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現在、厚労省で労働法制の全面改悪が検討されている。問題点だらけの「素案」に対する全労協・全労連の見解を紹介する。
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全労協FAX情報
N0.834 2006年6月20日(火)
全労協事務局発行 TEL 03-5403-1650

 労働法制の全面改悪である厚労省「素案」に「反対」の申し入れを!

 「労働契約法制」と「労働時間制度の見直し」を審議している労政審・労働条件分科会は、重大な山場を迎えています。それは、厚労省「素案」が出されて、7月中の「中間まとめ」に向かって動いているからです。全労協は、以下の通り「反対」の申し入れを各委員に出すました。
以下を参考に各労組、職場・地域からも「反対」の申し入れを出そう。

<反対の申し入れ>

 厚労省「素案」は労働法制の全面改悪であり「反対」です

 労政客委員の皆様におかれましては、ご多忙のなかご苦労様です。
 さて、厚労省は、6月13日、労政審・労働条件分科会に対し、「労働契約法制及び労働時間法制のあり方について(案)」という厚労省「素案」を出しました。この厚労省「素案」について、以下の点から労働法制の全面改悪であり「反対」です。また、反対意見があるなかで7月
中に「中間まとめ」を強行することにも反対します。

 労働契約法制関係について

1、「就業規則の変更」という「労働条件の改悪」について、「過半数組合」との合意があれば「合理的」なものとする。また、「過半数組合」がない場合は「すべての労働者を適正に代表する者」という表現で「労使委員会」の決議があれば「法的効果」を与えるとしている。
2、これは、組合組織率が18.5%という状況のなかでは、職場に「労使委員会」を設置することを基本としており、「過半数組合」がある場合は「労使合意」方式に変更することにより、「過半数組合」取り込もうとしている。まさに、少数組合を形骸化し、職場の団結権を侵害するものであり「反対」です。
 ましてや、「就業規則変更で不利益」を受ける個別労働者も「合意」したものとされ、不服がある場合の「立証責任」を労働者側に求める不当なものである。これは、労働条件の「本人同意原則」を無視し、労働者の権利を侵害するものであり「反対」です。
3、転勤・出向は「就業規則が不合理」でない限り、労働者の個別の承諾は「不必要」、転籍は承諾が「必要」としている。また、個別の「労働契約の変更」(勤務地・賃金等の変更)について、労働者が異議をとどめて承諾した場合、「異議をとどめたことを理由に解雇はできない」としている。これは、当然のことである。しかし、別な言い方をすれば、労働条件の「不利益変更」に反対し、応じなかった場合は「解雇」できるということである。つまり、「研究会」報告にある労働条件の「本人同意原則」を無視する「雇用継続型契約変更制度」が生きているということであり、使用者側の権限を一方的に強化するものであり「反対」です。
4、解雇について、「紛争の早期解決」、「原職復帰が困難」等を理由に解雇の「金銭解決制度」の導入をするとしている。しかしこれは、裁判で不当解雇の判決が出されても「金銭解決」し、原職復帰させないということである。これでは、「組合役員」や会社に「不都合な者」等が職場から排除されることとなり、経営者側の「解雇権の濫用」を助長させるものであり「反対」です。
5、有期労働契約のルールの明確化については必要なことであるが、何よりも賃金、休暇制度、福利厚生、社会保険、年金等で正社員との均等待遇化を法制化すべきです。

