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いま日本社会に広がる暴力性、幻影の「日本」〜東アジアのヤスクニズム5日目

 7/29(水)15時になると、いきなり朗読がはじまりました。〈靖国と松井秀男伍長〉の絵 のなかに書かれた詩です。松井伍長は朝鮮人特攻でした。死んでなお、靖国につながれる 無念のさけび……。 朗読は、オープニングにも朗読をした東京演劇アンサンブルの洪美玉さん。

 つづいて、作品解説。今日まで洪成潭さんが休養のため、池田忍(美術史・ジェンダー史 研究)さんと、本展共同代表の古川美佳さん(韓国朝鮮美術研究)が作品批評を行ないま した。 日本の絵巻などの研究をする池田さんは絵の細部にわけいって批評、あらためて目をこら してみるとさらに意味が深まるものでした。たとえば、〈ヤスクニーフクシマ〉の絵で、 津波にのまれる人々の足の肉を海の中で食べる魚たち……。よくみると、まつげが長く美 しく着飾った魚もいます。われわれが食べて着飾っていることが被害者たちとどのような 関係にあるのか、つきつけられるようです。

  *  *  *
19時からは、「ヤスクニと現代日本社会」と題して、中西新太郎(現代日本社会論)と鵜 飼哲(フランス文学・思想)のトークセッション。

 中西さんは「新自由主義とグローバリゼーション下の暴力と幻影の「日本」」ということ で、今回の展覧会趣旨には「ヤスクニズムは国家暴力をあらわす」とあるが、でははたし て、現代の日本で国家暴力をどうとらえたらいいのかを詳細に語りました。それは国家権 力が直接ふるうものだけでなく、わたしたちの日常に広がる暴力−−たとえばネットでの 攻撃、社会的マイノリティの自由制限と正当化、「反日」というラベリングによる置き去 りにされた被害者の排除など−−と、それをささえる構造を分析的に解説しました。

 この前日に沖縄から戻ったばかりの鵜飼さんは、伊江島、高江、辺野古で感じたことをま ず話し、沖縄では、沖縄の米軍基地を東アジアの問題としてとりくんでいることや、日本 政府の悪知恵と日々対峙している現場の報告をしました。 そして、お二人から、長野市の商店街で七夕祭り用の垂れ幕に「戦と書きアンポと読ま す」などと記し、自分の店の前に設置したところ、市に寄せられた二通の苦情により市が 店主を説得し撤去された事件などを取り上げた7月29日付東京新聞の記事「高まる異論排 除 まるで官邸翼賛」を取り上げ、日常にひろがるナショナリズムやそこに内在する暴力 性について言及されました。

 また、「戦後」70年について、中西さんは、戦後日本の「被害のおき去り政治と忘却」の 社会文化装置を批判的に解説し、戦後日本は平和だったとする言説への質問に応えて、鵜 飼さんは、洪成潭さんの作品から読み取る歴史にふれつつ、韓国や沖縄がどれほど過酷な 冷戦期を生きてきたのか、それと非対称的に、冷戦期を非現実的に生きてきた日本を厳し く批判し、近隣諸国の人々の置かれてきた状況が見えなくなっており、ここになんらかの 回路で介入しないと。いまのこの国が「帝国主義国家」であることが徹底的に欠落してい る、このことを昔風に言ってもだめなので、どういう形で再導入するのか、知恵と工夫が 必要だと話しました。中西さんからも、民主主義への新たな問いとして、これからに向け ての問題提起もありました。

 密度の濃いお二人のトークで、いま・これからを考える大事な論点、ヒントがたくさんあ りました。(文責:岡本有佳)

 本日、7/30 (木)19〜21 時は、台湾から王墨林(ワン・モーリン/台湾・劇作家)を招 き、「東アジアの国家暴力とヤスクニズム」と題して、徐勝(ソ・スン/立命館大学特任 教授)と洪成潭(画家)のトークセッション。 東京演劇アンサンブルによるリーディング『エピローグ?』(E・イェリネク作 林立騎訳)。

 残り3日です! まだ観ていない方はぜひご来場ください。

7/31 (金)18〜21 時 ●アートとヤスクニズム  毛利嘉孝(社会学、東京藝術大学准教授) 井口大介(美術家)市原研太郎(美術評  論家) 金城実(彫刻家) 洪成潭(画家)

8/1 (土)14〜17 時 ●ヤスクニと日本軍「慰安婦」  『“記憶” と生きる』上映(2部のみ上映)+トーク:土井敏邦(映画監督) 洪成潭 (画家)

8/2 (日)14〜17 時 ●東アジアのヤスクニズム  ダグラス・ラミス(政治学、沖縄国際大学教員)+まとめディスカッション(コメン ト:須藤遙子(文化政治学、自衛隊協力映画研究)、小倉利丸(現代資本主義論)ほか

※ゲストのご都合で変更される場合があります。


Created by staff01. Last modified on 2015-07-30 11:41:51 Copyright: Default

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