「百姓という生き方は誇らしい」/菅野芳秀『七転八倒百姓記』を読む | |||||||
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「百姓という生き方は誇らしい」〜菅野芳秀『七転八倒百姓記』を読む堀切さとみ『七転八倒百姓記』を読んだ。菅野さんを知ったのは、レイバーネットTV第66号放送(2014年3月)だった。「百姓という生き方は誇らしい」。意気揚々と語る菅野さんに釘付けになってしまったが、そんな彼も若い頃は、田舎の生活がイヤでイヤでたまらなかったようだ。逃げるように東京の大学に入学し、その後、三里塚や沖縄と出会う。故郷(山形県長井市)に帰ったのは25歳の頃だ。父の後を継いで農業を始めた翌年に、第二次生産調整がやってきた。日本は食料自給率が低下の一途をたどっているが、実は1970年代から主食であるコメを政策的に減反し続けてきたのである。 このとき農水省が示したのは、九州全体の水田面積に匹敵する40万ヘクタールの田んぼを減らすことだったという。国は食管制度を見直し、日本の農業の土台である稲作を切捨てようと企てたのだ。全国の農協も自治体もはじめは反対したが「目標面積に届かなかった自治体には補助金を出さない」と言われ、反対の旗を降ろすようになる。そんな中で菅野さんはその年、長井市でたった一人、すべての田んぼに苗を植えた。 だいたい、自分の農地に何を作ろうが自由な筈だ。しかし「国の政策に逆らうな」と、地域の人たちが菅野さんを説得しに来る。村全体で目標を達成しても、一人でも減反に応じなければ補助金はもらえないからだ。 「誇りをもって土を耕していた農民の自尊心を傷つけた」。まだ農民一年生の菅野さんがそう思ったのにはわけがある。「今日からここを開墾しろ」と言われて入植した農民たちが、ある日突然「空港をつくるから出ていけ」と追いやられる。国策のために生殺与奪された三里塚と、苦労して農作業していた父親の姿が重なったのだ。 現在も減反政策は続いているが、例外がある。福島第一原発周辺でのコメ作りだけは優遇されているのだ。「福島県産」への不安は根強くある中で、ここで作った米は国が買い上げ、生産者を守るのだという。全国の農業や農民を切り捨てておきながら。このチグハグさが、私にはどうしても理解できない。この国はいったい、何を考えているのだろうか。 11月17日放送のレイバーネットTVが楽しみだ。 Created by staff01. Last modified on 2021-11-16 12:45:18 Copyright: Default |