 労働時間制度関係について

1、「自律的労働」に従事する者は、法定休日(35条)と年次有給休暇(39条)を除く労働時間規則を適用除外するとしている。その自律的労働とは、労働時間や業務指示等について自己調整できる者、年収が一定水準以上の者等としている。また、全労働者の一定割合以内にすることも「慎重」に検討するとしています。
2、これは、「研究会」報告では、「係長級」「チームリーダー級」が「自律的労働」の対象として出されてきた経緯にあます。また、日本経団連は「年収400万円以上」を対象と主張してきている。厚労省や日本経団連の狙いは、このレベルの労働者をF自律的労働」の対象として「36協定」の適用除外を想定いるのです。
3、それを、今回の厚労省「試案」では対象範囲を狭めてきています。それは、「日本型ホワイトカラーエグゼンプション」として、多くの労働組合や労働弁護団等の反対意見が強いなかで、今回は制度として発足させ「小さく産んで、大きく育てる」という戦略なのです。これまでもパート等非正規労働は「一時的・臨時的」業務として限定してスタートしたものが、いつの間にか全労働者の33%までも拡大してきました。派遣労備についても「専門的知識・業種」としてスタートしながら、05年度から製造業にまで拡大してきたことからも明らかです。
4、「自律的労働」の対象とされてゆく、「係長級」「チームリーダー級」や「30才代」「40才代」は、働き盛りで月60時間〜100時間を超えて残業をしているものが多い実態にあり、「過労死・過労自殺」やF脳・心臓疾患」で倒れている労働者も多いのです。つまり、「自律的労働」として「36協定」から適用除外する制度は、サービス残業・タダ働きを合法化する制度であり、「過労死・過労自殺者」や「脳・心臓疾患者」を増大することとなるものであり「反対」です。
5、また、長時間労働の抑制と疲労回復の手段として、(1)月40時間以上の時間外労働に「1日の休日」、(2)月75時間以上の時間外労働に「2日の休日」の付与、(3)月30時間を超えた時間外労働の割増賃金を2.5割〜5割へ引き上げ、また、割増賃金の引き上げ分について、金銭ではなく「休日付与」を検討するとしています。
6、この割増賃金の引き上げと休日増について否定するものではないが、月60〜100時間という残業(過労死予備軍)をせざるを得ず、土日休みや有給休暇も取れないという職場の実態の本質を見ていない。それは、リストラで人員削減され、少ない人員で増大する業務量の処理を競争主義・成果主義で酷使されているのです。
 むしろ、経営の安定化のためには、必要人員を配置させ、悪しき競争主義・成果主義をやめさせて、労扁法違反の経営ざへの罰則の強化と違反企業・経営者を公表する体制を強化こそ必要です。

   2006年6月20日 全国労働組合連絡協議会(全労協)

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【談話】

「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」 発表にあたって

2006年6月14日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内三夫

 1.6月13日、厚生労働省は第58回労働政策審議会労働条件分科会において、「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(案)」と題した、いわゆる「素案」を発表した。厚生労働省は、同文書を分科会の「中間とりまとめ」の叩き台とする考えのようだが、分科会の労使各委員からも文書の性格と内容について多くの疑問と異論がだされている。労使間で多くの不一致や対立点があるにもかかわらず、それらの意向を軽視し、独自の視点にもとづいて厚生労働省によって作成した文書が、審議会のとりまとめの「素案」となることはありえず、全労連は、本文書の撤回を求めるものである。

 2.本文書はその性格のみならず、内容にも多くの問題がある。まず、労働時間規制の適用除外ができるとする「自律的労働時間制度」である。現行労働基準法で認められている管理監督者ですら、対象範囲が不当に広げられて裁量のない労働者を時間規制の適用除外としてしまい、不払い・長時間労働や過労死を多数うみだしているのに、それをさらに広げる提案である。過労死防止や少子化対策の必要性をいいながら、不当な不払い残業を合法化してしまうだけでなく、過労死やメンタルヘルスなどの健康被害が生じた場合の使用者責任を免除してしまう同制度を、よりによって厚生労働省が提案するのは言語道断である。

 3.不当解雇であっても労働者の原職復帰の要求を抑え込み、金銭で解決してしまおうという制度の提案もあってはならないものである。あらかじめ一定額の金銭を見積もっておけば、気に入らない労働者はいつでも解雇できる効果をもつこの制度を、なぜ、厚生労働省が提案するのか理解に苦しむ。さまざまな制限をつけたとしても、この制度が導入されたとすれば、解雇権濫用法理は空洞化され、いまでも横行する使用者による不当な解雇が、さらに多発することは疑いない。今後の審議においても二度と検討に付すべきではない。

 4.「就業規則の変更等による労働条件と労働契約の関係」については、過半数組合や特別多数労働組合の合意、「労働者を代表する者」との合意などによって、個別労働者が労働条件の切り下げに合意したことを推定するとの法的効果を与えようとしている。これは労働契約締結当事者としての個人の権利侵害であり、また、少数労働組合の団体交渉権を封殺する制度であり断じて認めるわけにはいかない。「過半数代表との合意についても上記に準ずる法的効果を与えることを検討する」などとあるが、会社親睦会の代表や人事課長などが代表となっているケースもあるといった現実をかえりみない暴論といわざるをえない。

 5.以上は「素案」に盛り込まれた問題の一例である。厚生労働省は、過労死、過労自殺・メンタルヘルスの増加、長時間・不払い残業の横行、歯止めのかからない少子化傾向、有期雇用の濫用をテコにして進行する低賃金・不安定雇用労働者の急増などといった労働関係の実態を直視した審議に時間をかけるべきである。そして労働規制を強化し、労使の実質的対等を実現し、労使がともによりよい社会を築くスタンスで審議をする場をつくることを強く望むものである。

 全労連は、多くの未組織労働者・国民との団結と共同をひろげ労働法制の充実にむけた運動をさらに強める決意である。

以 上


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