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LNJ Logo 木下昌明の映画批評〜ビデオプレス制作『がん・容子の選択』
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●ビデオプレス制作『がん・容子の選択』
がん患者の生と死を見据える―彼女が選択した“生き方”とは

 日本では3人に1人ががんで亡くなっている。周りにもがんを患う人は多い。治療法も多種多様で、最近は有名人が手術しないで治ったという週刊誌の記事もあり、がんを巡る話題には事欠かない。そんな中、末期がんの女性を見つめたドキュメンタリー映画の完成上映会が開かれる。

 松原明・佐々木有美制作の『がん・容子の選択』がそれだ。56歳になる渡辺容子は、40歳のとき乳がんを発症した。骨や肝臓などに転移していながらもごく普通に生きている。彼女の主治医は慶応病院の近藤誠医師。著書『患者よ、がんと闘うな』がベストセラーになり、一躍有名になったが、学界では異端視されている。近藤医師は、抗がん剤に頼り、手術偏重に陥っている今の医学は患者を苦しめるだけと批判、緩和治療を目指している。 容子は近藤医師が有名にな前から彼の考え方に共感し、主治医に選んだ。松原と佐々木は3年前に彼女と出会って以来、診察室での医師との対話や病気に対する彼女の考えなどを撮り続ける。

 トップシーンでは、放射線とホルモン剤が効き、腫瘍マーカーが下がって喜ぶ彼女に、医師は「一喜一憂されても困るんだけど。どこかで効かなくなる」と釘(くぎ)を刺す――。

 映画は彼女の生前に一度完成して上映会も行われた。そのとき、大勢の観客を前に彼女は遺言を語っている。そのシーンも後半部に含まれているが、実はそこからがこの映画の見どころとなる。

 容子の選択はこれでよかったのか――死期が近付き、苦しむ彼女にカメラは容赦なく迫っていく。医学の領域を突き抜け、頭では苦しまずに死のうとしても、生きようとする本能が働く生死の極限を見すえる。主題は深刻ながら、彼女のドライな性格もあってか画面は意外に明るい。

 主治医やもう一人の訪問医といい、タクシーの運転手や近所の主婦たちといい、人を思いやる気持ちが伝わってきて胸を打つ。(木下昌明/『サンデー毎日』2012年10月7日号)

*東京都新宿区大久保のR’sアートコート(労音大久保会館:JR新大久保駅徒歩8分)にて9月28日(金)18時45分より上映(参加費1000円、電話・メール予約800円)/主催・予約先:ビデオプレス Tel03-3530-8588 メールmgg01231@nifty.ne.jp 「ビデオプレス」と検索し、ホームページからも予約できます。

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