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女子生徒が証言台に立ち「A先生はやめてほしくない」と発言

〜都立高校教員Aさん免職撤回裁判第4回弁論・証人調べ〜

                        湯本雅典

 都立高校教員Aさん免職撤回裁判の第4回弁論・証人調べが、6月11日東京地裁で行われ、40名以上の支援者が着席、傍聴席はいっぱいとなった。(民事第36部 吉田徹裁判長)

*Aさんが免職とされた経過

 Aさんは、都立高校に採用5年目のまだ若い教員だ。Aさんは、不適切なメールを自分が担任していた女子生徒に多数送ったとして、昨年7月いきなり懲戒免職処分を蒙った。メールには、「大好きだよ」「ずっと抱きしめていたい」といった内容のものも含まれていた。確かにそこには思慮が足らなかった点はあった(この点は、Aさん本人も認めている)。しかしその女子生徒がきわめて厳しい家庭環境に置かれていたという背景を考慮せずに、このメールの評価はありえないのである。

 この女子生徒の家庭はきわめて複雑で、女子生徒は高校入学時から幼い兄弟の面倒を見させられ、家では勉強もできず親に高校もやめさせられそうな状況だった。その女子生徒が信頼を寄せたのが担任であったAさんであり、自ずとメールを通じたAさんへの精神的要求の度合いは高まっていった。そのような事態の中でAさんが、誠心誠意女子生徒に関わろうとしたことはまぎれもない事実である。その後女子生徒は高校を卒業し、今は親からの精神的苦痛から逃れるために「シェルター」に避難し、現在は自立し仕事をしている。

 都教委は、女子生徒には1回も事情聴取をしていない。Aさんのみを悪者扱いにし、Aさんの言い分を全く聞かずにこの処分は強行された。今回は証人調べ、裁判の山場である。証人は、本件の事実関係の要となる女子生徒、Aさんを解雇に追い込んだ張本人東京都教育委員会人事部職員課のG氏、Aさん本人の3人である。

*Aさんの免職に躍起になったG氏

 G氏の証言の中で女生徒の生活環境には都教委としてほとんど注目していなかったことが明らかになった。それは、都教委が1回も女子生徒への事情聴取を行っていないことですでに明白ではあったが、例えば親が勝手に女子生徒の携帯をとりあげ都教委に通報したことについて「(その経過は)調査していない」「そのこと(Aさんのメールの内容)とは関係ない」という回答を行った。女子生徒の生活環境に都教委がほとんど配慮していないことが、より明らかになった。

 都教委G氏のAさん免職に向けた「意欲」は並々ならぬものであった。例えば2013年12月13日のAさんに対する事情聴取は、午後1時から8時まで及んだ。その際Aさんに退職願を出すよう言ったこと対し、「退職願は(Aさんにではなく)同席した校長に渡した、校長と相談して書くように言っただけ」という回答で、事情聴取即解雇が当たり前の姿勢をあらわにした。

 Aさんは一旦は退職願を出すも、すぐに校長から退職願を取り下げた。しかしG氏は退職願の再提出を求めた。これも「当然のこと」と答えた。Aさんへの理屈抜きの免職ありきの姿勢がはっきりとした。しかし他方、現在までAさんの体をむしばむほど続けられてきた強制研修については、高さ30cmに及ぶレポートを提出していることについて、「私の担当ではないのでコメントできないという無責任ぶりであった。


     *写真=裁判後の報告会

*女子生徒の証言が「事実」を明らかにした

 Aさんとメールのやり取りをしていた女子生徒が、勇気をもって証言台に立った。冒頭女子生徒は、自らの家庭環境の厳しさを勇気をもって語る。「母の3度目の結婚で名字が変わったことを学校の出席簿で初めて知った」ことなど、とても第三者の前で語れる内容ではなかったにもかかわらず。

 そして女子生徒はAさんについて、他愛のない冗談をわかってもらえたこと、信頼できる教師であったこと、メールは全部自分から送ったこと、報道されたような「性的な関係」はなかったこと(このようなことは、法廷で発言する義務などないのにもかかわらず)などを勇気を出して語った。

 しかし女子高生に対しての被告都教委側代理人の質問は、実に些末かつ女子生徒とAさんの関係を「いやらしいもの」と決めつけた質問の連続であった。例えば、「(Aさんが)担任になる前からメールはしていたのか」「メールではAさんの名前で呼び捨てではなかったのか」「恋愛感情はなかったのか」等々。証言ののっけから「もっとマイクに近づいて証言してください」から始まった言葉かけが、1回も事情聴取をしていない相手に対して語りかける言葉なのかという印象をもった。

 女子生徒は証言の最後に、「A先生の解雇は望んでいません」 と結んだ。

*どうしても学校現場に戻りたい

 Aさんにとっては、今回体調をくずしていた中での非常に過酷な法廷であった。しかし被告都教委側代理人の質問は、執拗なまでの攻撃的な質問の連続であった。一例をあげれば、一度は提出した退職届について「『退職届』を出したということは、主体的に出したということではなかったのか」と「退職を選択する意思があったのではないか」といわんばかりの質問。これに対してAさんは、「7時間に及ぶ長時間の事情聴取で頭が混乱していた」と反論した。いかにAさんに対して都教委が人権無視の関わり方をしていたかが逆に浮き彫りとなった。

 Aさんの気もちはただ一つ、「職場に戻りたい」である。以下は、Aさんの証言中の言葉だ。

 「どんな理由があろうと公務員としてメールのことは行き過ぎであったと反省しています。そう思い、メールは2011年11月14日にやめました。その後、研修命令には従ってきました。どうか1日も早く現場に戻れるようお願いします。このようなことは二度と繰り返しません。私を現場に戻してください」

*今回の裁判は都教委の権限強化との闘い

 2003年の10.23通達から顕著となった都教委の権限強化。最近、研修期間中の新人教員や若い教員への処分など新人教師への弾圧が目立つ。これらは、都教委の権限強化を維持する為のものとしか思えない。教育委員会制度の改悪もあり、今後も理不尽な現場支配が強まることが予想される中、この裁判に勝利する意義は小さくない。

*次回都立高校教員Aさん免職撤回裁判
 7月9日(木) 証人調べ(免職発令当時の職場の同僚)
 東京地裁(時刻、法廷番号は未定)
 地下鉄丸ノ内線、日比谷線、千代田線 「霞が関」下車 A1出口を出てすぐ


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