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美しい映像が描き出す労働現場の真実〜インド映画『機械人間』


 (c) 2016 JANN PICTURES, PALLAS FILM, IV FILMS LTD

 映画がはじまって数分、何の説明もなくただ工場の騒音と無言で働く労働者の姿が映し出される。大きな機械と人間の動き。暗い中にくっきりと浮かぶ「働き人」たち。光と闇とが交錯し、人の働く姿はこんなに美しいのかと思う。

 スクリーン式(手染めもしていた)とドラム式の布の捺染(プリント)工場だ。レンガ色の染料を調合している(初めて出てくる鮮やかな「色」である)。それも何と手測りで微妙な色調整をしていく。

 上から降りてくる布が自動で折りたたまれるが、幼さの残る少年工は、トウトウとしながら、「機械」的に布を引っ張ってプリント機械に誘導している。コンピュータの時代にアナログにも依存しているのだ。

 重い染料をタンクに入れて動かす(運ぶ)のも引っ張るか、担ぐか。染料の詰まったドラム缶はわずかずつテコの原理で床をずらしていく。巻き取られた布を運ぶのも人力。フォークリフトも見当たらない。まだまだ人件費の方が安いのだろう。

 一人の工員が話始める。1日12時間労働で、朝8時から夜8時まで。時給は200ルピー(324円)だという。昨年は、天候不順で農作物が取れず、出稼ぎに来たという。1600キロの道のりを36時間かけて、煎ったひよこ豆をかじりながら水も飲まずに満員電車でここに来た。交通費が払えない人は、10%の利子で借金してくるという。子どもの教育費にと送金しているが、それには不足だという。

 「貧困とは何か」「労働者は死んでやっと報われる」と日本でも聞くような言葉も挟まれる。法律に違反しているし、みんな不満を持っているのに組合はない。必ずリーダーが殺されるからと、彼は言う。人権無視の過酷労働の見本市のようだ。

 工場主(唯一の管理職でもある)は、監視カメラのモニターのある部屋で「彼らの賃金を上げれば、酒やたばこにつぎ込む。彼らのためにならない」と太った体をゆする。

 カメラを持つ監督は市場で多くの労働者に囲まれる。撮って帰るだけなら、演説して帰る政治家と同じだと鋭く突っ込み、労働時間の改善を交渉してほしいと言われる。

 自分たちの染めた製品の山の上で眠りこける彼ら。彼らの汗にまみれた布を着るのは誰か。行動を起こせない彼らに代わって動くのは世界のこの映画を見た人、この布を身にまとう人たちではないか。〔笠原眞弓〕

*インド・ドイツ・フィンランド合作映画・2016年・71分 監督:ラーフル・ジャイン(インド) 7月21日よりユーロスペースにて公開後、全国展開。


Created by staff01. Last modified on 2018-07-21 20:31:17 Copyright: Default

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