実用兵器から程遠い北朝鮮の「水爆」〜制裁ではなく対話を | |||||||
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実用兵器から程遠い北朝鮮の「水爆」〜制裁ではなく対話を!安田幸弘 (レイバーネット国際部)北朝鮮の「水爆実験」について、大げさな報道が溢れている。 もちろん、ぼくは世界中から「核」をなくさなければいけないと思っているので、危険な原発と核燃料サイクルみたいな神話にこだわる日本をはじめとする原発保有国とともに、核抑止力みたいな神話にこだわる北朝鮮にも「そんな愚かなことはやめてくれ」と言いたい。 ところが、安倍が率いる自民・公明連立政権は、危険千万な核発電や核燃料サイクルはともかく、実用兵器からは程遠い北朝鮮の「水爆」をこれ幸いとばかりに騒ぎ立てている。 「実験成功」のニュースからある程度時間が経って、だいたい北朝鮮が何を狙っているのか、何をやったのかはわかってきた。そして米国と日本・韓国の「三角同盟」の実体も現れてきた。 まず、北朝鮮はいったい何をやったのか。 韓国の軍事評論家のキム・ジョンデ氏は「核の小型化技術の実験」だという。つまり、小型の水爆を作るために必要な実験の第一段階の実験に成功した、という。これは納得できる。 いわゆる「水爆」の試験だったのかどうかは、一連の実験の中で位置づけられる。北朝鮮の声明でも、「水爆の開発に成功した」とは言ってない。「水爆試験に完全に成功した」と書いているだけだ。今の時点では、北朝鮮が「水爆」と言うのならそうかもしれないと考えるしかない。現在のところ、ぼくとしては今回の実験は核心は小型化技術だと考えているが、これは水爆の完成に直結するものであるばかりか、北朝鮮の核の脅威を現実のものにするという点で重大な意味を持つ。 現在、北朝鮮が持っている原爆にしても、あの「ロケット」に搭載したり、潜水艦から発射するには大きすぎる。水爆にせよ何にせよ、現在の北朝鮮の核を実戦に使える兵器にするためには、小型化が最大のポイントだ。しかし、このことを裏返して見れば「現在の北朝鮮は、実際に使える核兵器は持っていない」という意味でもあることを見過ごしてはいけない。 現段階では北朝鮮が実戦に使える兵器を完成させるまでには、まだ10年かそれ以上の時間がかかるという。今の時点で日本の市民が北朝鮮の核を恐れる必要はまったくない。 米国や韓国の当局も「今の時点であわてる必要はない」と考えているはずだ。 今回、予告なしの抜き打ち実験で、米国も韓国も、そして中国でさえ驚いたのだが、さて、もし北朝鮮が実戦に使えるか、あるいは完成間近な核兵器を持っている可能性が少しでもあるとしたら、米国は徹底的に監視をしていただろう。米国は何らかの予兆をつかんでいたと言われているが、本当に危険な兆候だと判断していたらその情報を韓国にも伝えていたはずだが、韓国の当局は米国から今回の実験に関する何の情報も受け取っていなかったという。そして本当に危険な実験が行われようとしていることを米国が把握していたとすれば、北朝鮮が使える核兵器を手にする前に、いかなる手段を使っても実験を阻止しようとしただろう。これらはまだ米国も北朝鮮の核を現実的な脅威とみなしていないことの反証だ。そのことはまた「核」を持ちたい北朝鮮が制裁を覚悟してでも今回の実験をやらなければならなかった理由でもある。 安倍と自民・公明連立政権は、NHKをはじめとするマスコミを使って「現実的な脅威」といった情報を流しているが、正確にはまだ「潜在的な脅威」である。まして、すぐにでも北朝鮮が核弾頭を載せたミサイルを発射するかのような発言は、民衆を惑わす流言飛語の類でしかない。もし、彼らが本当に北朝鮮が明日にでも核ミサイルが飛んでくるかもしれないと思っているとしたら、テレビのワイドショーのコメンテーター級ではなく、もうちょっとマシなアナリストを雇えと言わなければならない。 米国と日本、そして米国が日本に10億円で買収させた韓国は、慰安婦の手打ちも済ませて仲良く国連安保理を舞台に北朝鮮への制裁を加えようとしている。また「制裁」だ。北朝鮮はどっちみち制裁は覚悟の上だし、長い間制裁に耐えてきた経験から日米韓の制裁ぐらいなら乗り切れると思ってるはずだ。日米韓も、制裁などには大した効き目がないことぐらいは分かってるはずだが、とりあえずここで三角同盟の結束を誇示するためにも、強い姿勢を示して「強い制裁」とやらをやってみせようとしているのだろう。 本当に北朝鮮にダメージを与えるつもりなら、もうちょっと厳しいオプションもある。だが、それをやるには米国は中東で手一杯だし、頼みの日本もまだ動けない。韓国は休戦ラインの心理戦放送という結構いいカードを持っていて、すでに放送を始めたらしいが、今の段階ではそれ以上はやる気がない、というより、南北関係を考えるとできない。実際、宣伝放送は北朝鮮からの砲撃を誘いかねない一種の軍事行動であり、かなり危険なオプションでもある。 まだ10年ぐらい時間があるとは言え、このままでは10年なんてあっという間に過ぎてしまう。 北朝鮮の核開発が始まった頃は、米国や韓国には「この体制は長くない」と見てサボタージュと制裁で時間を稼いでいれば、自然に北朝鮮は崩壊するだろうという見方もあった。しかし、この見方が全く見当違いだったことはすでに明らか。北朝鮮の体制は崩壊する気配はないし、そもそも米国も中国も、北朝鮮の存続を望んでいるとしか思えないような部分もある。 北朝鮮が厳しい制裁に耐えてまで核開発にしがみつく理由はただひとつ、「体制の存続」であり、現在の体制を米国に承認させることだ。 北朝鮮の体制についての批判はあるとしても、現在の体制をどうするかは米国や日本ではなく、北朝鮮の、あるいは南北朝鮮人民が決めることだ。今、国際社会が東アジアの平和のために行うべきことは北朝鮮への制裁などではなく、北朝鮮との対話だ。米国と北朝鮮が平和協定を結び、北朝鮮の経済再建のための日米韓に加えて中ロからの支援の枠組みを作る代わりに、核開発をそれこそ「不可逆的」に放棄させ、北東アジアの平和の枠組みを構築する努力だ。それをこれから10年間で実現させるためには、今、すぐに動き出さなければいけない。 どう考えても、それしか緊張を緩和する方法はない。 Created by staff01. Last modified on 2016-01-08 23:01:31 Copyright: Default |