『双竜車不法派遣』、送電塔の上の非正規職の声
[インタビュー] 28日間高空籠城をしている双竜車3人の話
ユン・ジヨン記者 2012.12.17 18:00
双竜車事態のキーワードと言われる整理解雇。そのためか、『双竜車』という
単語は整理解雇と国政調査、労働者の相次ぐ死を連想させる。28日間、送電塔
で高空籠城を続けている3人の双竜車労働者の要求も、国政調査の実施と解雇者
の復職だ。韓国社会で『解雇は殺人』というスローガンはもはや異質ではない。
だが送電塔の上から鳴り響く声に耳を傾ければ、『不法派遣』という単語が耳
につきささる。蔚山現代車労働者が送電塔の上で叫ぶ声と全く同じだ。『整理
解雇』と『非正規職』というレッテルがはがせない韓国社会の慢性的な問題。
平沢双竜車工場近くの送電塔では、整理解雇と非正規職問題の声がからんで流
れている。
[出処:ポク・キソン双龍車非正規支会副支会長]
#ポク・キソン双竜車非正規職支会副支会長
「双竜車は明らかに不法派遣です」
送電塔高空籠城をしているのはハン・サンギュン前双竜車支部長、ムン・ギジュ
整備支会長、そしてポク・キソン非正規職支会副支会長だ。そのうち、ポク・
キソン副支会長は、双竜車非正規職を代表して送電塔に上がった。双竜車不法
派遣問題の解決と非正規職正規職化を要求するためだ。
これまで双竜車の不法派遣と非正規職の問題は、正規職の整理解雇問題ほどの
問題にならなかった。政界も、双竜車整理解雇事態と国政調査には大きな関心
を示しているが、不法派遣と非正規職問題は関心外だ。その上、セヌリ党国民
幸福推進委員会のチョン・テミョン首席専門委員は最近の討論会で「双竜車の
非正規職問題は初めて聞いた」とし「彼らも共に(闘争を)しているということ
も知らずにいた」と述べた。
だが双竜車の非正規職労働者は2008年に労組を結成した後、絶えず戦いを続け
てきた。2009年の77日間の玉砕ストライキにも、大漢門焼香所にも、送電塔の
高空籠城にも、いつも彼らがいた。
「双竜車では、整理解雇問題が大きな世論になっています。だがこれと比べ、
非正規職の声はあまり表になっていないと理解しています。国政調査の実施と
解雇者の復職を要求して送電塔に上がりましたが、よく聞くと非正規職労働者
の要求もあります。マスコミがインタビューしてもあまり扱われず、問題にな
りませんでした。われわれ非正規職支会は双竜車不法派遣の非正規職労働者の
正規職化実施を要求しています。蔚山現代自動車の送電塔上の労働者と同じ
要求です」
送電塔の上から伝えられるポク・キソン副支会長の声に無念さがにじむ。それ
もそのはず、双竜車の非正規職労働者は2008年、労組結成の前後からずっと、
切迫した闘争をしてきた。2006年、双竜車では不法派遣問題が起き、上海資本
は500人の下請け労働者を解雇した。労組結成直後にはまた非正規職労働者350
人が解雇され、非正規職支会は2009年の77日間の玉砕ストライキを進めた。
2009年には煙突高空籠城に突入し、わずかな食べ物も絶った。
[出処:ポク・キソン双龍車非正規支会副支会長]
「双竜車はすでに2006年に不法派遣で処罰されました。当然、対象者を正規職
に転換するべきですが、逆に業者の廃業と大量解雇を進めました。2008年には
非正規職支会ができ、100人を越える組合員がいたのですが、ほとんどが業者の
廃業と整理解雇で路上に追い出されました。また現場では正規職の場所への
非正規職の採用が増えています。
昨年4月には支会組合員が不法派遣集団訴訟を提起しました。現代車と同じよう
に、裁判所に『勤労者地位確認訴訟および未払い賃金支給訴訟』を申請したわ
けです。来年1月中旬頃に1審の判決が出る予定です。数年間、証拠資料を確保
してきたので、弁護団も良い判決が出ると話していて、雰囲気も良いです」
双竜車非正規職支会の闘争で注目すべき点は、元下請の共同闘争だ。正規職と
非正規職という差別と利害関係により、これまで多くの事業場では元下請共通
闘争の困難を訴えてきた。双竜車非正規職支会も序盤に正規職との共同闘争の
困難を経験したが、互いの切迫した闘いで、いつのまにか一つになった。
「以前は他の事業場と同じように、正規職と非正規職の共同闘争は大変でした。
しかし民主労総ではめずらしい事例ですが元下請が77日間の玉砕ストライキを
共同で行い、正規職と非正規職問題が別のものではなく、共同の課題として
