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米国労働運動 : チームスターズ労組改革派が執行部に
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【解説】組合員130万人のチームスターズ労組で執行部選挙が全組合員の直接投票で行われ、改革派が勝利した。レイバー・ノーツ潮流の改革派コーカス(注1)「民主的労組を目指すチームスターズ」(TDU) と共闘する改革派が四半世紀ぶりに執行部の多数を占めることになった。チームスターズ労組は運輸や流通産業を組織化する全米第四の大労組であり、この選挙結果はアメリカ労働運動の動向に大きな影響を与えることが予想される。(レイバーネット国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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チームスターズ労組改革派が執行部に

アレクサンドラ・ブラックベリ (レイバーノーツ編集長)
2021年11月19日


*執行部選挙運動で職場の組合員に語り掛けるオブライエン次期委員長(右)

130万人の組合員を擁するチームスターズ労組で新しい執行部が選出された。今週行われた選挙の開票結果は、改革派コーカスのチームスターズ・ユナイテッド(注2)が旧執行部派を2対1で圧倒した。TDUの支援を受けた勢力がチームスターズ労組の執行部を担うのは、ほぼ四半世紀ぶりのことである。

次期委員長になるのは、ニューイングランド第10合同協議会のリーダーであるショーン・オブライエンである。オブライエン次期委員長は、最優先課題は雇用主に対抗するために草の根組合員を団結させること、アマゾンをはじめとする流通産業の大手を組織化すること、組合の要求を実現しない政治家への支援を止めることだ、と語る。

オブライエンは、アマゾンなどの組織化に不可欠なのは、チームスターズの現組合員にとって魅力的な労働協約を勝ち取ることだと主張する。「潜在的な組合員に対する最大のセールスポイントは、組合が勝ち取る労働協約の力をはっきりと見せることです。」「同じような産業で働く組合員を巻き込み、チームスターズに何ができるかを紹介する草の根キャンペーンを展開しなければなりません。そのためには皆が求めるような強い協約を交渉しなければなりません。」

2023年に予定されているUPS(注3)の協約交渉では、運転手の二層賃金を廃止し、パートタイマーの初任給を時給14ドルから20ドルに引き上げ、下請け化やUberのような独立自営運転手による配送を止めさせなければならない、と言う。必要ならばUPSに対してストライキを打つことを新執行部派は約束している。

5年前、オブライエンは、今年引退するジェームズ・P・ホッファ委員長の支持を受けて、東部地域協議会の副委員長になった。しかし2017年、オブライエンがUPSの交渉チームに反対派のリーダーであるフレッド・ザッカーマン(ローカル89の支部長)を加えるべきだと主張したため、ホッファは小包部門の責任者からオブライエンを罷免した。ズッカーマンは2016年のチームスターズ労組委員長選挙でホッファに後一歩まで迫っていた。今回の選挙の結果、ザッカーマンは財政書記長になる。   チームスターズ・ユナイテッドは、27人いる全国執行委員会の過半数を獲得した。

怒りの波

今回の執行部選挙は激しく争われたが、全組合員の投票率は15%にとどまった。チームスターズ・ユナイテッドの候補者であるジョン・パーマーは、「このように投票率が低いのは、現執行部が一般組合員から遊離しているからだ」と述べる。しかし、組織化が活発な所では違う。15,000人の組合員を擁するシカゴのローカル705では31%の投票率を達成し、その内95%の票がチームスターズ・ユナイテッドに集中した。

改革派の候補者たちは、弱い労働協約や譲歩戦術に対する組合員の怒りの波に乗って選挙運動を展開した。特に、チームスターズ労組の最大の交渉単位であるUPSでは、TDUをはじめとするチームスターズ・ユナイテッドの支持者が、二層賃金の運転手を生み出す労働協約に反対票を投じるようキャンペーンを展開した。UPSでは組合員による批准投票でその労働協約は批准されなかったが、ホッファ前委員長は反対が三分の二に達していないからという理由で労働協約を締結してしまった。TDUは「3分の2ルール」の廃止を要求して選挙戦の争点としたが、今年の大会で改革派がそれを実現した。

ホッファ前委員長が支援する候補者グルーブ、チームスター・パワーは、この労働協約は良いものだと主張し続けた。アトランタ、ダラス、シカゴ、ルイビル、ニューヨークの主要なUPSローカルでは、組合員の80〜95%がオブライエンに投票した。

2023年にはUPSでストライキ?

