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LNJ Logo 「それなりに」適切? 他人事の北海道知事に怒り、批判相次ぐ〜9.28反原発道庁前行動
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9月28日(金)も、通算308回目となる道庁前行動が行われた。3.11直後の経産省前テントひろばに似て「災害ユートピア」のようだ、と評した先週とうって変わって、この日は常連メンバーによるいつもの光景に近かった。

この日の行動では、北海道胆振東部地震の初動対応について「それなりに適切」だった(9/27の記者会見)とした高橋はるみ知事に対する批判が相次いだ。畠山和也前衆院議員(写真)は「それなりに、という言葉からは真剣さを感じない。知事の仕事なんてその程度でいいのだ、と言わんばかりで、道知事の仕事の意味をみずから貶めている」と批判。常連のインド人・ラトリさんは「道民を代表して政府に物申すこともせず、これでもまだ原発をやめるとも言わない知事には心がない」とこちらも痛烈に批判した。

黒鉄のスピーチ前文は以下のとおり。東京地裁で続く福島原発事故の刑事訴訟を取り上げた。

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 みなさんお疲れ様です。

 検察審査会の強制起訴議決を受けた福島原発事故の刑事裁判がこの秋から新局面を迎えています。今日はこの裁判についてお話しします。

 9月5日の第25回公判で、東京電力がコスト削減のために津波対策を中止させていたという決定的な証拠が出ました。この日は、東電で地震対応を行う部署のトップだった山下和彦氏が出廷しない代わりに、山下氏の検察官面前調書(検面調書)が読み上げられました。検面調書は、事情聴取を受けた参考人が検事の前で供述した内容を書面にしたもので、裁判では一般的な供述書よりも証拠能力が高いとされます。検察は、最終的には不起訴にしましたが、任意での事情聴取とはいえ「まるで容疑者を取り調べるかのような厳しいものだった」と関係者が証言(注1)するほど熱心に捜査をしていた時期もあったといわれます。

 山下氏の検面調書で明らかになった事実のうち最も重要なものについて述べます。それは、東電の首脳陣も了承し、いったんは全社的に進めていた津波対策の先送りが2008年に決められた経緯についてです。「津波対策に数百億円かかるうえ、対策に着手しようとすれば福島第一原発を何年も停止することを求められる可能性があり、停止による経済的な損失が莫大になるから」が先送りの理由であったことです。東電では、原発の稼働率が1%下がると収益が100億円減少することを国会事故調報告書は指摘しています(注2)。2002年に発覚した事故隠しによって、当時の佐藤栄佐久福島県知事から福島原発の全原子炉を停止させられたのに続き、2007年の新潟県中越地震で柏崎刈羽原発も停止するという状況の中で、運転再開したばかりの福島原発が再び津波対策を理由に止まってしまう事態を、東電首脳陣はどんなことをしてでも避けたかったのです。東電の「命より金」の経営が津波対策先送りの理由であることはこれまでも推測で多く語られてきましたが、これが東電内部からの証言、事実として出てきたことは大きな衝撃をもって受け止められるとともに、「やはりそうか」との思いを抱くに十分なものでした。

 もうひとつ驚かされることがあります。「10m級の津波は実際には発生しないと思っていた。根拠は特にないが、2007年に新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が想定を上回る地震を経験していたので、原発の想定を上回る地震が何度も起こるとは思いつかなかった」と山下氏が事情聴取の中で供述していたことです。さすがにこの調書が読み上げられると、法廷内で失笑に近いざわめきが起きました。よその地域で大きな地震があったら「自分のところでもあるかもしれない。対策を考えよう」と思うのが普通の人の一般的な感覚だと思います。ところが「よその地域で大きな地震があったから、しばらく大きな地震はないだろう」と、しかも根拠もなく思えるところに東電の浮世離れした感覚を指摘せざるを得ません。このような浮世離れした感覚の人たちに危険な原発を預けられるほど私たちはお人好しではありません。

 9月18日の第26回公判、19日の第27回公判では、原発から20km圏内に位置しているため避難指示区域となった双葉病院の看護師が出廷しました。避難指示が出たため、避難する途中で死亡した入院患者に関し、検察官役の指定弁護士が「地震と津波だけなら助かったか」と質問すると、この看護師は「そうですね、病院が壊れて大変な状況でも、助けられた」と述べたのです。原発事故で高線量地域ができると、助ける人たちも被曝するため、助けがなかなか来ず、結果として高線量地域は見捨てられる――刑事裁判はそのことを明らかにしました。今、原発から30km圏内の自治体には避難計画の策定が求められていますが、このような事態まできちんと織り込んだ避難計画を一体どれだけの自治体がきちんと作っているのでしょうか。福島の実態を知れば知るほど、実効性のある避難計画などできるわけがない、原発と地域は共存できず、原発はやめるしかないと理解できるはずです。

 現地に何の情報もなく、混乱だけが深まる中で、それでも入院患者を救うために走り回っていた双葉病院関係者は、福島県の誤った発表のために「患者を置き去りにして逃げた」ことにされてしまいました。このあたりの事情については「なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか――見捨てられた原発直下「双葉病院」恐怖の7日間」という本も出ているのでぜひ読んでほしいと思いますが、今回の刑事裁判で双葉病院関係者が懸命に患者を救おうとしていたことも明らかになり、福島県から逃亡犯呼ばわりされた関係者の名誉回復にもなったと思います。

 この刑事裁判は、東京の検察審査会が勝俣恒久東京電力元会長ら3人に関し、起訴相当の議決を出したことによって始まりましたが、双葉病院の入院患者らが避難中に死亡したりケガをしたりしたことが業務上過失致死傷罪に当たるというのがそもそもの起訴容疑でした。つまり、ここで双葉病院の看護師が出廷したことは、この裁判がいよいよ「本丸」に入ってきたことを意味しています。起訴事実を証明するために、直接の関係者が出廷し「原発事故がなく地震と津波だけなら私たちは死亡した入院患者を助けられた」との証言をしたことは、この裁判が有罪に向かって巨大な前進をしたことになるからです。

 裁判は年内にも論告求刑に進むとみられています。これでもし誰ひとり罪に問われずに終わるなら、この日本にもはや正義も希望も法の支配もありません。日本の最高法規である憲法が、安倍政権によって朝から晩まで攻撃に晒されている時代だからこそ、法と正義を守らなければなりません。そのためにはこの裁判で東電を有罪に導く必要があります。今後もこの裁判の行方は節目で紹介していきたいと思います。

 今日は以上で終わります。ありがとうございました。

注1)「福島原発事故の第2次刑事告訴・告発状に1万3千超の人々――検察は政府関係者も聴取へ」(「週刊金曜日」2012年11月23日号)

注2)国会事故調報告書(P.534)


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