いくしかないということを認識しました。
それで、当時、玉砕ストライキの時も整理解雇粉砕、非正規職を含む総雇用の
保障などの要求を掲げました。現代自動車とは違って、現場から互いに公論化
し、議論して、多くの共通点を見つけたのです。それでストライキ後も正規職
と非正規職が一つの戦いを続けてきました。整理解雇と非正規職の問題をぜひ
とも解決すべき重要課題と見ているのです」
[出処:ポク・キソン双龍車非正規支会副支会長]
次は家族の話をしようと提案すると、すぐ電話越しにポク・キソン副支会長の
湿っぽい声が聞こえる。「家族の話をすると悲しくなります」と涙声で話す声
が遠く感じられる。7歳と5歳の子供たちと、一日おきに送電塔の下に来る妻の
姿が思い出されるようだ。送電塔座り込み初日には妻と子供たちが訪ねてきて、
ずっと泣いて帰った。彼に会いたい家族と、仲間たちに言いたい話を尋ねた。
「家族には申し訳なく、愛している、有難うと伝えたいです。家族の支持と
励ましがあるので頑張っています。くやしい整理解雇の真実を明らかにして、
非正規職闘争に勝利して、また日常に戻るように努力します。
そして仲間の皆さん、双竜車は明らかに不法派遣です。非正規職労働者の正規
職化争奪を要求する非正規職労働者の要求を分かってほしいと思います。現在
全国で才能、現代車、コルトコルテックなど数えきれない程の労働者が闘争を
続けています。正規職と非正規職、無関係にすべての労働者が整理解雇、非正
規職撤廃をかかげて総団結闘争を続けましょう。双竜車、現代車、ユソン企業
の労働者がその道の小さな火種になります」
#ムン・ギジュ双竜車整備支会長
「騒音性難聴と耳鳴も...キム・ジョンウ支部長の回復が心配」
三人の労働者はみんな、送電塔高空籠城の知らせを直接家族に伝えられなかっ
た。ムン・ギジュ整備支会長は送電塔に上がる前日、5か月ぶりに慶南梁山の家
に行った。一晩眠り、一食を一緒に食べてすぐ送電塔に上がった。ハン・サン
ギュン前支部長も座り込みの前日、平沢の家に少し立ち寄ったがとても話を切
り出せず、そわそわしてそのまま戻った。双竜車支部の同僚も、彼らが送電塔
に上がるという知らせは共有できなかった。
突然、決行された送電塔座り込みは、思ったより劣悪だった。寒波が押し寄せ、
からだは凍りつき、雪が降って墜落の危険も高まった。あちこち具合が悪いと
ころもある。生理現象を簡単に解決できず、冷たいご飯も安心して食べられない。
▲ムン・ギジュ整備支会長
[出処:ポク・キソン双龍車
非正規支会副支会長]
「ここに上がって感じる寒さは地上の2〜3倍にはなりそうです。体感温度が零下
15度以下ですから。指と顔が凍りついて、当惑もしました。合板を敷いて足を
踏む場所はあっても、雪で床がすべりやすく、墜落の危険もあります。
今の状態は、電磁波のためなのか、騒音性難聴と耳鳴があります。両耳ともに
耳鳴がますます大きくなります。肩もとてもずきずきと痛みます。食事はきち
んと下から上げてくれています。下の人たちは、私たちがかわいそうでたくさ
ん食事を上げてくれるのですが、用便の問題がうまく解決できないので、あまり
食べられません」
最近の2〜3日は気温が上がり、幸いだったが、また寒波が予告されている。終
わりが分からない送電塔上の生活は、はるかに遠く、すさまじい。努力の一日
一日を粘りながら、酒一杯飲むことができない。ムン・ギジュ支会長に「酒が
お好きだと聞きましたが、酒のことはずいぶん考えますか」と聞くと「なんで
分かったのか」と照れる。
「酒も飲みたいし、さしみも食べたい。食べたい物はみんな食べたい。しかし、
ここには後にも横にも支えるものがなく、下手をすると墜落するので酒を飲む
気にもなれません。さっぱりとシャワーもしたいですね。私たちが降りて、
シャワーも浴びて、食べたい物も食べられるようになる日は、私たちの復職が
確定する日でしょう」
辛く苦しい高空籠城で力になるのは共に闘う労働者たちだ。蔚山送電塔で高空
籠城をしている現代車非正規職労働者と、ユソン企業の陸橋座り込みを続けて
いるホン・ジョンイン支会長と団体のカカオトークグループを作り、いつでも
状況を共有している。一日20〜30人訪ねてくる支援団体と、毎晩送電塔の下を
照らすキャンドル集会も彼らにとって、とても大きな力になる。
「今、高空籠城している現代車、ユソンの仲間とは団体カカオトークトクのグ
