本文の先頭へ
韓国:KEC労組弾圧はすべての金属事業場の未来だ
Home 検索

KEC労組弾圧はすべての金属事業場の未来だ

[寄稿]ゼネストで構造調整、労組弾圧に反撃を

ハン・ジウォン(労働者運動研究所研究室長) 2010.11.10 11:53

KEC労使交渉が難航している。労組が賃金団体協議要求案のほとんどを撤回した が、使用者側はストライキに対する損害賠償訴訟と労組幹部の懲戒を撤回しな いと粘っているためだ。

160日を越えるストライキ、2週間以上続いた占拠ストライキとキム・ジュニル 亀尾支部長の焼身抵抗以後に実現した交渉だが、使用者側は交渉ではなく、こ の機会に民主労組を完全になくそうとする意志を公然と示しているのだ。一方、 キム・ジュニル支部長焼身抵抗の後、社会的交渉を話して仲裁に出た野五党は 使用者側の強硬な態度に特に力を入れていない。

▲9月27日国会前ハンスト場でキム・ジュニル支部長[写真左][出処:イ・ミョンイク労働と世界記者]

事実、KEC事態は単なる企業次元の交渉で解決できる問題ではない。世界経済危 機以後、速まった電子産業全般の構造調整と関連しているためだ。民主労組運 動が政権の産業政策、資本の構造調整政策に階級的な力で対抗できるかという 問題だ。

労組弾圧の隠された背景、2010年構造調整計画

KECの構造調整戦略をもう少し詳しく見よう。KECは数年前から主力製品群の調 整を模索してきた。主力製品として世界1〜3位のシェアを持つ小信号トランジ スタ(Small Signal Transistor、SSTR)の収益性が下がり続けているからだ。

2001年には売上6千億ウォン、営業利益は470億に達したが、2009年には売上額 3千億ウォン、営業利益17億ウォンに終わった。収益性を示す指標の一つである 売上額営業利益率は2001年の7.8%から2009年には0.6%と、10分の1以下になった。 このような状態はKECだけではないが、他の半導体より、労働集約的な工程が多 く、後発走者の進入が相対的に易しい小信号トランジスタ製品は、すでに数年 前から日本とアメリカでは事業縮小と構造調整の対象になっていた。

このような理由でKECは新製品工場建設のために2004年に1千8百億ウォンの投資 を断行し、2006年からは本格的にパワートランジスタ(Power Transistor、 PWTR)の販売を始めた。パワートランジスタは電気自動車や高効率電力機器に入 る半導体で、小信号半導体と較べ市場規模も五倍以上で収益性も相対的に高い 製品だ。だが投資と比べ、関連の売り上げは2009年まで新工場設備の減価償却 も埋められないほど少なく、電力半導体事業は今年までKEC営業利益にマイナス 効果しか与えていない。

世界経済危機が小康局面に入った2010年上半期は、KEC資本にとって転換点だっ た。KECはパワートランジスター販売で4月に現代モービスとの間でハイブリッ ド自動車用パワーモジュールの共同開発契約を締結し、LCDモニターのバックラ イトに利用されるLEDチップとLEDパッケージをLGイノテクと各々昨年12月と今 年の4月に締結した。主力製品を小信号トランジスタからパワートランジスタと LED製品に変える転換点を作ったわけだ。ある証券会社はKECが2012年にはパワー トランジスタとLED製品を全売り上げの70%以上に拡大すると予想した。KECは 今年、共同代表理事からクァク・チョンソ1人代表理事に代表体制を変え、こう した攻撃的な構造調整を断行する経営体制を整備した。

問題は、こうした製品調整には必然的に人的構造調整が伴うことだ。さらに新 製品は既存の製品より労働節約的で、設備消費的だ。小信号トランジスターの 生産工程は機械による化学処理が中心のファブ(Fab)工程よりも、労働集約的な 生産が必要な組み立て(Assembly)工程の比重が大きかったが、LED製品やパワー トランジスタ製品は相対的にファブ工程のほうが大きい。

労組のストライキの直前から、経営陣が大規模整理解雇と人事調整があると情 報を流していたのは、単に労組を脅迫することだけではなかった。KEC資本が LGイノテクと契約したLED製品は、無労組系列会社の全州TSPSが生産する計画で、 既存の製品は中国とタイ工場で生産の比重を高める計画だった。亀尾工場での 整理解雇と構造調整は、クァク・チョンソ代表理事体制ですでに年初から準備 されていた。

このような点で、使用者側が労組専任者問題をかけて賃金団体協議を破局に追 いやったのは、労組弾圧の口実に過ぎなかった。売上3千億ウォンの企業が専従 者2〜3人の問題で職場閉鎖と生産中断まで断行するのは、別の目的があったからだ。

さらに今年の上半期はKECが2006年以後、最大の実績を上げた時期だった。KEC は今年の上半期だけで58億ウォンの営業利益をあげた。この3年間に記録した営 業利益の合計より大きな金額で、工場稼動率も最近では最高の80%以上だった。 賃金問題も交渉できない状況ではなかったが、KEC労働者はこの数年間実質賃金 凍結状態で、今年は270億以上の営業利益が期待されたためだ。その上、生産職 の女性労働者は2007年と較べ2009年の実質賃金が5%以上下がった状態だった。 専従者問題も賃金問題も、使用者側には核心ではなかった。

