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LNJ Logo JR東海、無人の車両が暴走
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特急たから@鉄ちゃん(鉄道ファンの愛称)です。

JR東海・名松線で8月20日未明、夜間に無人の気動車が8.5kmも暴走する事故があったようです。
<無人車両走行>停止場所から8.5キロ 三重の踏切付近 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060820-00000022-mai-soci
JR名松線で無人車両が走る
http://www.nhk.or.jp/tsu/lnews/

JR名松線は、三重県の松阪〜伊勢奥津間を結ぶ単線・非電化のローカル線です。 名松線の「松」は松阪を表しますが、「名」は近鉄大阪線・名張を表しています。 その名の通り、名松線は名張と松阪を結ぶ路線として建設が始まりましたが、伊勢奥津まで開業したところで工事が打ち切られ、現在の姿になりました。 数年前まで腕木式信号機が現役だった路線で、多くのファンが訪れており、私自身、何度も通った路線です。 盲腸線ということもあり、目立ったローカル線のないJR東海ではおそらく最も営業成績の悪い路線ではないかと思われます。

今回の事故は車止めのかけ忘れが原因とのことですが、それ以外にも気になる点がいくつかあります。 暴走した車両は国鉄分割・民営化後にJR東海が導入した車両で、マニア的に言えばキハ11系と呼ばれ、「軽快気動車」に分類されるものです。 名松線のほか、高山本線、太多線、紀勢本線などJR東海のほとんどの非電化区間に走っています。

それはともかく、上記記事にある「エンジン停止後は制動力が落ちる」というのが事実であれば、とんでもないことです。 自動車ですらエンジンを止めて駐車するときにはサイドブレーキがあるのに、エンジン停止後の鉄道車両が、ブレーキ力が弱いために車止めをしなければ走り出してしまうというのは設計上の不備と言わざるを得ないのではないでしょうか。

今回の事故、幸いにも営業時間外に発生しました。 JRの各踏切が、営業時間外であっても列車接近を検知すれば通常と同様に作動する仕様となっていることもあり、大事に至りませんでしたが、名松線はスタフ閉塞式という運転保安方式がとられていただけに、営業時間中に暴走が起きれば最悪、正面衝突する危険もあり、ゾッとしました。

スタフ閉塞方式というのは、列車の運転本数が極端に少ないローカル単線だけで行われている運転方式で、スタフと呼ばれる通行証を駅長が列車に交付し、そのスタフを所持する列車だけが指定区間への進入を許される、という方式です。

たとえば起点駅から終点駅までの全区間が1つの閉塞区間で、その区間を1本の列車だけが行ったり来たりする、というような場合に使われる最も簡単な運転方式で、導入されているのは全線が1〜2閉塞区間でも運転に支障がないような超閑散線区に限られています。

名松線は、松阪〜家城と家城〜伊勢奥津の2閉塞区間であり、それぞれの閉塞区間に対応する2つのスタフを用意し、家城駅の駅長が列車にスタフを交付しています。

名松線では、松阪駅と家城駅に駅長が手動で操作する信号機が設置されていますが、そもそもスタフ閉塞式の場合、駅長は、列車にスタフを交付するまでは抑止、交付したら発車、という取り扱いをすればよいだけなので、信号機はあくまでも便宜的存在で、極端に言えば信号機を設置しなくても運行をコントロールできることになります。全線が1閉塞の区間を1つの列車がぐるぐる回っている遊園地のミニSLに信号機の設置が必要ないのと同じです。 このような区間で、スタフを所持しない無人車両が暴走したらどうなるか、ということを考えると恐ろしいものがあります。 大事故が起こらないうちに、スタフ閉塞式の問題点を洗い出す作業が必要かもしれません。 最後に、余談ですが、旧国鉄時代、駅構内の勾配は最大3パーミル(1000分の3、走行距離1000メートルにつき3メートルの高低差)までとされており、駅の構内にこれを超える急勾配を設ける場合には運輸省の特認が必要とされていました。 家城駅は旧国鉄時代に建設された路線なので、駅構内の勾配は3パーミル以下と判断してよいと思われます。

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