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カナダの政治に明るい風〜「IS空爆撤退・難民受入れ」進めるトルドー新政権

      長谷川 澄(モントリオール在住)

 10月19日の総選挙で誕生したカナダ自由党のジャスティン・トルドー新政権は、この2か月弱の間にカナダの政治にかなり明るい風を吹き込んでいます。勿論、全てが始まったばかりですから、結果が出るのはまだ先のことです。しかし、IS空爆からカナダは手を引くという公約はパリの事件の後でもブレなかったし、シリア難民の受け入れも2月末までに2万5千と決まり、軍の輸送機の第一便で、163名が、11日早朝にトロントに着きました。12日はモントリオールにも着きます。

 空港を出る時には永住権を得て、社会保障証、健康保険証も渡されるため、その手続きを待つ間の子どもの遊び場や、コートやブーツなど防寒必需品を受け取る場所も空港内に用意されています。これらは、大小、様々なNGOが難民受け入れが決まった時から集め始め、本当に多くの人々が協力しました。勿論、「国内にホームレスもいるのに」等々の批判もあります。しかし、難民受け入れを止めれば、ホームレスが無くなる訳ではなく、どちらも取り組むべき課題です。西側諸国の仕掛けた戦争で出た難民を西側が受け入れるのは当然だと思います。

 大方のカナダ人は受け入れに賛成し、自分の出来ることで協力したいと通訳や運転ボランティアをする人もいるし、そのためのサイトもあります。第一、12月末までに受け入れる一万人は全て、個人、団体支援の人たちです。100%政府支援の難民は1月以降に着く一万5千人です。個人、団体支援は親族などが受け入れる場合が多いのですが、全くの他人が2人から4人のグループで支援する場合、NGOやモスク、教会などが支援する場合もたくさんあります。支援する人は受け入れた家族の一年間の生活を保障する義務があります。健康保険や言語習得、子どもの学校などは勿論、一般の移民と同じに政府が負担します。カナダ政府のサイトを見ると、支援者になるための解説が出ています。

 新政権が取り組んでいる、もう一つの大事な課題はカナダ先住民との関係改善です。「先住民にとって、カナダは今までずっと、そして今でも、暮らし安いとは言えない、公平でも公正でもない処でした。それを正すのが我々の政府の厳粛な義務だと思っています」と言う首相の言葉で始まった、先住民政策の改革案には先住民関係予算や居住地の教育予算の大幅増額など会計年度が変わるまで待たなければならないものもあるし、それよりもっと時間のかかるだろう、先住民法の徹底的見直しもあります。しかし、長年の懸案で、早急に取り掛かることになったものもあります。先住民女性が被害者の殺人事件と行方不明事件に対する、連邦政府に因る全国調査です。

 連邦警察によると、1980年から 2012年までの間に殺人事件の被害者になった先住民女性は1017人で、これはカナダのそれ以外の女性の被害者の4.5倍にもなります。その内 224件は未解決です。また、現在行方不明の届けの出ている先住民女性は 164人います。前政権の十年間に何度も先住民からも野党からも連邦政府による調査の要請があり、連邦警察のトップさえも、これは社会問題であり、警察だけでは解決できないと言ったにも関わらず、前政権は無視してきたのです。先住民の若者の自殺率や高校中退者の率が他のカナダよりずっと高いことや、居住地の失業率、崩壊家庭などの問題とも密接に関係していることは確かです。

 新政権は先住民担当大臣だけでなく、法務大臣、女性の地位担当大臣が連携して、この問題にあたること、全国に60以上ある部族(居住区約600)に自分達も出向いて、被害者家族、コミュニティに対する聞き取り調査から始めることを国会で表明しました。法務大臣は先住民出身の弁護士で、連邦検事を務めたこともあり、BC州地区の先住民のチーフでもあった女性です。この人を法務大臣に任命したことが、首相の先住民との関係改善に対する強い意欲を表していると思います。新閣僚は半数が女性で、移民出身者など、社会の少数者も何人もいます。これから、その人たちの真価の発揮できる政治が行われることを期待したいものです。

*写真=12月10日、トロントに着いたシリア難民を歓迎するトルドー首相(「ガーディアン・ビデオ」より)


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