大阪市職員アンケート調査の中止を求める大阪弁護士会長声明 | |||||||
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大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査の中止を求める会長声明
報道等によれば、大阪市は、去る2月9日、大阪市職員に対して、「労使関係に関する 職員のアンケート調査」(以下「本件アンケート調査」という。)を、2月16日を回答 期限として実施するとの指示を所属長に発したとのことである。 本アンケート調査は、橋下徹市長の職員への回答要請文書に、「市長の業務命令として、 全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合 には処分の対象となりえます。」と明記されており、職員は、その氏名を表示し、使用者 に対して回答をすることが強制されている。 本アンケート調査は、市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動 などについて調査することを目的としているとされる。しかしながら、地方公務員は、公 職選挙法により公務員の地位利用による選挙運動が禁止されるほかは、非現業の地方公務 員について、地方公務員法により政党その他の政治団体の結成関与や役員就任等、勤務区 域における選挙運動などが限定的に禁止されているにすぎない。それ以外の場合には、地 方公務員といえども、一般国民と同様に憲法に保障された、思想信条の自由、政治活動の 自由及び労働基本権を有している。 本アンケート調査で回答を強制されている内容は、多くの問題を含んでいるが、とりわ け、次の点で看過することができない。 第一に、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を侵害する項目がある。 「あなたは、この2年間、特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住 所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動も含む。)に参加したことがありますか」 との質問をし、「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘 われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q7)。 これは、勤務時間外に参加した正当な政治活動や選挙活動の内容についても回答を強制 するものであり、それは、当該職員の支持する政党や政治家、政治に関する関心などの回 答を求めることにつながり、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を正面から侵害する ものである。 第二に、職員の労働組合活動の自由を侵害する項目がある。 「あなたは、これまで大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動に参加したこ とがありますか。」として「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人 は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q6)。 ここでも、勤務時間外に行われた正当な組合活動の内容や参加状況についても回答を強 制しており、また当該職員の組合活動への参加意欲や組合への帰属意識、人間関係を調査 するものである。したがって、その回答如何では、使用者からの処遇に影響を受ける危惧 を抱く職員に労働組合活動への参加を抑制し、その組合活動の自由を侵害することとなる。 また、使用者が正当な組合活動への参加状況を業務命令をもって逐一調査することは、 使用者から独立して活動する自由が保障された労働組合の運営に使用者として支配介入す るものにほかならず、許されない。 以上のとおり、本アンケート調査は、大阪市職員の思想信条の自由、政治活動の自由、 労働基本権などを侵害する調査項目について職務命令、処分等の威嚇力を利用して職員に 回答を強制するものであり、到底許されるものではない。 したがって、当会は、大阪市に対して、本アンケート調査の実施を直ちに中止すること を求める。 2012年(平成24年)2月14日 大阪弁護士会 会 長 中 本 和 洋 Created by staff01. Last modified on 2012-02-15 19:55:18 Copyright: Default |