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憲法が保障する「勾留理由開示」「傍聴する権利」を踏みにじった東京地裁〜「裁判所前の男」の勾留理由開示法廷

    山口正紀(ジャーナリスト)

 《何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない》

 この憲法34条を、東京地裁刑事第14部・三浦裕輔裁判官は知らないに違いない。

 12月21日、「裁判所前の男」Oさんの勾留理由開示を求めて開かれた法廷で、三浦裁判官は、憲法に保障された勾留理由開示を要求する権利を無視して「勾留理由」をまともに説明せず、傍聴者を弾圧し、「公開の法廷」で傍聴する市民の権利も踏みにじった。この日、地裁430号で開かれた勾留理由開示法廷は、Oさんと傍聴者を「テロリスト」扱いし、次々と退廷させる極めて暴力的で不当な弾圧法廷となった。

 傍聴妨害は、傍聴券交付から始まった。通常、傍聴希望者に抽選で傍聴券を交付する場合、裁判所はホームページに「傍聴券交付情報」を掲載する。実際、同じ21日午前10時30分から東京高裁で開かれた「今市事件」の控訴審については、「10時15分までに指定場所に来られた方を対象にします」とHPに告知されていた。

 ところが、Oさんの勾留理由開示法廷については、HP上に何の告知もなかった。私が午前9時半に裁判所に行くと、勾留理由開示の傍聴券は抽選になっていた。このため「事前告知されていないではないか」と抗議すると、裁判所職員は「抽選は締め切ったが、希望者が傍聴券の枚数に達しなかったので、法廷に行けば傍聴券を交付する」と弁明した。

 だが、もし傍聴希望者が傍聴券の数を超えていれば、私は傍聴できなかったことになる。あるいは、もし警察が職員を動員して傍聴券抽選に並ばせたら(実際、公安事件の裁判では、しばしば公安警察官が列に並ぶ)、抽選になったことを知らずに、一方的な締め切りを過ぎて裁判所に来た一般の傍聴希望者は傍聴できなくなる。

 なぜ、こんな姑息なことをするのか、どうみても「警備法廷に来るような傍聴者」(アベ語では「こんな人たち」)に対する嫌がらせだ。私は、「HPに抽選のことは告知されていなかった。なぜ抽選にしたのか」と追及したが、「裁判長の指示」としか答えなかった。

 裁判所庁舎入り口で持ち物・身体検査を受け、430号法廷に向かうと、手前の廊下は鉄柵で封鎖され、警備員十数人が通路を固めていた。傍聴者は筆記用具以外の手荷物を取り上げられ、「両手を挙げて」などと命令され、金属探知機で執拗に身体をチェックされた。 私は「裁判所の入り口で検査したのに、なぜ2度もやるのか」と抗議したが、「裁判官の指示です」の一点張り。探知機に腰のベルトの金属が反応したのか、警備員はセーターをまくって私の腹部を探った。私は「ハラスメントはやめろ」と大声で抗議した。

 法廷に入ると、20席の狭い傍聴席の背後には屈強な警備員がズラリ並び、傍聴者を後ろから威圧。三浦裁判官は開廷直後、傍聴席をにらみつけ「傍聴人には発言は許していません。必要に応じて退廷させます」と、一般の裁判では言わない高圧的な「注意」をし、最初から傍聴者を敵視した。

 開廷後約10分、長谷川直彦弁護士が勾留の不当性について項目ごとに求釈明しようとすると、三浦裁判官が「一括して」と介入。長谷川弁護士が「個別に」と求めた直後、傍聴席で「そうだ」と小声で言った女性に、三浦裁判官はいきなり退廷を命じた。

 その後も、裁判官の説明にならない説明に「エッ」とつぶやいた傍聴者などを警備員が後ろから指さし、それを見た三浦裁判官が退廷命令。さらに、弁護人とOさんの意見陳述を一方的に「10分」と制限したうえ、それを少しでも過ぎると大声で「10分を過ぎています。やめなさい」と大声で制止。Oさんがそれに抗議して陳述を続けると、「被疑者を退廷させなさい」と警備員に命じ、Oさんも法廷外に連れ出された。

 弁護人がこれに異議を申し立てると、傍聴席から「そうだ」「おかしい」と抗議の声が次々起こった。警備員たちは抗議した人たちを指さし、三浦裁判官は次々と退廷を命令。女性も傍聴者は含む傍聴者たちは、警備員に脇を抱えられ、むりやり法廷の外に連れ出された。

 退廷させられた7人は、警備法廷奥のエレベーターから庁舎の外に出され、この日1日、裁判所構内への立ち入りも禁じられた。その間、裁判所職員は、退廷させられた人たちをビデオで撮影した。Oさんが「要注意人物」に指定されたように、この日退廷させられた人たちも、全員「裁判所に歯向かう要注意人物」にリストアップされたのだろうか。

*写真=警備法廷入り口(インターネットより)


Created by staff01. Last modified on 2017-12-23 17:19:51 Copyright: Default

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