初めから最後まで使用者側の目的はただ一つ、労組破壊であった。そして工場 を一番稼働させなければならない重要な時点で、莫大な費用をかけて民主労組 を破壊した理由は、事業調整による大規模構造調整を成功させるためだった。

KECだけだろうか? KECの労組弾圧はすべての金属事業場の未来

では、こうした構造調整は一部の事業場だけのことだろうか? 違う。経済危機 で企業の競争がさらに激化すると、コスト削減のための人員削減と生産地移動、 収益性が低い製品から収益性が保障される製品への移動、そしてこれによる構 造調整はさらに急速かつ強力に進められる。

まさに今年、韓国でも一番問題になった自動車部品企業を見よう。世界2〜3位 の自動車部品業者のフランスのヴァレオグループは、2009年の経済危機以後、 大規模構造調整計画をたてた。韓国、米国、ヨーロッパで既存の製品群を生産 する工場で満足できるコスト削減がない工場は果敢に閉鎖するというのが骨子 だった。

その結果、私たちが知っている韓国のヴァレオ空調が清算手続きに入り、ヴァ レオマンドは労組と戦争をして整理解雇、賃金削減、労働強度強化を実現した。 だが新興市場で低賃金国家の中国には大規模投資計画を樹立し、同時にハイブ リッド電気車部品生産のために工場増設も始めた。ドイツのボッシュは2009年 に1万人整理解雇計画をたて、米国デルファイも大規模構造調整計画と新規投資 計画を同時にたてた。

このような構造調整で一番問題になるのはまさに労働者の抵抗だ。歴史的に見 れば20世紀には、資本はずっと収益性悪化と労働者の抵抗を粉砕するために、 製品生産方式と生産地を移動し続けてきた。

20世紀の中後半から大きく成長した電子産業は、労働者の抵抗に対抗して、モ ジュール化方式で生産のほとんどを外注化し、1980年代までは労働集約的部分 を韓国のような半周辺部国家に移転してきた。そしてここでも労働者の闘争に 直面し、90年代からは生産地を中国とインドなどに移動した。アップル、ヒュー レットパッカード、IBMといった米国企業は、生産の全てを台湾と中国に完全に 外注化し、工場のない製造業企業に進化した。

自動車産業も同じだ。1930年代に米国のGM、フォードは強力な労組運動に直面 し、2次世界大戦以後、西ヨーロッパに生産地を大挙移動した。1960〜70年代に 西ヨーロッパ労働運動の闘争が活発になると、韓国、南ア共和国、ブラジルと いった半周辺部国家にまた生産地を移動した。ここでもも労働者運動が活発に なると、21世紀には中国とインドなどにまた移動した。

新しい製品の生産では、高い収益性に基づいて労使妥協が実現するが、競争が 激しくなり、収益性が悪化すればこの協約を破って資本移動により、低賃金の 地域で収益性を回復しようとする運動が常に起きるのだ。ところが資本主義経 済が誕生してからいつも進められたこうした資本の利益追求と労働者の抵抗は、 世界経済危機でさらに深刻になる。経済危機でさらに激しくなった競争で、コ スト削減の構造調整を誰が一番早くできるかによって勝敗が左右されるためだ。

すべての競争の費用は労働者が負う。現在のような構造的危機の時期にはなお さらだ。生産技術の革新は期待できず、ただ誰が一番効果的に労働者を搾取す るかが資本にとってのカギだ。

11月11日金属労組ゼネスト、KEC闘争を反撃の転換点にしよう

[出処:蔚山労働ニュース資料写真]

資本の長期的戦略と民主労組弾圧の意志に比べ、現在、韓国の民主労組の対応 態勢は不十分だ。2009年から現在までほとんどの構造調整事業場では民主労組 が瓦解し、全民主労組運動次元の対応は効果的に進まなかった。

民主労組の強い抵抗がなければ第2のKEC、第2のヴァレオマンドが出現し続ける。 世界経済危機を経過し、長期間の低成長と危機反復を予想する資本は、民主労 組を根絶するために犠牲を払う覚悟をしているためだ。KECもヴァレオマンドも 工場稼動率と営業利益が最良の時点に、莫大な生産の支障に耐えても民主労組 の弾圧に全力を傾けるのは、彼らの労組弾圧が小さな実利をやりとりすること で優位に立とうとするためではない。

11月11日金属労組はゼネストを予告した。一度のゼネストで解決はしないが、 KEC闘争を金属労組すべてが支援しており、民主労組運動が今回闘争を勝利に導 くという断固たる意志を資本に示すべきだ。民主労組運動もここで背水の陣を 敷かなければならない。KEC闘争は、経済危機以後の構造調整の方向をめぐる総 資本と総労働の対決だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-11-11 11:56:56 / Last modified on 2010-11-11 11:56:57 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について