8・18合意は廃棄されたのになぜ委員長の談話が出たのか?
[現代車非正規職金属労組座り込み] (5)委員長談話文の議論
チョン・ジェウン記者 2015.03.11 13:51
[現代車非正規職金属労組座り込み]目次
(1) 企画連載を始めるにあたり
(2) 蔚山非正規職支会長インタビュー
(3) 現代車支部長インタビュー
(4) 8・18合意の議論
(5) 委員長談話文の議論
(6) 企画連載を終えるにあたり
2014年11月24日の38次金属労組定期代議員大会(以下、定期大会)は、
現代車不法派遣に関する8月18日労使合意案について次の通り決める。
△団体協約締結権者ではない者が締結した8・18合意には効力がない。
現代車支部、現代車非正規職牙山・周知会は規約に違反して暫定合意する誤りを犯した、
△現代車に不法派遣免罪符を与えた8・18合意は、不法派遣特別交渉合意書として適切ではない。
金属労組は上の合意内容を承認できない、
△現代車不法派遣正規職転換を勝ち取れず、特別交渉過程の立場調整で指導力の限界を見せた、
△8・18合意を廃棄し、金属労組は製造業社内下請撤廃と不法派遣正規職転換方案に対する新しい事業計画を構築する。
金属労組、1か月以上「評価」の議論だけ
金属労組定期大会以後、8.18合意廃棄と受任事項にもかかわらず、
金属労組中央執行委員会は代議員大会を評価したことで論議がおきたものと見られる。
金属労組中央執行委員会は2014年12月、二回の会議で「定期大会評価」を確定できず、
年を越した2015年1月5日の45次会議で確定する。
同時に「組織内に混乱が引き起こされたことに対して委員長立場の文を金属労組新聞に掲載し、
次期臨時代議員大会に『定期代議員大会評価書』を報告して委員長が謝罪する」と決める。
ここで、問題の委員長談話文発表の根拠になった「組織内の混乱」については具体的に指摘されなかった。
ただし「合意過程と内容が十分に説明されず、議事進行にも問題があり、
結果的に8・18合意が廃棄された」、「8.18合意は規約違反か?」についての論争は、
代議員大会受任事項の「不法派遣正規職転換方案に対する新しい計画構築」より熱かったものと見られる。
金属労組のホン・ジウク副委員長は
「労組は常に事業計画を評価する。
定期大会を評価するにあたり、8・18合意の過程と結果について定期大会当日、
代議員に十分説明できなかった点などの議事進行の限界と問題提起、
定期大会の結果に対する後続措置を議論した」とし
「中央執行委の会議で出された水準の同様の評価が役員会議でも行われた」と明らかにした。
8・18合意の内容については
「金属労組指導部であれ、中央執行委であれ、政派であれ、
どの単位であっても8・18合意が不法派遣阻止闘争の象徴である現代車非正規闘争の結果としてはかなり不足しており、
限界を持つ合意だということは誰もが同意する内容」と付け加えた。
チョ・ソンオク副委員長も
「役員会議では定期大会で通過した案が『修正同意案』の性格に合うかという議論があったが、
すでに委員長が修正同意案で(処理)したので、それ以上は問題にしないことにした」と伝えた。
また、「通過した修正同意案によれば(8・18合意は)規約違反だが、
規約に違反した人が誰で、懲戒の性格が正しいのかなどを確認しなければならないので、
役員会議か中央執行委員会で事実関係を確認しようといった」と話した。
▲昨年11月24日金属労組38次定期代議員大会では現代車不法派遣8・18合意案を廃棄することに決定した。[出処:金属労働者]
議論は「規約違反と懲戒対象」で
金属労組中央執行委員会の決定は「組合員同志に差し上げる文」という
「委員長談話文」が1月13日に発表されたことで、
「定期大会決定翻意」の議論に広がる。
議論は9月18日・19日の裁判所の判決より悪い8・18合意案処理に関することだったが、
規約違反をめぐって現れる。
定期大会では8・18合意に関して
「現代車支部と現代車非正規職牙山・全州支会は規約違反」と決める。
だがこれまでの労使合意慣行を例にあげて、別の角度から見る視角もある。
本人が否定しているにもかかわらず、イ・ギョンフン現代車支部長のセルフ懲戒要求議論が示唆するのは、
