牧子嘉丸のショート・ワールド第1回〜若き在特会員の悩み | |
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若き在特会員の悩み「牧子嘉丸のショート・ワールド」第1回(2013.10.2)ー先輩、お疲れ様。きょうはデモに誘ってくれてホントにうれしかったです。 ーそうか、よかったな。じゃ乾杯だ。そんでどうよ、スッキリしたか。 ーカンパーイ。いや、気持ちのいいのなんの。思いっきりスカッとしましたね。ブッ殺せとか死ねとか、ふだんなかなか言えないスからね。 ーまったくだ。おれもそれがやめられねーのよ。おい、どんどん焼けよ。 ーおれなんかしょっちゅう、オメーの代わりなんかいくらでもいるんだ、このカスなんて怒鳴られてばっかりいるんですよ。 ーホントはそういう奴をブッ殺したいくらいだけどな。まあおれたち非正規雇用で文句のひとつもいえばすぐクビだからね。 ーホントすよ、まったく。いや、ここのキムチもナムルも旨いっすね。 ーおれたちゃデモのあとはいつも焼き肉よ。ひと汗かいたときはこれに限るね。 ーところで、先輩。きょうデモしてたら、歩道にいた奴らがおれたちにレイシストとかなんとかわめいていたけど、あれってどういう意味っすか。 ーいや、実はおれもよく知らねーんだ。レイプとかは知ってるけどよ。 ーそれってアダルトの見過ぎでしょ。 ーとにかく、あいつら日本人のクズだからね。すぐ英語かなんか横文字使いたがるのよ。 ーでも先輩。ここもユッケとかチゲとサンチュとかやたらカタカナ多いけど、焼き肉ってアメリカから来てんすかね。バーベキューかなんかの伝統で。 ーおめーはバカか。焼き肉は、焼き魚と同じで日本料理だろうが。おれたちガキのころから食ってたろ。そうじゃねの? ー(スマホを見ながら)うーむ、なんかちがうみたいだな。どうもきょうおれたちが死ねとか出て行けとか言ってた奴らの国の料理みたいっすよ。 ーホントかよ。でもそんなことどうでもいいんだよ。時代はグローバル社会なんだから。 ーでも、ゴミとか汚ねーとか言っておいて、そいつらの国の料理食って旨いなんて言うの も、なんか変すね。 ーうーん。それって中学で習わなかった?タテを売ってたらいきなり尻をヤリで突っつか れたとか、意味のわかんねーことをいう中国のことわざ。タテホコっていったけ。 ーそれもいうなら矛盾でしょ。 ーピンポーン。そうそう、ムジュン。つじつまのあわないことね。 ーおれたちのやってることってまさにそうじゃないですか。 ーじゃ、おまえはどっちとるんだ!デモやめるのか、焼き肉やめるのか。 ー先輩、スンマセーン。やっぱしこれからも焼き肉食べたいっす。 ーおれも! ーじゃ、あんなデモやめます? ーそうしよう。おい、今夜は思いっきり飲もうぜ。お姉ちゃん、マッコリもう一本。 ーじぇじぇじぇ。それって、あいつらといっしょじゃネエ? ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「泥濘ー冬の日の森鴎外」で上林暁賞受賞。ラフカデイオ・ハーンの晩年を描いた「海の挽歌」や上田秋成の生涯をもの語る「秋成幻談」でコスモス文学賞受賞。以上は著作「海の挽歌」(彼方社)に所収。また昭和最後の日に大杉栄の亡霊とともに反逆する魂を描いた「曇天」などを収めた幻の異色短編集「花づな」(彼方社)がある。レイバーネットの連載・掌編小説「ショート・ワールド」では、「ショートであっても世界を描きたい」と意欲満々だ。月1回程度を予定。 Created by staff01. Last modified on 2013-10-02 13:43:30 Copyright: Default |