素晴らしい人間賛歌〜映画『袴田巖 夢の間の世の中』を観て | |||||||
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素晴らしい人間賛歌〜映画『袴田巖 夢の間の世の中』を観て増田都子3月3日、「ポレポレ東中野」で映画『袴田巖 夢の間の世の中』を見てきました。http://www.hakamada-movie.com/ もうご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、未だの方にはぜひ、映画館に足を運んでいただきたく、内容と私の感想を紹介させていただきます。 *********************** 2014年3月27日、袴田巌さんは1966年の逮捕から48年ぶりに釈放されました。静岡地裁の再審開始決定文には「国家機関が無実の個人を陥れ、45年以上にわたり身体を拘束し続けたことになり、刑事司法の理念からは到底耐え難いことといわなければならない」「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する状況にあると言わざるを得ない。」とありました。 この映画は、釈放後の彼と、彼を48年間、支え続けた姉の秀子さん(現在、83歳…かと)との日常を追ったドキュメンタリーです。事件の説明的なことは最低限しか出てきませんけど、本当に素晴らしい人間賛歌になっていたと思います。 秀子さんの言うとおり、最初のころの巌さんの表情は本当に生気がなく、固く強張っているようで、言っていることも、支離滅裂な感じでした。 無理もありません。人殺しなどしていないのに、警察に証拠品をでっち上げられ、トイレにも行かせない非人道的取り調べで自白を強要され、48年間もの拘禁。1980年からの34年間は確定死刑囚として、いつ、死刑台への通告がなされるか…確か、午前9時までに、それはなされるそうなので、9時過ぎれば、その日の死刑執行はないので一安心できる、と言ってたかな…毎日、怯えながらの生活です。 無実の人への毎日の精神的拷問です。普通の人は耐えられません。巌さんも1985年から精神を蝕まれていったようです。 この映画では、ところどころ、巌さんの獄中日記の文言が出てきます。映画の出だしの方で、月がドアップ(笑)で出てきて、その後も、よく月が出てきたので、最初は意味が解らなかったのですが、巌さんの日記に「月を見ていると心が和む。それは、塀の外の人も、今、同じように、この月を見ているからだ」というような…何しろ、脳みそ記憶なので、不正確ですが…言葉があったからのようです。 巌さんの獄中日記や手紙のの言葉は、素直で飾り気がないのですが、とても深い知性、哲学的思索を感じました。そんな人が… 秀子さんと暮らし始めた生活の中でも、巌さんはセカセカと、しょっちゅう家の中を歩き回ります。私は、巌さんは冤罪の晴れる日のために、足腰を弱らせないように、獄中で歩くことを日課になさっていたのではないだろうかと思いました。秩父事件の井上伝蔵は再起を夢見て、かくまわれている土蔵の階段を上がり降りして足腰の衰えを防いだ、ということを思い出しました。 巌さんは、少しずつ少しずつ、生気を取り戻していき、顔も柔和になり、話すことも安定していきます。私が「あれっ?」と思ったのは、親戚の若い女性が生まれたばかりの赤ちゃん…生後1カ月ぐらいかな…を巌さんの手に渡したときです。彼は、ごく自然に受け取りました。普通、生後間もない赤ちゃんを初めて手に受け取る男性には、おっかなびっくり、という表情が出ますが、そんな表情がなかったので、巌さんは赤ちゃんと生活したことがあるのかな…と思いました。 あとで、映画館でもらったリーフに、獄中日記に書いた息子さんへの手紙が出ていまして、初めて、彼に息子さんがいたことを知りました。ネットで調べたら、事件前に離婚され、逮捕時には息子さんは2歳だったようです。なんとも酷ごい… 私が一番、印象に残ったのは、秀子さんの次の言葉です。「日本は冤罪が多いと思う。警察がでっち上げるなんて、普通は誰も思わないもの。だけど、多くの人は泣き寝入りしていると思う。」…これも、脳みそ記憶で不正確かも…でも、次の言葉は、とっても印象に残ったので、正確だと、自分では思っています。 「そうはさせるかよ」!!!…そして、秀子さんはカラカラと笑うのです。権力を濫用して他人を罪に陥れるような連中には絶対に泣き寝入りしない、屈服しない、なんとしても無実の弟を取り戻す! という、見事な心意気! 一寸の虫にも五分の魂! 無名の庶民だからとて侮るんじゃないよ!…なんだか、森鴎外の描く凛とした女性…『最後の一句』の16歳の「いち」を思い出します… 弟が、こんな冤罪に巻き込まれなければ、秀子さんは平凡に結婚して平凡ながら幸せな生活を送っていらっしゃったに違いありません。でも、弟がこんな理不尽な目にあったことで、あくまでも明るく前を向いて、決してメゲズ、弟のために生き、弟を支え続けました。61歳で…だったと思います…亡くなったお母さんの無念の思いをはらす、ということも原動力になったでしょうが、その精神の中核にあったのは、人間の尊厳を侵すものへの、一人の人間としての健全な怒りだったのではないでしょうか。 そうです、その点で、私も全く同じでした! 私が1997年5月、中2・地理「沖縄県」の授業で普天間基地を教えたことから始まった、右翼都議・産経新聞・都教委の三位一体による「反米偏向教師」攻撃にも耐えられたのは、「真実を教え、相手が誰であれ『正しいことは、正しい』『間違っていることは間違っている』とはっきりと言いましょう!」と教えた私の授業は誰からも指弾される筋合いはない! こんな理不尽な攻撃には絶対に泣き寝入りしない、屈服しない! 泣き寝入りし、屈服することを期待しているワルどもよ、「そうはさせるかよ」!!! という精神と根性(笑)があったからです。 静岡地裁の「再審開始決定」に対して、検察は未だに抵抗していて、今も東京高裁で審理中だなんて「耐え難いほど正義に反する」のではないでしょうか。 皆様! まだ、ご覧になっていない方は、ぜひ、ぜひ、見に行ってください! 「ポレポレ東中野」の上映スケジュールは以下です。 これでは3月13日までみたいです。でも、私が見に行ったのは「上映は3月3日まで」になっていたため、慌てて行ったので、もしかしたら、13日以後も上映するかもしれませんので、13日までにはいけないという方は、ポレポレに電話で確認されるといいかと思います。 Created by staff01. Last modified on 2016-03-09 13:23:11 Copyright: Default |