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当事者たちの切実な叫びを聞け!〜労働者派遣法「大改悪」反対集会

            報告=北健一(ジャーナリスト)

当事者たちの切実な叫びを無視し、彼女、彼らの、そして私たちの人生に関わる法律を変えることなど許されるはずがない。一人ひとりが、そう確信する場になった。

4月18日、国会内で、労働者派遣法“大改悪”に反対!の声をあげるつどいが開かれた。主催したのは非正規労働者の権利実現全国会議(非正規全国会議)、日本労働弁護団、同東京支部。会場は、当初予定していた100人の部屋から大会議室に変更され、220人の熱気で埋まった。

圧巻は9人の当事者たちの訴えだった。判決を4月23日に控える日赤・スタッフサービス事件原告の廣瀬明美さん(写真上)は、横断幕を広げ、「深刻な問題を一般化し、みんなの問題にしたい」。

DNPファイン解雇・偽装請負事件の橋場恒幸さんは、「非正規の裁判は不当判決が続くが負けられない。11日には600人でDNPにデモをした。裁判と運動で職場に戻る」と決意。

女性ユニオン東京の御堂由縁理さんは「人生の半分を派遣で過ごしてきた。今後の人生、先が見えない。労働市場のいたるところに派遣会社のフィルターがかかっている」。

日産争議原告のAさん(女性)は、「3月25日、横浜地裁で敗訴した。奴隷的存在である派遣が、雇止めくらいでガタガタいうなという判決だ」「今日の会を、改悪を阻止する決意と団結の場とするか、改悪を許し残念な思い出にするか。私は団結の場にしたい」。

派遣ユニオンの藤野雅巳さん(写真)は、グッドウィルの廃業後、よく派遣されていた引越し会社に直接雇用されたら、いちばん良くて8500円だった日給が9000円になった。ある週末、その引越し会社の仕事がなかったので派遣会社のサイトを見たら、その会社の仕事が募集されていて、時給950円、休憩を引くと1日6350円だった。後で、派遣料金は8500円。バイトの日給以下と聞いたと「労働ダンピング」の実態を明かした。

元派遣労働者(専門26業務)の藤井豊味さんは、「私は通算10年、5社から派遣されたが、1社を除いて最初から雇用保険も社会保険も入っているところはなかった。保険料を給与から天引きしながら、国に払っていない会社もあった」とし、「治療さえままならず無理して働く人多い。私も痛みや苦しみを我慢して働いてきた。派遣は女性を差別し、使いまわすための働かせ方。幸福追求権に反する派遣を限定、廃止してほしい」。

ダイキン工業事件原告の青山一見さん(JMIU)は、労働局の是正指導で直接雇用されたが、その契約は「2年半」の有期雇用。業績は良く仕事もあるのに、ダイキンは青山さんら204人を切った。「正社員以上に働き、技術を磨き誇り感じた。会社に貢献してきた生きた人間の生活を奪う更新拒否は納得いかない」と訴えた。

派遣労働者の宇山洋美さんは、「私はシングルマザーで、家計補助者ではありません」と切り出し、細切れ雇用、差別待遇、労災隠しの実態を紹介。「私たちはレンタル商品ではない、人間です! 2度とない人生を派遣法によって奪われたくない」と声を振り絞った。

郵政産業ユニオンの長谷川千恵さん(写真)は、郵便局で長年、非正規として働く。正規と同じ仕事をしても賃金は3分の1でまったく上がらない。「『多様な働き方』などと言いますが、本当に選べるのなら、どうしてわざわざ低い賃金、不安定を選ぶでしょうか。私たちは、普通に生活できる賃金と安心できる雇用を求めているだけです」と結んだ。

国会審議の場から駆けつけた山井和則衆議院議員(民主党、厚労委員会筆頭理事)は「低賃金の不安定雇用を増やして、何が(安倍首相の)『賃上げ要請』か。みなさんと力を合わせ恐るべき派遣法改悪を阻止したい」。高橋千鶴子衆議院議員(共産党)は「戦前の労働者供給に戻す悪法」と喝破。山口地裁で勝利したマツダ派遣切り裁判の弁護団でもある仁比聡平参議院議員(共産)は、「当事者たちが語った実態と声を何としても突きつけ、大改悪を阻止する決意をともにしたい」とアピールする。

宮里邦雄弁護士(労働弁護団前会長、非正規全国会議呼びかけ人・写真)が基調報告し、「当事者の話で余すところなく(問題が)語られた。派遣はもともと労働を商品にするものだが、改悪によって低賃金、生涯派遣が現実化し、正社員の不安定も招く。正規も非正規も連帯しよう。世論には2つある。国会世論と国民世論だ。議会外の運動の力で、大改悪を止めよう」と訴えた。

非正規全国会議事務局次長の中西要弁護士は、ネットを使った情報提供や署名、寄せられたコメントのシェアなど、新しい工夫を紹介。

全労連政策総合局長の岩橋祐治さんは、消費増税との相乗効果で間接雇用への置き換えが進む懸念にふれ、「労働側の反応が鈍いとも言われる。しっかり構え、やれることを総力でやりたい」。全労協常任幹事の遠藤一郎さんは、「ほんとうに苦労され闘ってこられた人たちが声を上げてくれた。正規の組合員には、まだまだ(派遣問題は)遠いという意識もあるが、これを壊さなきゃ。第一次安倍内閣でホワイトカラーエグゼンプションをひっくり返したような闘いを起こそう」と呼びかけた。

連合は、労働政策審議会でも改悪反対の論陣をはった新谷信幸総合労働局長がメッセージを寄せ、「子どもや孫の世代の雇用を劣化させ、就職先は派遣しかない社会にしてはならない。連合はきょう、『STOP THE 格差社会!暮らしの底上げ実現 4.18中央総行動』を実施した。一歩は小さくとも、みんなが一緒の方向に進めば社会を変える力になる」と改悪阻止への連携を表明した。

中村和雄弁護士も閉会あいさつで述べたように「当事者の訴えが心に響いた」集会となった。彼女、彼らの訴えに耳を澄ませ、広げることこそ、改悪阻止の力になるに違いない。

*集会を伝えるNHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140419/k10013865541000.html
*主催団体のひとつ、非正規全国会議
http://hiseiki.jp/
*集会でも配布された日本労働弁護団のパンフレット
http://roudou-bengodan.org/topics/detail/20140414_post-95.php
*集会で発言した当事者らの「本音トーク これが派遣労働の実態だ!」を掲載した専門誌「労働情報」
http://www.rodojoho.org/
*東京新聞の報道
東京新聞(4・19)


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