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深刻なアマゾンの環境破壊と水俣病/TBSテレビ「報道特集」を観て
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深刻なアマゾンの環境破壊と水俣病〜TBSテレビ「報道特集」を観て

印鑰 智哉(いんやくともや)

 TBSテレビ「報道特集」(1/29)がアマゾンでの環境破壊、中でも水俣病が深刻になりつつある問題を取り上げた。特集「南米アマゾン 環境破壊の実態」。「朝日新聞」がアマゾン破壊の原因は貧困であるかのように問題を歪曲した記事を出した後だったので、身構えて見た。しかし、「朝日新聞」とは違って、しっかりとした報道だった。危険な現場に踏み込み取材したことは高く評価できる。でも、やはりもどかしさは残った。

 アマゾンには金や石油など豊富な鉱物資源がある。先住民族の土地として確定している土地への許可無い立ち入りは違法だが、その土地に侵入して、金を盗掘する、その金の抽出のために水銀を使うため、盗掘が行われる河川流域で水銀汚染が広がっている。先住民族、そして多様な命が水銀汚染の影響を受けている。

 この特集で確か「新しい問題が広がっている」と言ったと思うのだが、決して新しい問題ではない。熊本大学の原田教授は90年代の初めにアマゾンに調査に入っていたはずだ。ブラジルのパラ連邦大学との共同研究も92年に始まっていたし、ブラジル在住の岡村淳さんがこの問題をドキュメンタリーにまとめたのも1992年だろう。もう30年ちかくにわたり、日本でも騒がれてきた。しかし、事態は近年急速に悪化している。原因はもちろん、アマゾン開発を公言する極右大統領ボルソナロ政権のせいだ。憲法で守られた先住民族の土地を開発を合法化しようとする憲法違反の法案が複数、議会にかけられている。

 調査によると、盗掘地域周辺の魚は100%水銀に汚染されている。そして、周辺住民にはその水銀によって水俣病と同様の症状が現れている。人びとは魚が水銀に汚染されているのを知っているが、生きていくためにはそれを食べるしかない。現政権はこの盗掘を止める行動に出ず、盗掘は拡大し続けている。今、手を打たなければさらに事態はさらに危険になる。アマゾンが死の世界になれば世界はどうなるのか?

 取材班は武装した盗掘作業を行う船団にも近づき映像を残している。発砲される危険もある中の映像は緊張感がある。その取材は高く評価したい。

 24分あまりの特集では当然、限界があるけれども、しかし、この金の盗掘を許しているものは何か、掘り下げは十分ではない。実際に「ブラジル政府はなんてひどいんだ」という反応が視聴者からは出てくることだろう。現政権がひどいのは確かだ。でもそれを支えているのは誰なのか、ということだ。ブラジル政府への国際的な批判が高まる中、日本政府はずっとこのブラジル政府を支持し続けている。買うものがいなくなれば金盗掘事業はストップする。この地球の環境を守るためには、買っているのは誰か、支えているのは誰か、肝心な問いをもっと掘り下げてほしかった。

・南米アマゾン 環境破壊の実態【報道特集】
https://www.youtube.com/watch?v=L8j7y9Ys7oY

・「朝日新聞」の問題ある記事についての僕のコメント
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/6065527006807412

*同氏のFB投稿より転載


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