報告 : 日韓非正規労働撤廃シンポジウム in Tokyo

7.26「日韓非正規労働撤廃シンポジウム in Tokyo」報告

2012年７月26日、東京YMCAアジア青少年センターにおいて、「日韓非正規労働シンポジウム」が開催されました。主催は派遣非正規撤廃連帯で、ゲストは「希望バス企画団」の一人で全国不安定労働撤廃連帯のキム・ヘジンさんと、同連帯法律委員長のパク・ジュヨンさん。日本からは、キャノン非正規労働者組合の阿久津真一さんが報告し、参加者との質疑討論も活発になされました。

集会ではオープニング映像として、キュリン電子の労働者など「韓国からのビデオレター」が上映され、続いて伴幸生さん(首都圏なかまユニオン)が基調報告。労働者憲章(①同一労働同一賃金・均等待遇、②派遣法廃止、③指揮命令者の雇用責任、④労働実態重視、⑤有期雇用契約の原則禁止・反復更新による正規化、⑥失業時生活保障)を掲げた、非正規職撤廃の日韓連帯運動を提起しました。特にその際、不当判決に対抗する「首切り自由を許さない」実行委員会運動の再開を訴えた点が、注目されます。

次に、パク・ジュヨンさん(全国不安定労働撤廃連帯法律委員長)が、「韓国の期間制派遣法理形成の動力と可能な未来」と題して報告しました。そこでは、「期間制法」成立後の法と現実、製造業派遣に関する大法院判決後の法と現実が、詳しく語られました。韓国における10年間の非正規労働運動は、社会的にも一定の成果を生み出して来たそうです。しかし一方で、経営側は偽装倒産・廃業、海外移転、企業取引関係の複雑化などで対応し、労働法の原則は崩される傾向にあります。したがって、憲法と国際法で保障された労働者の権利の意味を再確認しつつ、昨今の状況に対応した新たな労働法理を解明すべきと主張されました。

キム・ヘジンさん(全国不安定労働撤廃連帯前委員長)は、「非正規職なき世界のための権利憲章運動の趣旨と計画」と題して報告しました。非正規職なき世界を作るネットワークの権利憲章運動は、準備された草案を承認するものではなく、労働者が権利を語り合って作成していく運動だそうです。しかし、権利憲章の企画事業である「希望バス運動」だけが注目され、次期大統領選に際してさえ、労働問題はきちんと取り上げられないのが現状。非正規労働者も、政権の恩恵的な政策に期待し、正規職を攻撃するという問題があります。それでもキム・ヘジンさんは、「労働者が真に権利を手にすることは、憲章や宣言によってなされるのではないが、その基準線に立脚して現実が間違っていることを知り、労働者が立ち上がりはじめれば、変化は容易に起こるのではないだろうか」と結びました。

阿久津真一さん(キャノン非正規労働者組合執行委員長)は、まずキャノン闘争の経緯と到達点を報告しました。そして、非正規労働者の解雇撤回闘争で、職場復帰できた判決や和解は少なく、それも正社員としてではないと指摘。「非正規労働者は、ただクビになるか、闘ってクビになるしかないのか。クビになる覚悟で決起したとき、活路が見い出せる。だが、クビになる覚悟がないと、組合にも入れないのは問題」と訴えました。またキャノンの場合、仮に正社員として復帰しても、月給15万円で、成果主義ゆえ昇給は保障されず、福利厚生手当も一切ありません。正規と非正規が分断されていますが、「どれも自己の問題として、あらゆる労働者が決起しなければ勝てない」と、阿久津さんは強調しました。

参加者との質疑討論も活発になされ、最後に吉岡力さん(パナソニックPDP偽装請負事件争議当該)が議論を総括。日韓非正規労働者の連帯を確認して、シンポジウムは終了しました。なお、Web「派遣非正規撤廃連帯」のURLは、http://nohiseiki.blog.fc2.com/です。

佐藤和之(各専労協)