フィリピントヨタ労組裁判〜冒頭陳述 | |||||||
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各位
フィリピントヨタ不当労働行為救済中労委命令取消行政訴訟の第一回公判が 5月7日(月)東京地裁722号法廷で午前10時から開かれます。 国を相手の中労委命令取消行政訴訟なのですが、4月27日付けでトヨタと三井物産 が中労委側に補助参加申請して、補助参加人としての答弁書を提出してきました。 補助参加自体は認めざるを得ませんが、東京地裁の裁判にトヨタと三井物産が参加し てきたことは、本当は「当事者」として放っておけないという心境なのでしょう。 当日、午前9:30より裁判所前にてビラ配布を行います。多くの方の傍聴をよろしく お願いします。 参考までに、当日の原告側冒頭陳述書を添付します。 フィリピントヨタ労組を支援する会 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 陳 述 書 私は原告を代表して、なぜ私たちがこの訴えを起こさなければならなかったのかについ て、その理由と私たちの考えを、以下のとおり申し上げます。どうか裁判所におかれまし ては、この点に十分なる考慮をお払い下さいますようお願い致します。 [一]この事件の基になっている事実関係はフィリピンにおける労働者の団結権・団体交 渉権・争議権をめぐっての問題にあるという点で外国が一つの舞台ですが、このような労 働者の基本的権利を侵害している使用者側の不当労働行為から捉えるならば、むしろ事件 の主舞台はわが国にあると言えます。なぜならば、フィリピンの当該企業は日本企業の、 それも今や売上高・利益とも世界ナンバーワンとなった多国籍企業トヨタ自動車の現地法 人であり、日本のトヨタ自動車株式会社こそが責任を負う立場にあると考えるからです。 トヨタ自動車が海外で労働者いじめをしているというと、心ある人たちから、「まさかコ ンプライアンスや企業の社会的責任を標榜しわが国企業の模範的存在となっているトヨタ がそのようなことをする筈がない。労働者の側に何か非があるのではないか、それを伏せ ての一面的なプロパガンダではないのか。」といったような反響が聞かれることがありま す。ところが私たちの訴えていることは真実なのです。具体的な事実については、岩波書 店の雑誌『世界』に載っている金子・遠野両氏の論文(金子文夫・遠野はるひ「トヨタは フィリピンで何をしているか」同誌2006年12月号)に詳しく述べられています。 フィリピントヨタ労組はフィリピン労働法に基づく組合承認投票で労働者の過半数の支持 を獲得し、フィリピン最高裁がこの組合を唯一交渉団体であると認めたのに、フィリピン トヨタ自動車は「まだ高裁に懸かっている事件の結論が出るまでは団交に応じる義務はな い」と言い張り、4年間にもわたり団交拒否をしてきました。その一方で着々と会社の息 のかかった新組合を準備し、フィリピン政府(労働雇用省)の助力のもとに新たな組合承 認投票を強行し、高裁の事件の結論が出ていないにもかかわらず、この新組合を唯一交渉 団体と認知し労働協約を締結してしまったのです。このようなやり方は国際労働機関(I LO)でも87号および97号条約に違反するとして問題にされています。また世界的な金属 労働者の労働組合である国際金属労連(IMF)もトヨタのやり方に対する国際的な批判 を強めています。 私たちは、このような国際的世論にさからってフィリピントヨタ自動車が事を強行するの は、その総元締めである日本のトヨタ自動車の指示や承認といった強い意思が働いている と考えます。また、現地の誤った対労働者関係方針を正し、正常化させていく責任を日本 のトヨタ自動車は負っていると考えます。 [二]そういうことからフィリピントヨタ労組はやむにやまれず一縷の望みを託して日本の 私たちの組合に加盟し、私たちは日本のトヨタ自動車との団交応諾を求めて不当労働行為 の申立を行いました。しかしながら労働委員会、とりわけ二審の中央労働委員会は、わが 国の企業が海外においてゆゆしき労働問題を引き起こしていることに労働行政機関として まともに対処することなく、いとも簡単に「わが国の労働組合法はわが国内の問題にしか 適用されない」という勝手な解釈のもとに、「本件は外国の問題であるから労組法の適用 対象外である」という木で鼻を括ったような判断で、私たちの必死の思いからの申立を一 方的に斥けてしまいました。 そのため私たちは、中労委の法令解釈にも審理の進め方にも、判断の結論にも、どうして も納得がいきません。この上は司法機関のご判断を仰ぐしかないということでこの訴えを 起こした次第です。 [三]私たちはかって日本のある造船会社のフィリピンでの公害輸出問題に関わったこと がありました。フィリピンのセブ島で新造船の建造と老朽船の解撤工事(解体)の操業が 始められたことから、周辺の海が重金属、廃油等により汚染され、大きな環境汚染が引き 起こされました。私たちは造船労働者と言う立場で住民からの相談にのりました。その結 果、企業側の杜撰な対応が多数判明し、日比両国の環境省、経済産業省、国土省、そして 国会等でも大きな問題となり、国際法であるバーゼル条約にも抵触し、結局日本の造船会 社は船の解体事業を断念し撤退せざるを得なくなりました。 このようなフィリピンセブ島での一定の成果を知ったフィリピントヨタ労組は私たちに 国際的な支援要請をして来たわけです。私たちは、フィリピンの造船所に公害が輸出され たと同じように、日本からフィリピントヨタ社に不当労働行為が輸出されていることを知 りました。日本の多国籍企業がアジア諸国で問題を起こすことは、正に国境を越えた国際 的労働問題の輸出だと考えます。 [四]フィリピンでは、今、労働者・農民・社会運動家・宗教指導者たちに対する国軍に よる暗殺が横行し国連の人権理事会でも大問題となっています。アロヨ政権が誕生した 2001年以降、既に830名以上の指導者たちが暗殺され続けています。去る3月に、フィリピ ントヨタ労組のエド・クベロ委員長がトヨタ自動車本社への抗議・要請、OECD−NC P(日本ナショナルコンタクトポイント)への陳情、日本の労働者への連帯アピールのた めに短期間来日しましたが、彼もまた命を狙われる危険を常に感じており、フィリピンの 空港に戻った後、妻子の待つ我が家には直ぐに帰ることが出来ないのだと心配しながら帰 途についたほどでした。 [五]このようなフィリピンの現実を知らされるとき、彼らが家族と安心して生活出来る ように、この労使紛争の一刻も早い解決が不可欠です。私たちは日本の労働者・国民・企 業経営者・法律家・政治家・政府がみな何ほどかの重い責任を負っていることを自覚しな ければならないのではないかという思いをもっています。 以上申し述べました理由と考えから、私たちはこの訴えを起こしました。裁判所の公正な 判断を切に期待いたします。 以上 平成19年5月7日 原告・全日本造船機械労働組合関東地方協議会 神奈川地域労働組合執行委員 フィリピントヨタ労組を支援する会事務局長 小 嶋 武 志 東京地方裁判所民事第36部御中 Created by staff01. Last modified on 2007-05-05 10:43:22 Copyright: Default |