太田昌国のコラム : 山本太郎氏の「外国人労働者」の捉え方について | |||||||
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山本太郎氏の「外国人労働者」の捉え方について*写真=山本太郎氏 「外国人労働者の受け入れと排外主義」については昨年12月に書いた本連載の第26回目でも触れた。この間新しい情勢が生まれたこともあり、大事なことなので再論しておきたい。 今回の参議院議員選挙で山本太郎氏が率いる団体(その固有名詞を引き写しすることはしたくない)が、無風で退屈極まりない選挙状況に一定の波紋を投げかける役割を果たしたことは、その立場への賛否を超えて、疑いようもない。氏の街頭演説は「相互対話性」に満ちており、口汚いヤジにも的確に応答する。内容的にもひとの心を掴む勘所をおさえている。氏が声をかけて立候補を要請した人びとの顔ぶれを見ても、この社会が現在抱えている問題の在り処をおのずから明らかにしていて、巧みだ。社会を覆い尽す無風状態、選挙に対するしらけた感情、与野党の判別がしかとはつかぬ翼賛状況――こんなただ中にあって、ある種の「熱狂」が氏の周辺に巻き起こった理由は十分にある。 私は氏と面識もあり、数年前だったか、核実験やミサイル発射実験を行なう朝鮮国への非難決議が参院に上程される直前には、投票行動の参考にするために電話で私の意見をたずねてきたりもした。私が『「拉致」異論』で、朝鮮国指導部に在り方に関する批判的な見解を表明していることに加えて、日本政府の対朝鮮国政策にも厳しい批判をしてきているからだろう。園遊会での天皇への直訴行為に関しては眉を顰めた私だったが、その電話の時の率直な態度には好感をもった。その前後でも、「死刑映画週間」時にはトークゲストでの参加を依頼するなど、一定の交流が続いている。 現在は「代議員」ではなくなったが、一政治潮流を代表するふるまいは続けており、現在の状況からすれば野党再編の鍵を握る役割をも果たすことになるかもしれない。その意味で、私が疑義を感じている山本氏の持論に関して、ここで述べておきたい。紙幅の関係から、私が山本氏に対して持ついくつかの疑義のうち、今回は一点にのみ触れる。 山本氏は、昨年12月8日、入管法改正法案審議の参議院本会議において、次のような演説を行なった。「賛成する者は二度と保守と名乗るな、保守と名乗るな! 官邸の下請け、竹中平蔵の下請け! この国に生きる人々を低賃金競争に巻き込むのか? 世界中の低賃金競争に。恥を知れ。二度と保守と名乗るな。保身と名乗れ! 保身だ!」 従来から山本氏はこの種の発言を続けて来ている。伝聞だが、今回の街頭選挙演説においても「外国人労働者が増えると、日本人の賃金が下がる」という主張は一貫していたという。この物言いの論理構造は、「主として貧しい国からやって来る外国人労働者は、低賃金に甘んじてでも労働の場を確保するだろう→賃金を低く抑えたい雇用主は、日本人労働者の賃金を外国人労働者の賃金水準に合わせて低めようとするだろう→したがって……」というものだろう。排外主義に容易に行き着く、典型的な言い分である。欧米に激しい勢いで台頭する極右の言い分が、ここを出発点にして始まったことを思い起こしたい。「生きづらさ」を抱えて生きる「日本人有権者」に訴求力ある言葉で語りかける山本氏はここで、「外国人労働者問題」は「日本人」と「外国人」との間に対抗・対立関係を生み出すことにその本質があると解き明かしていることになる。 排外主義を、隠しようもない本質として持つ安倍政権は、2018年に突然のように、「人手不足に対応するために」外国人労働者受け入れ拡大策を採用した。技能実習生に対する過酷な処遇、「退去強制令」を受けた人びとを収容する入管施設での虐待・暴行、日本語教育態勢の不備、外国人労働者を受け入れるための社会教育・メディア教育・学校教育の徹底的な欠如――問題の本質は、基盤整備を行なわないままに外国人労働者を「人手不足」を理由に大急ぎで受け入れる安倍政権の姿勢にある。「使い捨て」の意図が歴然としている。問題の本質を揺るがせにしてはいけない。 Created by staff01. Last modified on 2019-08-11 12:08:14 Copyright: Default |