実際に中央執行委員会で「規約違反ではない」と見る視角が多数存在していたということだ。
こうした視角と要求は、委員長談話文に「金属労組は企業交渉単位に交渉権を委任できない」という金属労組の規約に基づいて
「交渉権に違反したという主張は過度」だという内容として入れられる。
また、金属労組役員・中央執行委員会は、委員長談話文で
「『金属労組委員長が交渉に参加しなかったため、
現代車支部と現代車全州・牙山非正規職支会が現代車使用者側と行う交渉には締結権がない」という主張は、
金属労組すべての事業場に適用できないという困難がある」と明らかにした。
続いて「金属労組は不法派遣交渉締結権の委任について組織的な議論ができなかった」とし
「2014年8月18日交渉に突入した現代車支部と全州・牙山非正規職支会は、
交渉突入を尊重されたもので、締結と合意に至った事実は尊重しなければならない」と主張した。
委員長談話文についてイ・ギョンフン現代車支部長は
「事実をそのまま書いたもの」と評したが、
「交渉突入を尊重されたもので、締結と合意に至った事実は尊重しなければならない」という判断は、
8・18合意には問題がないという解釈が可能で、
「廃棄された8・18合意をよみ返らせた」という反発を呼んだ。
キム・ソンウク蔚山非正規職支会長は
「委員長談話文は金属労組で未承認の状態だった8・18合意を不承認にした定期大会の決定を『尊重』するとして、また復活させた」と批判した。
金属労組は8・18合意案について手続き上の未承認という曖昧な立場を取っていた。
結局このような問題は
「規約違反をした主体は誰か?」という懲戒対象の問題で具体化され、
イ・ギョンフン現代車支部長のセルフ懲戒要求というハプニングまで行われる。
正規職非正規職は誰もが事前に知っていた談話文の内容
代議員大会は「宣言的意味」を廃棄
もうひとつの議論は「8・18合意廃棄が持つ意味」だ。
3月3日の金属労組臨時代議員大会で
「合意当事者が8・18合意を廃棄しなければ宣言的意味の廃棄であり、
法的実効性の面で限界があるという意味」だというチョン・ギュソク金属労組委員長の発言でわかるように、
定期大会では8・18合意を廃棄したが、これをめぐる現実と原則の間隙は大きいようだ。
ではなぜ金属労組中央執行委員会は宣言的意味の廃棄にまでこだわって委員長談話文に入れたのだろうか?
らかなことは、8・18合意をめぐって内部に意見の相違が存在し、これをめぐり各単位と政派間の意見陳述と議論が果てしなく続いたということだ。
委員長談話文はこうした過程の産物として見るのが妥当なようだ。
また、イ・ギョンフン現代車支部長とキム・ソンウク蔚山非正規職支会長は、
メディア忠清の取材で「委員長談話文の内容を事前に知っていた」と語った。
イ・ギョンフン現代車支部長は談話文の内容を
「実務者を通じてだいたい確認」し、キム・ソンウク支会長は1月13日の談話文発表の「前日12日に全文を確認し、
直ちに金属労組に行って13日に抗議座り込みに突入した」と話した。
だがメディア忠清の取材によれば
「金属労組側はイ・ギョンフン支部長に金属労働者新聞を印刷する前に談話文全文を事前に共有して修正要求まで反映し、
キム・ソンウク支会長にも新聞を印刷する前に談話文全文を確認して特別な要求がなかったので委員長談話文を配布した」という証言がある。
こうした証言が正しければ、現代車支部と蔚山非正規職支会に双方の意見を反映した談話文により、金属労組は要求と議論を収拾しようとしたが、
蔚山支会をはじめとする非正規運動単位の抗議と座り込みで失敗したと見ることができる。
これに関連して、チョン・ギュソク金属労組委員長は
「談話文内容の事前共有の件は公式的な話ではないばかりか、
公式に確認できない内容」と断言した。
金属労組委員長談話文の余波
金属労組委員長談話文は1月13日に発表されるとすぐ、真っ先に主流マスコミが反応した。
当日午後4時40分頃、聯合ニュースの『金属労組「現代車非正規職の正規職化合意認定」』という題名の記事を始め、
『金属労組が現代車労使8・18合意を認め尊重することにした』という報道が続いた。
