JR不採用事件・横浜人活裁判報告〜犯罪行為は許せない! | |||||||
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JR不採用問題が政治和解したが、910名の原告のうち6名が和解を拒否し、裁判継続の道を選んだ。そのうちのひとつ「横浜人活裁判」の第2回控訴審(原告2名・岡英男=写真左、松本繁崇=右)が、7月15日午前11時、東京高裁21民事部であった。 午前10時半、東京高裁入口で傍聴抽選がはじまった。国労が組織的支援を中止したため、42席の傍聴席を埋められないのではと思ったが、実際には50人が並んだ。国労組合員、争議をたたかっている労働者など見られたが、多くは個人の支援者だった。当事者の岡さん、松本さんはニコニコしている。傍聴に人が集まるかどうかが一番心配だったので、たくさん人が集まってホッとしているのがわかる。結局その後駆けつけた人を含め、支援者は60名に達した。 裁判は午前11時にはじまった。まず裁判長から「担当が変わりました」との第一声。しかし、みずから名前を名乗るわけでもない。あいかわらずの裁判所のやり方に私はあきれたが、新しい裁判長の物腰は柔らかであった。裁判長の名前は「前田順司」だという。左側が原告席。政治和解の影響で若干弁護士の数が減ったが、岩村弁護士など強力な布陣は変わらなかった。右側の被告席は、おなじみのJRお抱えの西法律事務所・富田弁護士らの姿があった。 最初に当事者の二人が、なぜ政治和解に応じず裁判の継続を求めたのか、という思いをそれぞれ5分間「陳述」した。岡さんは、家族会議のことから話した。「横浜地裁判決の日、家族で議論しました。妻は、国鉄の出した処分は、“違法・無効だと言っている。違法だよ。違法!”と家族に、そして自分自身に言い聞かせるようにしゃべりながら、卑劣な処分を手で払いのけるように、していました。処分が無効なのに何故判決で負けたのか、家族の誰もが納得できませんでした。そして東京高等裁判所に控訴して正しい判決をもらおうと家族が一致しました。」「1047名問題の政治解決があり和解しましたが、私の人生を左右した根源を解明をし、人間らしさを取り戻すには、東京高等裁判所で勝利判決を手にする以外に道はないと判断し、訴訟を続けることを選びました。」「妻、子供、世を去った父と母に対して、事件を造ったものは、己の恥を知ってもらいたい。辛い思いをさせてきた私の家族と亡くなった父、母の墓に対して謝罪をしてもらいたい気持ちでいっぱいです。」 岡さんは、妻の話の時に絶句した。妻が「違法、違法」と自分に言い聞かせるように話したことを昨日のことのように思い出したのだろう。「違法」をしたものが裁かれず、被害を受けたものが救済されない、それでいいのだろうか。傍聴席にも怒りと感動が広がった。 松本さんも家族の話をした。「争議を続けて母につらい思いをさせている私に対して弟からは“いつまでそんなことをやっていて親を殺すのか”と言われたこともあります。暴力事件をでっち上げるという犯罪行為をして、原告や家族をどん底に突き落としておきながら、いまだにひと言の謝罪もありません。人として許せることではないし悔しくてなりません。」「不採用者の和解について母に報告をし、裁判を続けたいけれども迷いもある私の思いを率直に伝えました。母はすでに叔父と相談していたようで、叔父が“あの判決なら俺もやりたいと思う”と言ったそうです。」 二人とも家族と共に悩みぬきながらも、不当なことは許せない、という思いを貫く道を選んだのだった。横浜人活裁判は3名の訴訟で、今回、訴訟を取り下げた平石吉廣さんも思いは同じだった。「重病の妻のことがあり訴訟継続したかったが断念さぜるを得なかった。二人が復職するまで支えていきたい」との趣旨の「陳述書」を法廷に提出した。 控訴審の争点は「時効」である。原告側の岡部弁護士は「対JRとの争いをしているときに鉄道運輸機構をもっと早く提訴すべき、と言われても非現実的なこと。時効で切り捨てられる問題ではない」と法廷で強調した。今後、時効をめぐってやりとりが始まる。次回は9月16日午前11時に決まった。高裁は1〜2回で終わることも珍しくないが、前田裁判長は政治和解の金銭内容について質問するなど、この問題への関心の高さがうかがわれた。 裁判後の報告会では、「組織の支援がない厳しいたたかいだが、みんなでこの運動を拡げてほしい」との発言があった。私は、二人の陳述を聞いて、改めて当事者の怒りの深さを感じた。そして、犯罪行為である不当労働行為を行った鉄道運輸機構・JRはたたかう人がいる限り、けっして逃げ切ることはできないだろう、と確信した。(松原明) <横浜人活事件について> 横浜人活とは、「横浜人材活用センター」のことで、分割・民営化のとき、組合活動家を職場から隔離し、草取りなどをさせていじめぬいたところ。人活センターは国労つぶしのシンボルで全国1438ヶ所設置され、当時のマスコミでも盛んに取り上げられた。あせった当局(写真)は、国労組合員のイメージダウンを計るため1986年11月、ここで暴力事件をでっち上げる。このため、5名の国労組合員が懲戒免職になった。一方、停職処分を受けた3名(岡さんら)は、それを理由にJR不採用になった。しかし、その後、懲戒免職になった5人の裁判で、当局によるでっち上げが「録音テープ」で明白になり、免職取消が決まり5名は復職した。一方処分の軽かった停職処分の3名は、JR不採用・解雇のままという不均衡が生まれた。今回の「横浜人活裁判」は、3名の名誉回復と解雇撤回を求めたものだが、横浜地裁の一審ではでっち上げは認定されたものの救済については「時効」で退けられている。 Created by staff01. Last modified on 2010-07-15 18:39:56 Copyright: Default |