日本労弁、労働者保護の派遣法改正求め集会
――厚労省改正案に「評価できる」・「不十分」――
http://imadegawa.exblog.jp/13083765/
■改正案:派遣先の採用介入解禁など後退も
労働者保護の派遣法改正の実現をめざす集会が3月5日に、
「連合」本部などのある総評会館で開催された。
厚生労働省は現在、
労働者派遣法の改正案をまとめて閣議決定を目指しているが、
連立与党に加わる社会民主党や国民新党からは、
「野党時代に民主党とまとめた『3党案』から
後退した内容になっている」と批判の声が出ており、閣
議決定までにはなお曲折が予想されている。
会議では改正案を
「総論的には評価できる」との声もあった一方で、
雇用責任を負わない派遣先による
採用介入(事前面接)の解禁などが含まれていることなどを
危惧する意見も相次いだ。
集会を主催した日本労働弁護団の宮里邦雄会長は、
「これまで労働者派遣法は、
緩和・緩和・緩和の歴史をたどってきた。
不安定・低賃金労働としての派遣労働は、
我が国の労働をゆがめ、
格差と貧困を生み出す大きな要因になってきた」と
労働者派遣法のこれまでの「改正」の歴史を振り返った後、
「言うまでもなく、
雇用の大原則は直接雇用。
間接雇用は厳しい規制の下にのみ
例外的に許されるべきだ。
今こそ基本原則を踏まえた
労働者派遣法の抜本的な改正を」と
集会の趣旨を語った。
その後、
日本労働弁護団の水口洋介幹事長が、
厚生労働省の労働者派遣法改正案について解説。
「総論的には評価できる改正案だが、
実効的には労働者を救済することができるだろうか」と
疑問を呈した。
「改正案は規制の対象外となる
『常用型派遣』について
何も定義していない。
厚生労働省は
有期雇用の労働者を使用する派遣も
含まれるとしている。
これでは、
製造業派遣原則禁止の看板に偽りありだ。
違法派遣の場合、
派遣先との雇用関係を認める要件の中にも、
派遣先が違法ということを知っていたかどうかという
主観要件が含まれている。
3党案に含まれていた
派遣先の団体交渉応諾義務も削除された」と
水口幹事長は指摘した上で、
「派遣先の使用者責任を強化すべきだ。
さらに、
労働者保護の派遣法改正の実現をとの要求を
伝えよう」と呼びかけた。
■「自民党時代の案をベースに議論」
厚生労働省の諮問機関・
労働政策審議会労働力需給制度部会で
労働側委員を務め、
改正案のとりまとめに加わった
「連合」構成産別・JAMの小山正樹さんは、
「政権交替もあり、
これまで制定以来、
緩和緩和ということで
原則自由がまかり通るようになった流れを
大きく転換させる派遣法の改正を目指してきた。
しかし今回の審議会では、
自民党政権時代の
いわゆる『20年法案』を基本にして、
そこに3党案の内容を
どう付け加えてゆくかという議論になってしまった」と
労働政策審議会での審議の流れを説明した。
「特に、
『常用型』の定義がされていないのが問題だ。
『常用雇用』と言われれば、
期間の定めなく雇われているものと
普通の人は思う。
また、
『派遣先責任の強化』については
今後の課題として残された」と
小山さんは今回の改正点の不充分な点を指摘して、
「改正案で派遣法は第一歩は進めるが
まだまだ問題は残っている。
日々の我々の運動がなければ
次の改正につながらない。
私の立場からも、
さらに取り組みの奮闘を訴えたい」と
報告を締めくくった。
■「政治決断で法改正の実現を」
「連合」構成産別・全国ユニオンに加盟する、
派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は
今回の改正案の実効性について否定的だ。
「労働政策審議会の改正案の内容は、
3党案から後退している。
1つ1つは『すこしづつの後退』だが、
それが積み重なって
あまり使えない内容になっている」と
関根書記長は断言する。
「特に、事前面接の解禁に至っては、
『改正が不充分』という話ではなく
明確に改悪だ。
雇用責任を負わない派遣先が、
労働者を雇用するかどうかを
判断することになってしまう。
厚生労働省はこれまで、
『そのようなことはありえない。
もし派遣先が採用を決めているなら
直接雇用の関係が成立すると
判断される場合が多い』と言ってきた。
今回の改正案では
派遣先の責任は削り取られているというのに、
採用権限は認めるということになっている」。
関根書記長はこのように、今
回の改正案の内容を厳しく批判した上で、
「『年越し派遣村』の惨状を
二度と繰り返してはいけない。
ここでこそ、
政治決断によって法改正の実現を」と訴えた。
■「もう、『仕方がない』と言いたくない」
今回の集会では、
「派遣法の抜本改正をめざす共同行動・大阪」を結成して
活動しているなにわユニオンの中村研書記次長も
壇上に立った。
「『今の派遣法では限界なんだ。
どうしようもないんだ』。
なにわユニオンで専従を始めてから、
何度この言葉を
私たちを頼ってきた人に
繰り返してきたことか。
もう、こんなことは言いたくない」。
派遣労働の現場からは、
スタンレー電気で
偽装請負・違法派遣で働いてきた
日系ブラジル人労働者・
ヒラモト・クニオ・オズワルドさん(神奈川シティユニオン)が
発言した。
「社員が嫌がるところは
私たち派遣や請負が都合良く使われてきた。
社員の言うことを聞くことが
働き続ける第一条件だった。
2003年に派遣法が変わったときも、
私たちは何も知らなかった」と、
これまでの自分の仕事を振り返ったヒラモトさんは、
「私たちは、社会保険があってもなくても、
有給休暇があってもなくても、
『いいです』とか『いやです』とか、
仕事を選べる立場にありません。
そんな働く人の当たり前の権利を
きちんと守れる法律にしてください」。
ヒラモトさんはそう訴えた。
集会は最後に、
「『非正規・不安定雇用労働者の権利確立をめざす』アピール」を
採択し、
派遣労働者保護の法改正をめざして
全力をあげて取り組むことを確認した。
(インターネット新聞「JANJAN」
3月12日掲載文に加筆転載)
酒井徹