UPSの労働協約が切れる2023年8月は、それほど遠い話ではない。
「労働協約キャンペーンは基本的に協約開始初日から始める必要がある」とTDU運営委員の一人であるシカゴ・キャンペーン・コーディネーターのデイブ・バーントは言う。「組合員を協約交渉闘争に参加させ、その力を引き出すためには全国的に調整された協約闘争が必要です。」

ストライキの脅威をはったり以上のものにするには、「基本的なコミュニケーション」が必要だとバーントは言う。つまり、組合本部はメールやソーシャルメディアのような方法を使って、32万人のUPSチームスター組合員に交渉日程や何が当面の課題を知らせるべきだということだ。しかし、対面での訴えも大事だと言う。「執行部選挙運動の時と同じように、組合員と職場で中に話しかけてもらい、交渉に向けてどう準備すべきかを話してもらう必要があるのです。ストライキを準備するために大きな買い物は控え、お金を貯めておこう、と呼び掛けるのです」。(チームスターズは3億ドルのストライキ基金を持っているが何十年も使われたことがない、とオブライエンは言う。オブライエン次期委員長はそれを使うつもりである。)

TDUは残る

TDUのような改革グループが組合執行部と共闘するとどうなるのか。 「みんなが思っているよりもずっと単純です。」とバーントは言う。「私たちの戦略は今後も変わらないと思います。私たちの目標は、経営側との闘いに一般組合員を参加させることで、組合の力を高めることです。それは反対派だった時の目標であり、組合執行部を支える共闘の一員となった今も変わりません。」

TDUのリーダーたちは、組合にはもっと下から上がってくるリーダーが必要だと主張する。彼らを勇気づけ、育成することがTDUの使命である。

オブライエンは、今回の役員選挙活動でそれを支えた共闘の価値が証明されたと語った。「私はこの関係を気に入っており、今後も手を取り合って前向きに仕事をしていくことを約束しました」と語った。「TDU、チームスターズ・ユナイテッド、そしてすべてのチームスターズ組合員は、チームスターズ執行部の政策決定において重要な役割を果たすことになります。私はいつも人々にこう言っています。私はアイルランド系カトリック教徒として育ちましたが、食卓ではいつも意見の相違がありました。しかし、道理をわきまえた人々は、道理をわきまえた問題に対して道理をわきまえた解決策を見つけるものだ」と。

ニューヨークのUPS運転手でTDU運営員のユージン・ブラスウェルは、執行部選挙の開票が始まる前に、「すごく興奮しています」と語った。「私はUPSでの労働者人生を終えようとしています。最初に働き出した時、『ここを去る時は、来た時よりも良い状態で去らなければならない』と教えられました。ホッファのせいで、組合員を辞める時には完全に混乱した状態になっているのではないかといつも心配していました。しかし、今はトンネルの終わりに光が見えています。私は微力ながら貢献しました。自分の役割を果たしました。チームスターズ労組をより良い状態にして去ることができました」と語っている。

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注1)コーカスは労働組合の中での結社の自由を保障するために認められている組合員の独自組織。
注2)1976年に結成されたチームスターズ労組内の改革派コーカス。レイバー・ノーツと同じビルに事務所を置く。
注3)UPSはアメリカの大手貨物輸送会社。従業員48万人の内、32万人がチームスターズ労組の組合員。


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