はウクライナ難民に来てくださいと言っている。日本に難民はいっぱいいるがビザを出さない。仕事も食べ物もない。だから、私のところに毎日電話が来る。差別をやめてほしい」

・Mさん(コロンビア出身・1995年来日)
「入管に収容されると、何年になるかわからない。刑務所だと決まっているし、もう一度社会に出て、いい人になるチャンスがある。でも、私たちはいつ出られるかわからなくて、心と体の健康が悪くなる。自分の国には問題があって帰れない。私たちは自分の人生を守るためにここにいる。日本で普通の生活がしたい。私はみんなと同じ、普通の人。みんなで新しい未来をつくりましょう」

・ミョーさん(ミャンマー出身/ロヒンギャ族・2006年来日)
「去年2月1日ミャンマーでクーデターが起こった時、収容施設の中にいた。そのニュースを聞いて、ショックを受けた。その後、ウィシュマさんが亡くなったと聞いて、さらにショックを受けた。自分たちも収容施設で亡くなるかもしれないのか。そこまで思いつめた。私たちも人間です。いろんな国から逃げてきた。その国の助けを求めてきた。仮放免の人たちが普通に社会に働ける、移動できる、普通に生活できるビザを出してほしい」

〇NAOMIさん(仮放免者の在留資格を求める日本人配偶者の会)
「夫はスリランカ人。17年前に出会い、6年前に結婚した。結婚して6年も経ったが、入管はビザを出してくれない。入管は、在留資格のない男性と結婚した私が悪いとばかりに、夫を国に帰しなさい、と私にプレッシャーをかけてくる。仮放免だと、いつ収容されるかわからず、おびえた生活を送っている。仮放免で外に出ても、一切自由はない。就労禁止、社会保障なし。生活が苦しくても生活保護は利用できず、健康保険にも入れない。夫には、コロナによる特別定額給付金10万円も支給されなかった。私たちはビザを出してもらって、ただ普通に働き、幸せな結婚生活を送りたいだけ。日本人と結婚してもビザがもらえず、苦しんでいる人たちがたくさんいることを知ってほしい」

●在日コリアンに対する差別から始まった入管法

〇金誠明さん(在日本朝鮮留学生同盟/在日朝鮮人3世)
「僕も入管へ行くことがあるが、窓口のレベルでも非人間的な扱いをされることがある。在日朝鮮人として、民族差別、外国人排斥の根底には日本の戦前、敗戦直後からの歴史があると強く感じる。戦後、在日朝鮮人を管理するためにできたのが外国人登録令、出入国管理令で、今の入管法につながった。今から70年以上前、在日朝鮮人たちは『強制送還やめろ』『入管への隔離はやめろ』『人権侵害やめろ』とずっと言い続けてきた。しかし、高校無償化から朝鮮学校が排除されたり、在日朝鮮人集住地区で放火が起こったり、民族団体の建物に銃弾が撃ち込まれたり、今なお差別と迫害は続いている。私たちが声を集めて、日本政府・社会に対して差別と排除はいけない、人権を守れと強く訴えていく必要がある」

〇慎民子さん(一般社団法人「ほうせんか」理事/在日韓国人2世)

「私は戦後生まれだが、子どもの頃から入管法にいじめられてきた。いつ捕まるかもしれないという恐怖を持ちながら生きてきた時代があった。若い頃入管法に反対するための活動してきたが、事件を知り、21世紀になってもまだこんなことが起こっているのか、本日はノーを伝えにきた。関東大震災の時、ヘイトクライムが起こり、6000人の朝鮮人、700人の中国人が殺された。ヘイトスピーチは今でも続いていて、外国人攻撃が行われている。私たちはこれを繰り返さないために、一緒にプンムルノリを演奏したりして、交流している。民間での差別も、国の政策も同じ次元の問題であることを言いたい」

●死の責任は入管本庁にある

 最後に、抗議アクション主催団体の1つBOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)のメンバー、加納茜さん(上智大学2年/写真下)が代表して今後の決意を述べた。

「ウィシュマさんの死を引き起こした責任は入管本庁、そして人命より送還を優先する『送還一本やり方針』にある。入管庁は、長期収容し、被収容者に『こんなところにいるのはもう嫌』と思い知らせて、自ら帰国へと仕向けることが正しい処遇だと認識している。これが改められない限り、人権侵害は続く。真相究明を求めるウィシュマさんのご遺族、在留資格を失っても帰国できない事情を抱え、過酷な状況に置かれている多くの被収容者、仮放免者の切実な声に連帯し、入管行政の抜本的改革を強く求める」


Created by staff01. Last modified on 2022-03-08 23:55:28 Copyright: Default

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