ループを作りました。私たちは鷲5兄弟と呼んでいます。本当は六人ですが、た
だそう呼んでいます。工場の中の組合員からもおつかれさま、頑張れという携
帯メッセージがきたり、毎日出退勤する組合員が今、私たちに手を振ってくれ
る時も力がわきます。朝6時頃、車の音と寒さで目覚めます。7時頃には出勤す
る組合員が見えます。ここから手も振り、挨拶もします。初めは反応がありま
せんでしたが、今は手も振ってくれ、車のクラクションも鳴らしてくれます。
昼はたいてい新聞を読んだり本を読みます。連帯団体が来ると、大声で叫んで
対話もします」
[出処:ポク・キソン双龍車非正規支会副支会長]
ムン支会長に一番会いたい人を聞くと、すぐ『家族』と『キム・ジョンウ支部
長』を選ぶ。キム支部長が40余日間のハンストの末に病院に運ばれたが、顔も
見ることができず送電塔に上がったためだ。
「病院で回復したキム・ジョンウ支部長に会いたい。からだの状態を確認した
いです。キム支部長と時々電話しますが、私たちの心配をしてくれます。むし
ろ私たちは40日ハンストした人の回復が心配なのですが。
家族にもとても会いたいです。多分ここにいる二人の仲間も一番家族に会いた
いでしょう。それでも二人は家が平沢ですが、私は梁山なので遠いのが残念で
す。抱いてスキンシップすることが出会いの楽しみなのですけど。状況が解決
して降りられるようになれば、まず家族に会いたいですね。そして今散らばっ
ている解雇された仲間たちもみんな会いたいです」
#ハン・サンギュン前双竜車支部長
「解雇者が復職する日、飛んで送電塔から降りられる」
3年の収監生活を終えて出所して3か月もたたず、送電塔に上がったハン・サン
ギュン前支部長。出所後、彼を迎えたのは監獄の中の生活よりさらに地獄のよ
うな現場の状況だった。双竜車労働者と家族は相次いで命を落とし、国政調査
の兆しも見えなかった。
キム・ジョンウ支部長がハンストに突入し、野党圏大統領候補が続々と訪問し、
国政調査を約束した。この前、セヌリ党の環境労働委議員を中心に大統領選挙
の後、国政調査を実施するという約束も続いた。だが、双竜車労働者は今も
送電塔から出られない。すでに守られなかった約束で数えきれないほど失望し、
傷ついてきたからだ。
▲ハン・サンギュン前支部長
[出処:ポク・キソン双龍車
非正規支会副支会長]
「セヌリ党は環境労働委議員を中心として彼らなりに国政調査を約束しました。
しかし政治家は票のために何かすべきではないでしょうか。むしろ私たちは
セヌリ党が票のために、もっと積極的な動きを見せろと話したいのが率直な
気持ちです。候補は労働者の切迫した気持ちを聞きたければ現場に来なければ
ならないのに、私たちがハードルを下げても反応しません。国政調査約束も
見えない但書を付けているので信頼できません。
朴槿恵(パク・クネ)政権になると、双竜車問題がどんな方向に流れるのか予断
は難しいです。しかし李明博(イ・ミョンバク)政権5年は企業に無限の自由を認
め、朴槿恵政権もこの延長線上にある可能性が高いです。権力継承の構図が続
けば、双竜車の展望も容易ではないと思います」
文在寅(ムン・ジェイン)統合進歩党候補が政権交替をしても、やはり期待して
ばかりはいられない。双龍車事態で民主統合党の『原罪』と現場の期待に達し
ない動きが、労働者の首をかしげさせているからだ。
「民主統合党が私たちの問題に対する話をよく聞き、接近する努力がありまし
た。だが原罪の本質にいた人々が自分の恥部を現わし、それらが誤っていたと
話すことは容易ではありません。現在も環境労働委にはとても多くの労働関連
法案が係留されています。与小野大の環境労働委でも法案通過に関し、一歩も
動きませんでした。民主統合党が出した非正規職、労働基本権法案は現場の
期待ほど明快ではなく曖昧です。
労働者の人生は、国家権力がそれを国政哲学に表わせるのかと直結します。民
主統合党が労働者の人生を国政の最優先課題に配置して行くかどうかは見守ら
なければならない問題です」
そのためか、双竜車などの高空籠城労働者たちは労働者大統領『キム・ソヨン
候補』を支持した。双竜車事態をめぐる複雑な政治地形の中で、当選が不確か
なキム・ソヨン候補を支持するのは容易でなかった。だから議論もあったが、
結局『闘う労働者大統領』を支持することに決めた。周辺のさまざまな状況を
排除し、キム・ソヨン候補を支持した理由は何か?
