松本昌次のいま、言わねばならないこと(27回)〜ある日の新聞紙面から | |||||||
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ある日の新聞紙面から*5月29日の朝日新聞から ある日とは5月29日、紙面は朝日新聞である。まず「天声人語」がいい。安全保障法制で自衛隊員のリスクが高まるのではないかという議論に対し、安倍晋三首相が、「木を見て森を見ない議論」と発言したことへの批判である。もともと人間には同類である人間を殺すことに強い抵抗がある。にも拘らず戦場ではそうはいかない。激しいストレスにさらされ、イラクとアフガンの戦争に派遣された米兵200万人のうち、50万人が精神に障害をおこし、自殺者も多い。イラクやインド洋に派遣された自衛隊員のうち、帰国後54人が自ら命を絶ったという。安倍首相にとっては、一人の命=一本の木は、どうでもいいことなのだろうか。「天声人語」子がいうとおり、「木を語らずに森は語れない」のである。 1面から2面にかけては、安全保障関連11法案を審議する衆院特別委員会に関する記事が中心である。しかし「『事態』論議答弁あいまい」とか、「『事態』混然」とかの見出しで明らかなように、政府は「重要影響事態」「存立危機事態」「武力攻撃予測事態」「武力攻撃切迫事態」など、やたらと「事態」を並べているが、野党側の質問にも十分答え切れず、いったい、どこがどう違うのか不明のまま「ぼやかし」つづける有様である。いや考えてみると、これが政権側のテなのではないか。政治家でも理解できないものを一般国民が理解できるはずがない。そのまま、「積極的平和主義」とか、国民の生命と財産を守るとかの美辞をまき散らし、審議は十分つくしたと、数をたのんで法案を通す魂胆なのではないか。危機感に立った記者たちの記事に共感を覚える。 翁長雄志沖縄県知事の米国行脚の記事が、5面トップに写真入りで報じられている。普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対の沖縄県民の声を、翁長知事みずから安倍首相に直接訴えても聞く耳を持たず、「辺野古が唯一の解決策」の一点張り。ついに業をにやして、政府間交渉に頼らない「自治体外交」への出発である。ハワイに到着、早速二人の議員と会談、「民主主義国家の日本なら、沖縄の声を聞くべきだ」という意見もあったが、日米首脳会談などによる移設というハードルは高い。「どこまでできるか」----翁長知事の悲痛な覚悟である。それを支えるかのように、文化・文芸欄では、憲法学者の木村草太氏が、「住民投票なくして『辺野古新基地建設』はあり得ない」として、憲法第95条の活用を提言している。それによると、たとえ国会で移設に多くの賛成を得ても、地元住民の同意を得ない限りその法律は制定されないというのである。さまざまな仕方で、なんとしても辺野古移設を阻止しなければならない。 「ゲバラの実像」の連載がつづいている。CIAの元工作員の証言で、ゲバラ射殺の模様が語られる。1967年10月9日。無念だ。また、「70年目の首相」の連載は、終生、憲法改正への執念を燃やしつづけた岸信介首相の系譜がたどられてきた。それが孫の安倍首相にどう受け継がれたか。次回から安保改定と集団的自衛権の関係を考えるという。この連鎖をどこかで断ち切らねばならない。教育欄では、2018年度から道徳が正式な教科に格上げされるが、「子どもの心の中にも関わる道徳の題材を、国がチェックできるのか」と記事は文科省の検定基準に疑問を投げかけている。戦時中、子どもだった頃の「修身」の教科書を想いおこし、ひたひたと寄せてくる不吉な足音が聞こえる。 ある日の新聞に寄せる感想である。 Created by staff01. Last modified on 2015-06-01 21:19:45 Copyright: Default |