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News Item 1154316529355st...
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大地実です。
 前回、お知らせした首題の件
 ようやくまとめましたのでお知らせします。
まだ、未校正ですので、誤字・脱字・変換間違いなどありまし たら、ご指摘くだされば幸いです。

 私はPCは初級者の域をでないのですが、ワードで書いてた 原稿(こちらは活字の大きさなど編集していますので読みやす いです)は、添付ならば送信できますので、ご希望の方はご連 絡ください。
 ただし、せかさないでください。

            記

      ■暴走する警察 ポスター1枚で逮捕
     川崎・不当弾圧事件 7月28日記者会見内容

 憲法 第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現 の自由は、これを保障する。という法益を知る警察官ならば、 その場で説諭し解放すればすむ程度の微罪なのに不当逮捕・勾 留した今事例の神奈川県警・中原警察署警官の暴走(ミュージ カルの公演ポスターを公演会場のすぐ近くで、たった1枚をセ ロハンテープで貼っただけで、逮捕、48時間の拘留というとん でもないひどい不当弾圧事件)の経過を読み解くことにする。  また、この件に限らず、ジャーナリズム精神の希薄なこの国 のマスコミが「ミニ逮捕」「プチ逮捕」と表現する公権力の恣 意による重大な人権侵害事件が多発している。「新しいファシ ズムの時代」と指摘されているのである。
 そこで、本来ならば民主主義に敵対する者として裁かれるべ きは誰かを明らかにしていきたいと思う。

 なお、この事件は憲法第21条(表現の自由)に関する重要 事件なので転送・転載は自由とする。

   2006年7月28日、川崎市中原区で記者会見が行なわれ た。内容は1.不当逮捕された本人(以下本人という)による これまでの経過の説明、2.弁護人による法的解釈の説明、3 .取材に来ていたマスコミ記者らの質問とそれに対する本人及 び弁護士の応答であった。  最後に「ポスター1枚で逮捕! 川崎・不当弾圧を許さない 会(仮称)」(=支援の会)が発足することが発表された。

 警察官もピンからキリまでいることは間違いがない。中には 犯罪を行なうものがいることも警察官が起す無数の不祥事事件 (ちなみに「警察 不祥事事件」としてGoogleだけでの検索結 果でも 約 11,200,000 件あった。2007年7月29日検索) から、論ずるまでもないことである。
 神奈川県警は大阪府警などと並んで、かつて不祥事多発で悪 名を全国に響かせた県警である。

 「玉石混交情報過多の時代」、ともすると人は石情報氾濫の 中に埋もれ、身近に起きたこと以外を忘れがちになる傾向が強 くなり、玉の情報を見失いがちになるものである。
 今回の事例は神奈川県警内の悪弊・悪習がどれだけ残存して いるのかを、市民も追検証する良い機会・題材でもあろう。

 警察官の犯罪には私的時間における犯罪と公的時間における 犯罪がある。その中には主権者から委任された権力を悪用・濫 用した犯罪がある。それは、主権者に対する重大な背信行為で あり、日夜住民を犯罪から守るために一生懸命に努力している 多くのまじめな警察官に対する重大な背信行為でもある。健全 な民主主義国においては許されざる行為である。

●全警察官に問う「上官の命令が違法であった場合でもその違 法命令に従うべきか否か」
●上官に告げる。諸君らは「上官の責任の法理(=知りえるべ き立場にある者の責任の法理)」から逃れ得ないことを頭に叩 き込んで仕事をすることである。※注:この法理は権力を悪用 ・濫用した犯罪者を裁く法理である。警察官に限らず検察官・ 裁判官・自衛官などにも同様に適用され、ミロシェビッチ大統 領が裁判にかけられたように国家元首にも適用される強い法理 である。

 本件事例の場合、
 憲法で保証された表現の自由に対する重大な法益侵害である ことは、川崎市屋外広告物条例のいう法益侵害と比較すれば、 どちらが上かは、詳しく論ずるまでもなく月とスッポンほど明 らかである。本人は、処罰に値する違法性はなく、逃亡や証拠 隠滅の恐れもなかったにもかかわらず不当に逮捕するという、 法の精神に無知で恥知らずな一部警察官の暴走・暴挙であり、 さらに権力を悪用・濫用した公務員職権濫用罪に該当するとの 批判も免れない。     こういう法律的な難しそうなことを書かなくとも、不当逮捕 と釈放を求める抗議が中原署に殺到したことは、健全な良識あ る市民から見ると、今事例は異常であるからであろう。  