現代車使用者側も「金属労組8・18合意効力認定、『合意尊重』立場表明」を強調し、
「金属労組の決定も否定して委員長の事務室まで占拠した」と蔚山非正規職支会を攻撃した。
[出処:チャムセサン資料写真]
蔚山非正規職支会と牙山非正規職支会の一部は、委員長の談話が発表された1月13日夜10時、(1)チョン・ギュソク委員長謝罪、(2)中央執行委決定廃棄、(3)金属労働者新聞廃棄を要求して金属労組での座り込みに入る。
彼らは抗議座り込みに突入するにあたり
「金属労組委員長は一回の闘争もなく定期大会決定をひっくり返し、『現代車8・18合意を認定』という談話を発表した」とし、
抗議座り込みは「金属労組定期大会の決定により『不法派遣正規職転換を争奪』するためだ。
まだ金属労組が非正規職労働者が差し出す手を握ってくれることを信じているからだ」と明らかにした。
蔚山非正規職支会は抗議座り込み声明で
「金属労組の8・18合意廃棄の翻意は闘争で不法派遣を解決せずに整理しようとする勢力が、
非正規職労働者たちの闘争に冷水を浴びせて弾圧するもの」とし
「金属労組は8・18合意廃棄の後続措置として闘争を準備することも出来ないという限界と、
現代車支部を越えることができない限界を認め、謝罪しなければならない」と主張した。
この過程で民主労総をはじめとする民主労組運動陣営は
「委員長談話文の廃棄と金属労組中央執行委員会決定廃棄」を主張する声明書を立て続けに出して金属労組を批判した。
金属労組委員長が所属しているといわれる現代車金属民主労働者闘争委員会(民闘委)さえ
「金属労組は委員長談話文を通じ、深刻な活動の誤りを犯した」と批判した。
労働者連帯も「金属労組指導部は大会決定を認めろ」という声明で
「要するに今回の事態はチョン・ギュソク執行部の無気力を今一度見せるものだ。
チョン・ギュソク執行部は左派としての面目を見せることができないまま、
力なくイ・ギョンフン支部長に尻尾をおろした。
『金属労組の主人は組合員ではなく現代車支部長だった』という皮肉が出てくる理由だ」と、
左派執行部の無能と金属労組内部の大工場の影響力問題を批判した。
金属労組委員長談話文と座り込みがもたらした影響だけを見れば
「言葉でも文でも補わなければならないような」重大なことのように見られる。
その上、委員長談話文の発表後に、保守言論や現代車使用者側は言うまでもなく、
労組破壊事業場として知られるヴァレオマンド企業労組さえ
「金属労組所属各支会ですべての事項について交渉権委任手続きを行わない」、
「各支会の判断で会社と合意するケースが多いが、これらすべてを支会規則違反として処理できない」とし、
彼らなりの「金属労組集団脱退総会の正当性」を主張した。
他のことはともかく、金属労組委員長談話文がもたらした影響の一つは、
使用者側にとっては金属労組の交渉権を揺さぶるしくみとして作用できるということだ。
一方、金属労組役員と中央執行委員会が「宣言的意味の8・18合意が廃棄」された定期大会評価で、規約違反かどうかを議論している間にも、
使用者側の新規採用は強行され続けた。
現在まで、牙山社内下請支会は200人を超える組合員の半分以上が新規採用され、
残った組合員の半分も新規採用に応募して待機している。
全州非正規職支会は事実上、組合員全員が新規採用または応募した。
蔚山非正規職支会に対しては、現代車使用者側が組合員のうち約100人が今年の新規採用に応募したと3月1日に明らかにした。
使用者側は昨年まで、社内下請労働者のうち2838人を新規採用し、
今年は1162人を採用する。(続く)
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
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Created on 2015-03-15 23:07:14 / Last modified on 2015-03-15 23:07:42 Copyright:
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