「保守両党を牽制する第3地隊の進歩政治が方向を失いました。この状況でキム・
ソヨン候補が闘う労働者大統領になりました。命がけで闘う労働者の代わりに、
大統領選挙に立候補したのでしょう。事実、非正規職、青年失業、雇用不安、
公企業などの問題と、なぜ労働者たちが命がけで闘うのかを前に出さなければ
労働者の人生は担保できません。キム・ソヨン候補はこうした問題に真正性と
信頼を見せています。大統領選挙で当選は難しいかもしれませんが、これから
の権力に対する労働者の警告として労働者自らが行くべき道を作る過程と見て
います。
もちろんキム・ソヨン候補への支持には議論もありました。これまで抑えつけ
られてきた時間を送ってきた状況で、わらでもつかみたいのは当然です。だが
長い間、私たちの闘争に連帯してきた組織が闘う労働者大統領をしっかりたて
ている状況で、私たちが苦しい時、まず涙を拭ってくれた人々を先に思い出し
ました」
国政調査のように重要な問題は別にもある。現場労働者との結集だ。だからハ
ン・サンギュン支部長は11日、『容赦が最大の愛』とし、現場の労働者に一緒
にやろうという手紙を送った。互いに申し訳ないと思わずに、また一つになろ
うという呼び掛けだ。ハン支部長は現場組合員の姿に傷と痛みが見えると言う。
[出処:ポク・キソン双龍車非正規支会副支会長]
「送電塔から工場は目と鼻の先で、朝夕の出退勤の道も見えます。それを見て、
政治的に解決しなければならない問題と同じぐらい、私たち自身の和解と容赦、
治癒が重要だと思います。中にいる組合員の仲間から携帯メッセージがたくさ
んきますが、まだ監視に恐れて震えています。その上、全面マスクで会いにき
たり、遠くで見て行くだけのこともあります。亡くなった組合員も殺されたわ
けですが、現場組合員の姿も『解雇は殺人』のある形態です。ずいぶん時間が
経って容易ではありませんが、あきらめられない問題です」
最後に支援団体や全国の労働者に伝えたい話を聞いた。今まで双竜車労働者の
手を握ってくれた支援団体への感謝と、激しい労働者の波が起こればという
期待が続いた。
「私は毎日望んでいます。一日も早く労働者が目と鼻の先にある工場に入れる
ようになることです。その日が来れば私は飛んでも送電塔を降りて行けそうです。
双龍車闘争4年間、私たちの消えた闘争の火種を支援し、死の敷居で私たちを捕
まえてくれた全国の労働者の同志愛を忘れません。工場に戻る日、みんな一緒
に集まって、一人ひとりの手を取り感謝の気持ちを差し上げたいです。その瞬
間が、非正規職と正規職が、差別のない世の中に行く第一歩ではないかと考え
ます。
全国で闘っている仲間たち。その闘争の旗が荒々しい労働者の波につながれば
と思います。工場に戻る日まで。健康に気をつけて闘います。そして新年は、
労働者が家族のみんなと笑える暖かい世の中になればうれしいです」
[出処:ポク・キソン双龍車非正規支会副支会長]
[出処:ポク・キソン双龍車非正規支会副支会長]
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
Created byStaff.
Created on 2012-12-18 22:06:03 / Last modified on 2012-12-18 22:07:32 Copyright:
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