 記者会見場で当日のポスターも手に取って見たが、A3版の カラー刷りのきれいなものである。健全な良識ある人ならば、 このポスターが「良好な景観もしくは風致を害し、または公衆 に対し危害を及ぼす恐れの全くないものである」ことは、一見 して明らかである。

 今後の「公務員の職権濫用による悪質な犯罪を防止すること に資するため」と「きちんとした情報公開とは何か」との観点 から法律上のことを含めてさらに書き進めることにする。

 当記者の見解は1.これまでの取材から総合的に判断して不 当逮捕である。2.法の精神に無知な一部警察官の暴走・暴挙 であり、権力を悪用・濫用した公務員職権濫用罪に該当すると の指摘も免れないとするものである。 
 なお、当日現場にいた警察官、取調べに当たった警察官、検 事らの説明なり、反論権も充分尊重するので、取材に応じるよ う、また遅滞なく広く公開された記者会見を開くよう、老婆心 を持って提案しておく。

 不当逮捕された本人と同弁護人・萩尾健太弁護士が承諾して くれたので、「本人よりの記者会見資料(これまでの経過の説 明)」と萩尾健太弁護士の「勾留請求をせず釈放することを求 める意見書」を全面的に公開する。
   その理由は、第一に、このように全面的な報道がなされたこ とはまずないということである。第二に、本人及び弁護士のい う不当逮捕か、警察のいう容疑者として逮捕までしたのが正当 か不当かを、読者を含む全市民に判断していただくためである 。この記事はインターネット上にも掲載するので、内外に広く 知られることに当然なると思う。

 まず、不当逮捕された本人が記者会見において、経過説明を するさい配布された資料を全面的に公開することにする。

  ■7月28日 記者会見資料 (本人より)

 以下本文(挨拶部分の6行は略)を掲載(なお、記者のほう で※注に簡単な説明を付記して理解しやすくしている)する。

 それでは、逮捕から釈放にいたる経過を簡単に述べさせてい ただきます。
 7月23日日曜日、私が属しています月桃の花歌舞団の川崎 公園が中原市民会館で行われることになっており、朝から会場 で準備をしていました。お客さんの会場への案内と一人でも多 くの方に来ていただくため、ポスターを会場周辺に貼りに出ま した。
 午前11時ごろ、(会場の中原市民会館から20〜30メー トルぐらいの)小杉町の電柱にポスターを貼ったところで、「 何をしている。許可を取ったのか。」と制服警官が声をかけて きました。すぐにもうひとりの警官がかけつけてきました。も のものしい様子の警官二人にせまられ、私は、「すいませんで した」と答え、すぐにポスターをはがし謝りました。
 これですんだと思い会場に戻ろうとしたところ、警察官は「 ここははってはいけないところだ。許可を取らずにはってはい けないところに張った。あなたも悪いことをしたと思っている ように、そういうことをしたということだ。名前と住所を言い なさい。」と強く言い、その場を離れさせてくれません。いつ のまに周りには市民がたくさんいて人だかりになっていました 。
 不安になった私は、「その前に、弁護士と劇団員に連絡を取 らせてください。」とお願いしました。私の携帯電話がなって いて「電話に出てもいいですか」と聞きました。
 警察官は「ダメだ。証拠隠滅の疑いもあり、それはできない 。名前と住所をどうして言えないのか」といい、私は「いや、 言えないのではなくて、その前に、弁護士や仲間と連絡を取っ て対応したいと言っているだけです。逃げも隠れもしません。 どうして電話に出てはいけないのですか。あなたの目の前で話 しているではないですか。」「今日は公演があり、その準備を しているところで、私も出演します。すぐそこの中原市民会館 です」と答えました。
警察官は「だめだ。どうして名前と住所をいえないのか」の一 点張りです。このやり取りがしばらく続きました。

 私は「どういう違反なのですか」と訊ねると、「川崎市屋外 広告物条例違反だ」「条例ではってはいけないところに張った ということだ。署に来て詳しく聞かせてもらう。(仲間の警官 に)車を呼べ。じゃあ待ちなさい。今仲間や上司に連絡を取る 」と言って、すぐに3人(?)ほどの警官が駆けつけてきまし た。
 駆けつけた上司の警察官が「あなたは、ポスターを貼っては いけないところに張っているのを警察官に見られている。現行 犯です」と宣告しました。
 このとき逮捕とは言われなかったと記憶しています。
さらにその上司の警察官「川崎市屋外広告物条例違反です。詳 しいことは署にいって聞きます。まず現場の写真を撮る。電柱 を指差して写真機のほうを向いてください」と罪人扱いです。
 私は「待ってください。その前に弁護士と連絡を取らせてく ださい。大口弁護士です。連絡先が携帯にあります。(弁護士 宛に)一報させてください。」と願いましたが、聞き入れられ ず、電柱の横に連れて行かれ立たされて写真撮影されました。

