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新書『自爆営業』発刊〜ノルマ達成のために自腹を切らされる労働者 | ||||||
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自爆営業とは、ノルマ達成のために日本郵便の職員が、年賀状などを金券ショップに持ち込み、安く売った分の差額に自腹を切る行為をいう。 驚くのは、一部のブラック局のブラック上司の下で働く社員が…ではなく、約25万人の日本郵便の職員の多くが、年賀状販売開始の11月1日からいっせいに自爆するという事実だ。 一人が1万枚のノルマを自力で売るなど絶対に無理。金券ショップで1枚43円で売ると、1万枚なら7万円の自爆。さらに、年賀状より売るのが難しい「かもめーる」や「ふるさと小包便」も自爆するので、1人が1年で10万円単位の自爆はザラ。 はた目には、そんな無茶なノルマは断ればいいと思うが、当人たちにすれば、ノルマ未達成だと、上司の恫喝が待ち、昇進(非正規から正規など)や昇給のストップがちらつかされ、はたまた、ビール瓶をひっくり返した「お立ち台」に立たされて、全社員の前で「皆様の足を引っ張り申し訳ありません」と詫びを言わせられる。 自爆営業のある現場には、必ず、パワハラや長時間サービス残業もある。 1997年度、郵便現場では、236人が精神疾患により休職し、44人が自殺した。民営化された2007年度には、精神疾患者は788人に激増。 2010年。精神疾患で何度も休職していたAさんは、抗うつ薬を服薬しながら勤務していたが、年賀状のノルマとお歳暮の配達で1年で忙しさのピークを迎える12月上旬に突然飛び降り自殺した。汚いのが、職場が遺族に対して、その死亡を巡る書類において「『労災ではない』の項目に○をしてください」と、労災扱いしなかったことだ。考える余裕もないまま○をしてしまった遺族は、昨年末、「やはりおかしい。労働環境が問題だ」と職場を提訴。今後は、どれくらいのノルマがあったのかも争点の一つになる。 郵便現場だけではない。 職員に、自社の製品を買い取らせたり、必要経費を負担させたりの自爆営業はじつに多くの職場に浸透している。 売れ残り商品を、社員割引価格で買い取らせていた引き売り業者のT社。配達に必要なガソリン代や車両リース代などを月9万円前後を給与から控除する牛乳配達会社のN社。 彼らは会社に向かって叫ぶ。「月11万円の手取りでどうして生きていけましょうか!」 そして、本書では、自爆営業をする必要がないことを訴える。 さきに、「そんな無茶なノルマは断ればいい」と書いたが、じつはそうしている人たちが日本郵便にはいる。わずか2000人で構成する労働組合「郵政産業労働者ユニオン」の組合員たちだ。自爆営業を拒否することで、昇進や昇給がとまるどころか、お咎めはほとんどない。間違っていることには間違っていると声を上げる。不当な扱いを受ける組合員がいたら、組合が全力で守る。その哲学に、会社は組合員をぞんざいには扱えない。 N社でも、昨年小さな労組が立ち上がった。ガソリン代やリース代の控除はまだなくならないが、労使交渉で有給休暇の取得や定年退職の延長などを実現させている。 労働者を守るのは労働者自身だ。労働組合の力は大きい。やはり、結論はそこしかないと確信している。 自爆営業は、経営の失敗を労働者に尻拭いさせるものでしかない。それに従う必要はない。(樫田秀樹 『自爆営業』著者) 新書: 228ページ・842円 2014年5月発行 出版社: ポプラ社 Created by staff01. Last modified on 2014-05-07 16:54:25 Copyright: Default |