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報告 : 絶対に負けられない!「JAL控訴審勝利 7・26励ます集い」に1000人
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7月26日、JAL控訴審勝利、7・26励ます集いが開かれた。主催したのは日本航空の不当解雇撤回をめざす国民支援共闘などで、1000人を超える人々が日比谷公会堂を連帯の熱気で埋めた。

日本航空(JAL、植木義晴社長)は2010年のおおみそか、パイロットと客室乗務員(CA)あわせて165人を解雇した。会社更生中とはいえ、その時点で1000億円を超える空前の営業利益を出し、会社更生計画の人員削減目標を超過達成していたにもかかわらず強行された解雇の背後に、組合つぶしの黒い意図があること、それが空の安全を脅かしていることが、この日の集い、特に原告団によるノンフィクションの構成劇によって浮き彫りになった。集い全体の報告は別の方に譲り、構成劇で明かされた事実を中心に報告したい。

JAL機の事故では、1985年の御巣鷹山までで、乗客・乗員735人の尊い命が失われた。構成劇ではまず、それらの事故を振り返り、その背後に、利益第一主義と分断差別の労務政策によってつくられた「ものの言えない暗い職場」があったことを訴えた。山崎豊子さんが『沈まぬ太陽』(渡辺謙主演で映画化)で描いた世界だ。

劇では、そうした安全軽視が経営破綻の遠因になったとし、退職強要と解雇の場面に移る。ある副操縦士は、「希望退職と言うが、希望などカケラもない。少しでもあるとすれば、仲間の解雇が撤回されること」と組合に託し、職場を去った。

家族を支えるために働く父にかわって、3月29日の法廷で判決を聞いた息子は、「棄却」と聞いて涙が滲み、ただただ裁判長をにらんでいた。

裁判はいつまでかかるのか。自分は大学を続けていいのか。自問自答の日々が続き、家族でも話し合った。彼は父への手紙に綴った。 「勝利するまで、ぼくもあなたと一緒にたたかいます」

劇では、職場の実情も報告された。

あるCAは、「結納でも結婚式でも有給休暇がなかなかとれず、CAは『哀しい花嫁』になっている。羽田・香港日帰り便では、出社してから14時間にわたって休憩がとれず、食事も16分で済ませた。みんな疲れ切り、心からの笑顔が失われている」と訴えた。

CA原告71人のうち、親の介護をしていたり、親や子を扶養したり、家のローンを抱える人が30人ほど。娘の解雇がショックで、自殺未遂を図った母もいる。いつも笑顔を絶やさない原告団だが、解雇のショックとその後の苦労はやはり重い。

そんななか、7月3日には、53歳で解雇されたCAの原告が亡くなった。「病院に搬送されるドクターヘリが、彼女のラストフライトになりました」と同僚が語ると、会場にすすり泣きの声が漏れた。

この構成劇では明示されていない大事な事実に、ここでふれたい。それは御巣鷹から今日まで、JALは墜落事故による死者を一人も出していないことだ。それは「絶対安全」を誓った組合と心ある管理職が、現場でものを言い、改善を進めてきた成果である。

現場に築かれた安全の砦が、利益なくして安全なしと放言して恥じない不見識な経営によって、再び崩されつつある。「沈まぬ太陽の第2幕」が、私たちの眼前で進行中なのだ。

控訴審での逆転は、困難を極めるだろう。それでも、一筋の希望はある。職場の内外で、安全運航を犠牲にした「JAL再生」への疑問の声が広がっていることだ。

CA原告団長の内田妙子さんが、国際会議に出席するために乗ったJAL便で、内田さんの胸に光る「解雇撤回」のバッジをじっと見つめる、若いCAがいた。内田さんが話しかけると、彼女は言った。「(フライトで)ご一緒したことがあると思います。必ず戻ってきてください。お待ちしています」

この攻防には、安全第一のJAL再生と、女性も男性も人間らしく働く権利がかかっている。集いの最後に、MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)議長の東海林智さんが言ったように「絶対に負けられない」。

北健一(ジャーナリスト k-kita@h7.dion.ne.jp

*今後の行動などの情報→日本航空の不当解雇撤回をめざす国民支援共闘HP http://www.jalkaikotekkai.com/

写真提供=全労協・岩野


Created by staff01. Last modified on 2012-07-27 21:34:26 Copyright: Default

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