 そうこうしているうちに、警察公用車(パトカーではない) が到着し、中には私服警官が2・3人乗っていました。警官は 「とりあえず署に来て話を聞きます。それではあなたを同行し ます」といって、ベルトと肩をつかまれて車の中に無理やり乗 せられました。この時も逮捕とはいっていないように記憶して います。同行の前に警官が何か言ったような記憶があるが思い 出せません。

 中原警察者につくと、そのまま取調室に連れて行かれ、何人 もの警察官に口々に「どうして住所名前を言わなかったのか。 だからこういうことになるのだ。」と言われながら、所持品を 全て没収され、ベルトをはずされて、縄と手錠をかけられまし た。所持品の中には携帯電話があり、鳴っていましたので直人 で靴口に「(電話に)出させてください」といいましたが「だ めだ」の一点張りです。(※注:この電話は現場を目撃した劇 団員が心配してかけてきたものだが、それは後日にならないと わからなかった。)  上司の警察官(生活安全課長)が「弁解録取書」(※注:容 疑者の弁解を記録する供述調書のこと)を作成します。意に反 して強制はしません(といったような)」と取調べがはじまり ました。弁解録取書に弁護士を選任する自由を認めた上で、不 利な供述は強要されず‥という記載があったので、「名前と住 所は言わないのではなく、ここにも書かれている弁護士と連絡 を取らせてほしいといっているんです。携帯に大口弁護士の連 絡先があります。見させてください」と言いましたが、「今の 段階ではできません。じゃあ弁解録取書をとります」ととりあ ってくれませんでした。  署名・押印については、弁護士と連絡を取ってからというこ とで拒否しました。

 警察官(生活安全課長)が「下に劇団の長谷川という人物が 来ていて、聞いたよ。今日14:00からリハーサルで、17 :30から本番だって言う事じゃないか。しかも、あなたは準 主役ということじゃないか。17:30だったらまだじかんが ある。私たちは、あなたたちの公演をじゃましたいわけではな い。とりあえず簡単な調書を取って上司に諮ってみる。悪いよ うにしないから。私たちも組織だ。そのために書類を調えない といけない」というので、名前・住所・年齢・勤務先等必要な 情報を供述しました。
「じゃあ、これをプリントアウトして大急ぎで上司に諮るから 、待ってて」と出て行きその間に押収品目録の作成、所持品の 全てのコピーなどが行なわれました。
 しばらく間があって、先ほどの警察官(生活安全課長)が現 れ、「今日は残ってもらうことになった。明日の朝また取調べ を行なう。上司に図った結果そう決まった。恨むなら私を恨み なさい」と、前言をひるがえしたのです。

 留置場に入れられました。
 全裸になって身体検査、問診、などの手続きの終わりかけた ところで警官が、「今、萩原(警察が間違えていた。※注:実 際は萩尾健太弁護士である。)という弁護士が会いたいと来て いる。あなたの団体に呼ばれてきたようだ。
これから大口弁護士に連絡とろうとしていたが、どちらを選任 しますか?」と言いました。
「萩原弁護士と会います」と答えると、「わかりました。じゃ あ大口弁護士とは連絡を取りません」といいました。あとでわ かったのですが、警察は弁護士との連絡など何もしていません でした。

 萩尾弁護士との第1回接見は午後3時ごろ、ようやく実現し ました。ここまでは外部と全く遮断され、非常に苦しかったで す。逮捕の経過、弁護士選任手続き、黙秘方針の確認をしまし た。

