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双葉町と福島県の人たちへのご褒美〜ドキュメンタリー映画『盆唄』

    堀切さとみ

 『ナビイの恋』で有名な中江裕司監督がつくった『盆唄』を観た。腰が抜けるかと思うほど素晴らしかった。この映画は、原発事故以来頑張って耐えた双葉町、双葉郡、福島県の人たちへのご褒美だと思う。私の中にも化学変化が起きた。

 原発事故がなかったら双葉町と出会うことはなかった。だから仕方ないともいえるが、私は双葉の人たちに原発への思いばかり聞きたがっていた。

 「双葉は原発を受け入れた」「双葉を反面教師にしてほしい」。それは絶望的な言葉だけれど、安易に希望を語るよりよっぽどいい。そう思って映画『原発の町を追われて』をつくった。

 双葉は原発で潤った町。もしそれだけだったら、こんなに故郷を恋しいと思うわけがない。避難所で双葉の人から聞くのは、ふるさと自慢だった。避難してから五か月たって騎西高校で双葉の踊りを披露してくれたときの晴れやかな表情を、今も忘れることはできない。あれ以来、何十回も聞いてきた双葉盆唄だ。

 映画『盆唄』は、双葉町「せんだん太鼓」のメンバーが主人公。避難先で暮らすために、うるさい音を立てたらトラブルになるのはどこに避難した人も同じ。大きな声で歌えない、笛や太鼓の練習もできない。

 ところがこの映画には、フクシマの映画にありがちな、憐れさや情けなさを感じさせないのだ。文化の継承は言葉では伝えられないし年月がかかる、そのことを語る双葉町民は、誇りをまったく失っていなかった。

 「帰還困難区域の双葉町に一瞬でも集まって、やぐらの競演をやることはできませんか?」という中江監督の申し出に、せんだん太鼓代表の横山久勝さんは、「できない」ときっぱり言った。その代わりに実現したラストシーンは圧巻だ。

 いつの世も人は故郷を離れて生きてきた。受け入れてもらい、根付く中で人は逞しくなった。双葉町に生まれ育ち、双葉町に嫁ぎ、双葉町で死んでいったすべての魂が浮かばれるような映画だ。

 「テアトル新宿」で上映中。昨日(2/28)で終わりだといわれて観に行ったのだけど、一週間延長になっていた。3月7日までやっている。双葉町民、双葉と出会い関わってきたすべての人に観てほしい。(『原発の町を追われて』制作者)


Created by staff01. Last modified on 2019-03-05 08:42:24 Copyright: Default

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