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「パパは何も悪くない。諦めたら後悔する」〜オートバックス田島才史さんが陳述

動画(3分41秒)

 オートバックス加盟店(株ファナス)で解雇された非正規労働者・田島才史さん(写真)の第1回口頭弁論が、4月25日東京地裁で開かれた。「13年も働いてきたのに病気になったら解雇」は許されるか。問題はこれに尽きる。正社員だったら休職制度があり雇用は守られるのに、有期の契約社員にはそうした保障はいっさいない。しかも「不安障害」の病いも会社のパワハラに因るものだった。加えて手当・休暇差別もある。田島さんは、これらは不合理な差別を禁止した「労働契約法20条違反」として提訴した。

 この日の弁論は原告の意見陳述のみでわずか7分で終わったが、田島さんは2週間かけてつくった「提訴への思い」を読み上げた。176センチの長身に極太の黒縁のメガネ。裁判官の前で堂々と「非正規差別をなくしてほしい」と語った。「一時は諦めようかと思った。しかし妻と子供から、『パパは何も悪くない。諦めたら後悔する。後悔したままの人生でいいのか?』と言われ」決意が固まったという。この日の法廷には、田島さんの連れ合いも傍聴に駆け付けた。(*陳述内容は下段)

 法廷入り口の掲示を見ると、このオートバックス非正規裁判(地位確認等請求事件)を担当するのは民事19部の春名茂裁判長である。つい3月にユナイテッド不当解雇事件で不当判決を出した裁判官である。ちょっと心配になる。報告会でも裁判長の話が出た。原告の弁護士は「春名裁判長にはいい思い出はない。でもかえってやりがいがある」と気迫を見せていた。

 この日は被告席にはだれも姿を見せなかった。裁判は両当事者(または、その代理人)が出席して行うのが原則だが、第1回期日については答弁書を提出することで欠席が認められる「擬制陳述」という制度があるという。しかし、なにか釈然としない思いがした。

 結局第1回裁判は、本人陳述5分と次回の日取りを決めるだけの計7分で終わった。傍聴席には首都圏青年ユニオンの支援者ら約20名が集まったが、7分で終わったため法廷に入ったらもう終わっていたという人も出た。裁判所建物入口には「憲法週間」の看板が大きく出ていたが、ブラックユーモアかと思った。国民主権の裁判所とはほど遠い実態が、ここにはある。なお第2回裁判は、6月27日(木)13.45から東京地裁527号法廷で行われることになった。(M)

●田島才史さんの冒頭陳述・全文(5分)

 訴状には書いてなく伝えられなかった、なぜ訴訟をするに至ったのかを話したいと思います。

 私は被告である株式会社ファナスによる様々な理不尽な扱いにより体調不良となり休職しました。休職中も改善を求め、数回の交渉を重ねました。体調が回復し、復職を求めると会社都合で解雇されました。解雇後、復職を求める交渉でも、復職は認められませんでした。またその席上でも傷病手当の不正受給とまるで仮病のように被告側弁護士に言われました。そして回復した体調も悪化してしまいました。

 今はじっとすわってられないので床屋にもいけません。薬を飲んでいないとオレンジ色の看板を見るだけで発作が起きる状態になっ てしまいました。ずっと耐えて働き、きちんと話し合いたいと思い、交渉も誠実に続けてきま した。 しかし企業と一個人では相手にならず、裁判所のお力をお借りするしかなくなりました。私の力不足により裁判という手段に頼らなければ、誠実な話し合いに応じて くれない現状をとても残念に思っています。

 私には妻と今年小学校に入学した子供がいます。家族のことも考え、一時期は全て諦めようと思いました。妻と子供から、「パパは何も悪くない。諦めたら後悔する。後悔したままの人生でいいの か?」と言われました。ここで泣き寝入りをしてしまうと未来を支える子供 にも悪影響を与えてしまうと思いました。この環境を変えなければ、また同じことが繰り返される。半ば諦めながら頑張っている仲間にも、これ以上、辛い思いをしてほしくない。だから企業と個人では圧倒的に個人が不利であるということは承知の上で、蟻の一穴となるしかありませんでした。それで訴訟を決意しました。

 私には人の尊厳より大切な労働が何かはわかりませんが、私は全部正直に話すことで、自分の尊厳を守りたいと思います。ひとりひとりが人間として大切な存在である労働者が、正規・非正規で差別されることのない日々が訪れることを心から願っています。正しいことをしている人が仮に報われないとしても、正しいことをしている 人が損をしてしまう社会であってはいけないと思います。

 この裁判を通して、事実を法に基づき明らかにすることで 被告である会社側は、私にしたことを正直に認めて欲しいです。またこの裁判により、隠蔽することは組織を守ることではなく、改善の先送りであることに気づいて欲しいと思います。 そして、悪しき慣習が改善され、再発防止のよい例となり、よりよい組織に 変わるきっかけになることを切に望みます。

 憲法13条や労働契約法20条の意味や意義を問うことで、未だに増え続けている非正規労働者の方々にも訴訟を通し、訴えていきたいと思います。非正規労働者に対する差別という社会問題に、ひとりでも多くの方の目が向 くことを望みます。裁判が始まる前から、辛さを共有した家族や応援してくれる様々な仲間との絆を感じ、感謝しております。きっと提訴しなければ感じられないことでした。

 この裁判を通じ、物事の善悪の判断の仕方を学び、今後の人生をより良くする為に生かす上でも、最後まで誠実に臨もうと思います。嘘が真にならないように判断していただきたいと思います。

提訴会見記事(3月19日)


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