 その後の取調べでは
「黙秘というのは、一番卑怯な手だよ。黙秘を使うのは過激派 やオウム真理教のような団体だ。あなたも、本当は自分の考え を述べたいのに、組織に黙秘するように言われているのではな いか。そんなことをすると不利になるだけだよ」とか、チラシ の写しを取り出して、「イラク、非武という勇気とはどういう 意味か」「イラクのテログループに資金を送っているとか爆弾 を作っているとかそんなことをしていないならむしろ堂々と自 分たちのやっていることの正当性を訴えるべきではじゃないの か」とか、「組織に言われてやっているならろくなことはない よ。自分の頭で考えないと。そういう組織は北朝鮮やオウムの ような結末になるよ。あなたが不利になるだけだよ。このまま だともっとながくなるかも」というようなことが、延々と話さ れました。
 明らかに、直接の容疑とは関係ない政治的背景や思想信条を 探ろうとしていました。

※注:黙秘権 刑事事件の被告人や被疑者が、取り調べや裁判 のときに、自分に不利益なことは答えなくてもよい権利で、日 本国憲法第38条1項,刑事訴訟法第311条1項などで保障 されている。被疑者や被告人が拷問などによる自白をさせられ ることをふせぎ、その人権を守るために生まれたものである。 また、取調べに際して捜査官が黙秘権の存在を告知しなかった 場合、その取調べにおいての供述は証拠にすることができない とされており、裁判上も強い保障が図られている。しかし、悲 しいことに、人権擁護に充分な配慮している憲法を持ちながら 政治、行政などの怠慢・不作為により、人権後進国の域をいま だにでない日本では守られないことも多いのが実態である。今 事例の取調官も黙秘権について無知であるか、知っていて嘘を ついているのか、どちらにしても問題ある取調べであることは 明らかである。
●日本国憲法 第38条 何人も,自己に不利益な供述を強要 されない。
●刑事訴訟法 第311条 被告人は,終始沈黙し,又は個々 の質問に対し,供述を拒むことができる。

 生活安全課長は、翌日になって少し態度を変え
「昨日、外でお仲間がワーワーやってたけど何か誤解している んじゃないか。私は、生活安全課の花井です。あなたがポスタ ーを貼ったことを調べようとしているだけで、あなたの過去の こととか信条とかを聞きだそうなんて思っていません。だから 正直に答えてください。 何も話さないと10日つくかもしれ ませんよ」などと話しました。  

 翌日、萩尾弁護士と2時過ぎに接見しました。その後は取り 調べありませんでした。抗議の行動や抗議電話の影響かもしれ ません。
 3日目に検察に送られ、萩尾弁護士の働きかけもあり、勾留 請求されずに処分保留のまま釈放されました。

 私が今回の件で思うことは
 ポスターを電柱に貼ったことは軽率かもしれませんが、その 場で注意されてすぐはがし、謝ったわけですから、罪人扱いさ れたことには納得がいきません。
  まして、警察署に連行され3日間も自由を奪われて留置さ れ、私の人権を侵害されたのみならず仕事や家族に多大な迷惑 と心配をかける結果となりました。ポスター1枚程度のことで 、警察にそこまでする権限があるのでしょうか、きわめて腹立 たしいことです。
 今回のようなことが起きると、文化活動や平和運動の自由な 表現や宣伝ができなくなるのではないかと不安になります。  横浜地検川崎支部は、今回の件を起訴することなく一日も早 く不起訴処分として欲しいと思います。中原警察に対しては、 近いうちに厳重に抗議したいと思います。

 以上が「7月28日 記者会見資料 (本人より)」である。

 つぎに、本人弁護人・萩尾健太弁護士の「勾留請求をせず釈 放することを求める意見書」全文を掲載する。この事件につい て、どのように法的解釈すべきかを意見書として、横浜地方検 察庁川崎支部検察官と川崎区検察庁検察官宛に提出したもので ある。これにより本人は釈放された。記者は法学部で学んだ者 として内容を読み、同意見書の解釈は正当であると判断する。
 なお、後日、一般の人にもわかりやすい解説(説明)をつけ た記事も報道したいと思っている。

■勾留(こうりゅう)請求をせず釈放することを求める意見書
                2006年7月25日

横浜地方検察庁川崎支部  検察官  殿
川崎区検察庁  検察官  殿

                                        被疑者  中原警察署137号

 上記のものに対する川崎市屋外広告物条例違反被疑事件につ いて、下記の通り勾留請求をせず釈放されるように求める。

             弁護人  萩尾  健太
               ※注:住所は略
             渋谷共同法律事務所
             TEL03(3463)4351
             FAX03(3496)4345

         意 見 の 理 由
 被疑者には処罰に値する違法性がなく、本件逮捕手続きは違 法であって、被疑者には罪証隠滅の虞も逃亡の虞も勾留の必要 も全く存在しないので、勾留の要件を満たさない。

