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〔解説〕アメリカのコロナウィルス感染者数が世界最高になった。レイバーノーツ紙の4月号は発行しないことになり、初めてウェブ版が3月26日に掲載された。ウェブ会議も2回実施され、全国での多様な取り組みが報告され、集約されている。ここでは同じ3月26日にウェブサイトに掲載された別の記事を翻訳した。働く者の安全と生活確保を求めて職場放棄などの直接行動の広がりを伝えている。（レイバーネット日本国際部 山崎精一）
＊毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。

新型コロナウィルスからの防護を求めて職場放棄

＊3月24日デトロイトの市バス労働者は安全対策がない限り乗車拒否すると宣言した。終業後の消毒作業。

　新型コロナウィルス感染が広がる中で、働き続けている労働者の多くが自らの健康と安全を守り、危険手当を求めて行動を起こしている。その状況をまとめて報道する。

●「働く者の健康など気にしていない」

　ピッツバーグ・ポストガセット紙によるとピッツバーグ市の清掃労働者は3月25日、保護具と危険手当を求めて清掃局車庫の出入り口を清掃車で塞ぎ、ごみ収集作業を放棄し、集会を実施した。要求はマスク、ましな手袋、追加の作業靴の支給と、人員不足を解消するための人員配置である。

　労働者によると今週初めに職員の妻が陽性になったが、市当局は職員の健康対策を全く取らなかった。「当局が気にしているのはごみの収集だけだ。職員の健康など全然配慮していない。」と清掃労働者のフィッツロイ・モスは語る。ここの清掃労働者はチームスターズ労組ローカル249の組合員だ。2019年のゴミ収集車運転手の初任給は時給13.75ドルで同じ市の公務員の中では最低だった。

　3月23日、カナダオントリオ州ハミルトン市の70人の清掃労働者が作業拒否した。カナダ公共労組ローカル5167に所属する彼らはゴミ容器についたコロナウィルスは3日間死なないことを知り、ごみ収集を拒否した。食品残渣などはごみ投入時に飛び散ることがある。労働者たちは生ごみを袋に入れて収集し、保護具を支給することを求めている。

　3月24日、メーン州の6,800人が働く造船所バース鉄工所では半分以上の労働者が出勤しなかった。経営者は従業員の中にコロナ感染者が出たことを公表したが、海軍が同造船所を「必須産業」に指定したため通常どおり操業すると述べたことを受けての就業拒否であった。

●アマゾンでついに有給年休

　16日から始まる週に、アマゾン社はついに全ての倉庫労働者に有給の病気休暇と年次休暇を与えた。いくつかの配送センターで労働者たちが数カ月にわたって要求運動した結果である。「アマゾンは有給年休を与えてくれなかったので、実力で勝ち取ったのだ」とシカゴの配送センター労働者で組織されたアマゾニアン・ユナイテッドはその声明で述べている。シカゴのアマゾン労働者はコロナウィルス感染の前から有給年休を要求して運動しており、251人の署名を集め、年休要求のバッジを着用して管理者に押しかけ交渉を行った。

　アマゾンの膨大な流通配送ネットワークでは労働者保護を怠っていると、労働者たちは批判してきていた。これまでのところ全米6か所のアマゾン倉庫でコロナウィルス感染者が出ており、スペインとイタリヤでも感染が広がっている。

●鶏のために命を懸ける

　ジョージア州キャスリーンのパーデュー・ファーム養鶏所では労働組合員ではない50人の労働者が職場放棄した。「ここにはなんの補償もないし、清潔さもない。なんの手当もないし、何もない。ただ鶏のために命を危険に晒しているだけだ」とケンダリン・グランビルは語る。会社は夜の内に消毒したと言うが、朝出勤するとトイレも鶏舎の床も汚れたままだ。

　これまで積み重なった労働条件への不満の上にさらにこのコロナウィルスの危険が重なった。「給料も上げるし昇進もあると、言われてきたが何もなかった。もう我慢できない所まで来たんだ」ともう一人の労働者が語った。

　全米食品商業労組はカーギル食肉加工工場で働く組合員に、コロナウィルス感染が続く間、時給2ドルの賃上げを勝ち取った。スーパーで働く組合員には賃上げと有給休暇の上積みを交渉で勝ち取っている。スーパーチェーンのストップアンドショップでは時給10%アップを勝ち取り、同じくセイフウェーとメイヤーでは時給2ドルの引上げを実現した。

●生活破壊を許さない

　零細商店の営業停止が広がり無数の労働者が生活困窮に直面している。オレゴン州ポートランド市のクラッシュ・カフェとウーディーズ・カフェでは27人の従業員が一時解雇されたことに抗議して12人が座り込みを実施した。一時間後に全員逮捕されたが、その後、繰り越した年休分の賃金を支払うという経営者からの連絡を受けた。店が再開した時の再雇用と、出勤予定だった日数の賃金半額支給を要求しているが、まだ獲得できていない。同じポートランドにあるブードゥー・ドーナッツでは一時解雇に対して組合結成で対抗している。

　このコロナ危機に乗じてトランプ政権は全ての組合承認投票を4月3日まで延期すると発表した。投票を管理する連邦職員と公衆の安全が理由だと発表したが、なぜ郵便による投票ができないかは説明しなかった。

　アラバマ州バーミンガムの市バス労働者は都市交通労組ローカル725の組合員だが、3 月23日に通常の路線に乗車することを拒否した。このストライキを受けて当局は後部ドアからの乗客の乗車、運賃免除、乗員への手袋とマスク支給に合意した。これらは都市交通労組が全国の公営、私営交通に要求していた内容で、その他の項目は、
1. コロナウィルスの感染者、接触者、学校保育所などの閉鎖によりケアの必要な子供のいる労働者のためのパンデミック休暇
2. 操業削減の期間中の人員確保と賃金維持
3. 過密乗車を避けるための営業継続

　電信電話会社AT&Tでコロナウィルス感染中に働く全組合員のために給与の2割のボーナスを支給することを勝ち取ったと全米通信労組が発表した。電信電話産業は全米何千万人の在宅で勤務する労働者や授業をオンラインで受けている生徒にサービスを提供しているため、必須産業として認められている。

　労働省によると3月21日に終わる週の間に330万人が雇用保険の支給を請求した。これは史上最高の数字で、これまでの記録は1982年10月に請求した695,000人だった。3月25日に連邦上院が可決した2兆ドルの景気刺激法により、雇用保険支払いは13週延長され、週600ドルが4カ月まで追加支給される。経済政策研究所は夏までに1400万人が失業すると予測している。