報告 : ドキュメンタリー映画「SAYAMA−見 えない手錠をはずすまで」上映会 | |||||||
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11月28日、東京・荒川区のムーブ町屋ホールで、ドキュメンタリー映画「SAYAMA−見 えない手錠をはずすまで」の上映会が開かれた。主催は実行委。 1963年5月1日。埼玉県狭山市で、女子高校生が誘拐され殺害される事件が起きた。こ の「狭山事件」で警察は身代金受け渡しに失敗。「吉展ちゃん事件」に続き、またし ても犯人を取り逃がすという大失態を演じる。世論の厳しい非難を浴びながら、今度 は被差別部落への見込み捜査を開始。当時24歳だった石川一雄さんを別件逮捕した。 一審で死刑判決、二審で無期懲役に減刑され、94年12月に仮出獄を果たし、現在に 至っている。夫婦と支援者らは粘り強く無実を訴え、第三次の再審請求を闘ってい る。 物語は、土手を走る一雄さんのランニング姿で幕を開ける。帰宅すると夫婦二人の朝食が始まる。 食べ残しや食事の後片づけをめぐる妻・佐智子さんとのいさかいも微笑ましい。舞 台は霞が関の裁判所前に。二人は雨の日も風の日もハンドマイクを握りしめ、再 審開始を訴えている。作品はそんな二人の日常を丹念に追っていく。 少し退屈かと思いながら迎えたストーリー中盤から後半。涙の連続である。すでに名誉を回 復した獄友たちとの再会。同じ境遇に置かれた者同士がお互いを気づかいながら歓談 するシーンは感動的だ。そして佐智子さんの故郷へ。過去にあった露骨な差別 への怒りを語る彼女に胸を打たれる。 映画には一雄さんの実兄夫妻も登場し、事件当時の苦労を回想する。 「49年は長くない。むしろ短い。毎日が闘いだった」。一雄さんとは対照的に雄弁な 兄・六造さん。その告白からは、周囲の理不尽な迫害にもめげず、長男として一家を 支えてきた重圧と自負がにじみ出ている。 刑事たちは、「お前がしゃべらなければ、兄貴を逮捕する」と一雄さんを脅し続けた。一雄さんは大黒柱の兄をかばうために、ウソの 犯行を自白し、31年余の歳月を獄中で過ごしてきた。 客席のあちこちからすすり泣きが聞こえくる。本編に貫かれているのは、厳しい差別 と貧しさゆえに教育の機会を奪われ、無知につけ込まれて犯罪者に仕立てあげられ、 その悔しさから刑務所のなかで文字を獲得していった一雄さんが抱く、強い家族愛で はないだろうか。それは混とんかつ殺伐とした現代社会が、いつからか失いかけてい た絆や、当たり前の生き方を教示しているようだ。 「信念は一つぐらい守ったほうがいい」――一雄さんは再会を果たせずに亡くなった 最愛の両親の墓参りを、無罪獲得まで拒み続けている。 「この人は絶対犯人じゃない。一目見てすぐに分かった」――菅谷利和さん(足利事 件冤罪被害者)は繰り返す。「無罪になると、本当に肩の荷が下りる」――桜井昌司 さん(布川事件冤罪被害者)の言葉には実感がこもる。はにかみ屋で引っ込み思案の 青年が、ある日突然殺人犯として社会から隔離される。冤罪とは、想像を絶する、む ごたらしい権力犯罪である。 夫婦であり同志でもある。苦悩や葛藤と向き合いながら、カメラは二人が初めて出会った 海岸を訪れる。 ケニアで自由に走り回る動物を見ること。中学校に通うことが夢だと、一雄さんは語 る。体力にも自信があるという。その言葉に甘えずに、「見えない手錠」を一日も早 く外すべく奮闘するのが、私たちの責務であろう。 二人は、奪われた青春を取り戻すかのように、仲睦まじく、たく ましく生きている。一雄さんはどこの集会でも、参加者全員に感謝と支援を願う握手を求めてく る。その手の温もりを、ぜひ多くに人々に伝えていきたい。(Y) Created by staff01. Last modified on 2014-01-18 08:45:26 Copyright: Default |