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運動を支えるのはいつも女たちだ〜9.11テント記念集会の感想

    笠原眞弓

9月8日の経産省前脱原発テント日誌の書き出しに次の言葉があった。
「経産省前テントひろば、脱原発テント設置日(2011年9月11日)から1807日目(2016年8月2 1日)にテント強制撤去。2018年9月8日は、座り込み2,555日目。これは、マハトマ・ガン ディー「非暴力、不服従」の実践です」
あの日以来ずうっとこのテントに関わっているレイバーネット日本の仲間に、ずいぶん前 から今年の9月11日のことを聞いていた。

◇運動の底支えは日常生活

テントが建った7年前の今日、私も駆けつけた。そこで印象に残ったのは、都内から来た という赤ちゃん連れのお母さんのグループ。彼女たちは「心配で、心配で……」と誘い合 わせて来たという。そして目を奪ったのは、福島から駆け付けたという女性たちを中心に した人たち。彼女たちは座り込んで、横断幕のアップリケをしたり、細く裂いた布を太い かぎ針で編んで紐を作り、大きな玉を作っていた。それは脱原発の願いを込めたチェーン なのだ。女性の強さをそこに見た。

複数の映画で見たのだが、ヨーロッパの女性たちは、ギロチンの見物をしながら家族のセ ーターを編んでいたし、原爆反対の会議をしながら何かを編んでいる。日本の女性たちだ って、寄り合っては針をチクチクして、夫たちの作業着を修理しながら美しい模様を縫い こむ刺し子に余念がなかったではないか。あの大震災で、集落がばらけそうになった時、 年配の女性がミシンを持ち出して祭りの衣装を縫いはじめ、みんなが前向きになれた。 この前のレイバー映画祭で見た『地の塩』でもコーヒーからだったし、ずうっと前に観た 三池闘争の映画でもまず食から労働運動を支え、彼女らなくしては運動の持続はなかった と思わされたものだ。 そして今日も、テントの女性陣を中心に、おなかをすかせて集まる人たちのために、そう めんをゆで、その上に心づくしの野菜をのせてふるまっている。

◇青空テントでは

11日、私は18時前に駆けつけた。ドーンと真ん中にいるのは、健康がすぐれないと伺って いた渕上太郎さん。間もなく落合恵子さんが現れ、お互いに思いやりの挨拶をしている。 周りには、少しの警察官が福島の避難者のKさんと談笑している。私も加わり「右翼から 守ってね」とお願いする。 レイバーネットの仲間たちも次々顔を出す。始まりの音楽は、うらんさんの歌。“原発廃 炉”と歌う。ジョニーHの銭形平次の替え歌(原発御用)、日音協の方々とにぎやか。 あゝ、川内原発テントから懐かしい仲間たちが……。 18時になると、木内みどりさんがワゴンに上り、開会だ。

◇お元気な渕上さんから

なんといっても力強いのは、渕上さんのアッピール。テントの歴史を語った後、トリチウ ム汚染水の説明会での政府のワカランチンぶりを、明りの煌々とともる経産省に向かって (ろくな仕事をしてないんだから早く帰れといいたい)吠えた。最後に、「仮にこのまま 原発が推進されるとするなら、来年も再来年も、たとえ何人かが亡くなったとしても、再 生可能エネルギーに代わるまで……とバトンを次の世代につないでいく決意を表明した。 私も亡くなる側にいるので、うっかり受け取れないのだが、その力強い声に圧倒された。

続いてのコールは、「撤去すべきは原発だ」「撤去するのはテントではない」と経産省の 窓に向かって拳を上げた。 資本と最も近い城南信用金庫の吉原 毅さんは、「心があるなら、どこから考えても原発 を動かしてはいけない。丸の内から霞が関まで、このメッセージに耳を傾けてほしい。九 州が爆発したら、日本列島が人がすめなくなる。自然エネルギーに変えるのは、大きな商 機」と訴えた。 菅直人さんは、東海第2原発の危険を指摘し、どうしても20年の延長稼働を止めなければ ならないと力説。

今回は、福島の飯館村の伊藤延由さん、テントに救われたという亀谷幸子さん、カウゴジ ラを連れてきた吉澤正巳さんの町民がどこにいるかわからない中での町長選の顛末、首都 圏弁護団中川素充さんの報告と続いた。 その後は、テントひろばの人たちが、テントをどのように守っているかを次々話す。あの 斉藤美智子さんも小柄な体をさらに小柄にして、それでも「原発は未完成技術。脱原発ま で運動を止めない」と力強い名演説をした。

◇右翼よ!国土を守るなら脱原発

「映画監督で弁護士でもある」河合弘之さんは日本を守りたい右翼こそ、原発に反対しな ければならないと力説。落合恵子さんは、震災や災害などあるたびに、あの原発はどうか と心配するストレスがあると。そして防災(命を助ける)より防衛(人を殺す)を考えて いると政府のやり方を指摘。 第2部では、温暖化防止に原発は役立っていないという研究をした方の話のあと、たんぽ ぽ舎の柳田真さんの東海第2原発を動かしてはいけないというお話を聞きながら、3時間に なろうとするころ、あまりの疲労にお先に失礼した。


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