1 被疑者には処罰に値する違法性がないことは明らかであ  る。    被疑者は新聞報道によれば、さる7月23日午前11時10 分頃、中原区小杉3丁目の道路わきの電柱に、ミュージカル公 演の告知ポスター一枚を張ったとして、川崎市屋外広告物条例 違反の嫌疑で現行犯逮捕されたという。    川崎市屋外広告物条例の目的は、同条例第1条に「良好な景 観もしくは風致を害し、また公衆に対し危害を及ぼす恐れのな いものでなければならない」と規定されている。しかし、同人 の張ったポスターは、当日に行なわれる公演のものであり、そ の告知のためのものであるから公演が終わればすぐに剥がされ るものであって、張られている期間は一日に満たない。またポ スター自体は美しいものであり「良好な景観もしくは風致を害 」するものではない。押収された透明セロハンテープで張られ ていたものであり、その点でも景観を害しない。看板などと異 なり風で飛んで人に当たるなどにより「公衆に対し危害の及ぶ 恐れ」の全くないものである。
しかも、公演されたミュージカルは、「愛の三線物語―イラク 、非武という勇気」という作品である。その内容は、以下のよ うにチラシで紹介されている。

 「戦争と占領が続くイラク。現地では占領軍とイスラム武装 勢力の“2つのテロ”によって毎日市民が殺されています。そ の中で、『テロでテロをなくすことは出来ない』と、非武装・ 非暴力で立ち上がっている人々がいます。
イラク自由会議(IFC)を結成し民主的なイラクと世界を目指 している彼らに直接取材して、制作したミュージカル『愛の三 線物語』―イラク、非武という勇気―。 『心の武装』が進む日本社会に疲れや不安を感じている人、戦 争のない世界を願う人すべてに送る、希望のミュージカルです 。

 このように、イラク戦争を題材に、戦争の悲惨さを訴え、非 武装・非暴力での解決を求める政治的な内容なのである。
こうした表現物は、自己実現の価値を有するから表現の自由と して憲法31条で保障されるが、とりわけ政治的表現は、それ が侵害されれば民主性の過程に働きかけて厭離を回復すること が極めて困難になるため、自己統治の価値を有し、優越的地位 にあるものとして高度の補償がなされるべきである。    本条例においても、営利を目的としないポスター等は、施行 規則別表では「政党その他の政治団体、労働組合等の団体又は 個人が政治活動または労働運動として行なう宣伝、集会、行事 または催者類の用に供するもの」が例示され、第3条(市長の 許可)及び第4条(禁止地域等)の規制の適用除外とされてお リ、上記の「政治的表現の自由の優越的地位」を前提とした規 定となっている。    本ミュージカルは有料ではあるが、ほとんど経費を回収する 程度であり、営利性はきわめて低い。
 よって、本件のポスター貼付は、本条例が目的とする法益侵 害を生じない上に、優越的地位を有する表現の自由の行使であ り貼付期間も極めて限定されたものであるから、処罰に値する 程度の違法性がないことは明らかである。
 よって、勾留の要件たる「罪を犯したことを疑うに足りる相 当な理由」(刑訴法207条、60条)が認められない。

2 本件逮捕手続きは違法である。
(1) 逮捕の不告知
 上記のように、被疑者は11時10分頃逮捕されたとのこと だが、実際には、被疑者は、警察署まで同行するようにいわれ ただけで、逮捕するとは告げられていない。「逮捕」と言われ たのは、被疑者が取り調べを受け、調書を作成し終えてからで ある。    刑事訴訟法201条は、令状主義及び被疑者の防御権確保の 観点から「逮捕状に被疑者を逮捕するには、逮捕状を示さなけ ればならない」と規定している。そのことからすれば、現行犯 逮捕の場合も、被疑事実と逮捕するということを告げなければ 、やはり被疑者の防御権確保を欠き、違法となるのである。
 したがって、同行といわれて、調書を取り終わるまで逮捕し たことが告げられなかった本件の場合は、逮捕手続きの適正を 欠き、憲法31条、刑事訴訟法1条、213条に反し、違憲違 法である。

(2) 弁護人選任権の侵害
 被疑者は、逮捕される以前、路上で警察官に職務質問されて いる段階から、弁護士と相談して対応する旨のべており、中原 警察署に同行されてからは、「大口弁護士を呼んでほしい。弁 護士と相談したい、外部と連絡させてほしいと」と言い続けて いたのである。ところが、被疑者取調べに当たった警察官は、 「大口だけじゃわからない」「弁護士は日曜日だからいないだ ろうな」などと述べて、連絡を取ろうとせず、被疑者が、携帯 電話に分る者が登録されているので見てほしいと頼んでも、携 帯電話は押収品でもないのにもかかわらずこれを拒絶した。

 結局、被疑者が同行されるところを目撃した被疑者と同じ劇 団員から当職へと出動の要請が来たのであり、被疑者からは弁 護士への連絡はなされなかった。
 これは、「何人も、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられ なければ、抑留または拘禁されない。」とする憲法34条、「 被疑者は、何時でも弁護人を選任することが出来る」とする刑 事訴訟法30条に反するから、逮捕手続き自体が違憲・違法と なる。

(3)利益誘導による黙秘権の侵害
 このように、弁護人も選任させず、逮捕したということも告 げずに、中原警察署は被疑者を取り調べた。しかも、違法な利 益誘導により被疑者の黙秘権を侵害したのである。    被疑者は当初、氏名・住所含めて完全黙秘していたが、被疑 者を取り調べた警察官は,「仲間の劇団員が受付に来ていた。 あなたが準主役なんでしょ。5時から公演か。そんな大事なこ とがあるなら、名前や住所を言えば、上司と話して、悪いよう にしないから。私たちも組織だから。最初から、名前と住所を 言っておけば、こんなことにならなかったのになあ」などと述 べ、被疑者に、住所・氏名を述べて取り調べに応じれば、5時 までに釈放されるように思わせ、被疑者の黙秘を解かせ、本件 に関する調書を作成し、署名・捺印に同意させたのである。  ところが、その後、被疑者に逮捕されたと告げ、「課長に話 したら、いやだめだ、数日間ゆっくりやるといわれた。恨むな ら私を恨め」などと無責任に述べたのである。これは偽計によ る利益誘導で被疑者の黙秘権を侵害したことにほかならない。    このような逮捕下での違法な取調べは、逮捕の効力自体を違 法とするものである。

(4)まとめ
 以上幾つもの違法行為により、逮捕手続き自体が違法となる 。勾留は違法な逮捕を前提とすることが出来ないから、勾留請 求も違法として認められない。

3 被疑者には勾留の理由がない
 被疑者は、上記偽計による黙秘権の侵害でも明らかなように 、また、所持していた健康保険証からも明らかなように、定ま った住所を有している。
 被疑者が所持していたポスター等は押収されており、「現行 犯逮捕」である本件において、被疑者がさらに何か「罪証」隠 滅しようもない。
 また、被疑者が「証人」たる警察官を威迫するなどというこ とは到底考えられない。

 被疑者は、新聞報道では福祉施設の職員ということで、捜査 官が把握している定職があり、家庭もあるのだから、本件のよ うな軽微な法定刑しか規定されていない罪で、職や家庭を捨て て逃亡するとは到底考えられない。したがって、「逃亡すると 疑うに足りる相当な理由」も存在しない。    被疑者は現在、黙秘し調書の作成を拒否しているが、そのこ とを理由に「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」や「罪証を 隠滅すると疑うに足りる相当の理由がある」とするのは、憲法 38条1項で保障された被疑者の黙秘権の侵害であり、およそ 違法として認められない。
 さらに被疑者の妻及び当職が、被疑者の身柄を引き受け、被 疑者が罪証の隠滅も逃亡もしないことを保証する旨の書面も用 意している。
 以上から見ても、被疑者について勾留の理由がないことは明 らかである。

4 勾留の必要性は認められない。
 被疑者は前述のように定職を有し、家庭生活も営んでおり、 勾留が長期に亘れば、家族は悲嘆にくれ、失職の危険も生じる 。  本件勾留は、前述のように全く理由が認められないことから すれば、そうした家族や仕事の状況を利用して自白を得るため の勾留と考えられるのであり、憲法38条違反であって、その 点からも本件勾留の必要性(刑事訴訟法87条)は認められな い。

5 結語
 よって、検察官に置かれては、被疑者には勾留の理由も必要 もないものと認め、勾留を請求せず、被疑者を釈放されたい。  一時も早い被疑者の身柄拘束からの解放こそ、捜査の適正を 確保すべき(刑事訴訟法193条)検察官の責務である。                                                      以上

 以上が「勾留請求をせず釈放することを求める意見書 20 06年7月25日」である。(by 大地実)


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