国会が人を殺している
[インタビュー]現代尾浦煙突座り込み8日目、国会正門から帰ってきたキム・ソクチン氏
イ・コンマム記者
iliberty@jinbi.net / 2008年12月31日16時43分
「帰ってどう言えばいいのか」
蔚山からきたキム・ソクチン氏が12月31日午前、国会正門から引返しながらた
め息をついた。彼はハンナラ党の鄭夢準(チョン・モンジュン)議員に会いにき
ていた。「人助けてくれ」と訴えるためだ。
▲キム・ソクチン氏が国会正門を守っている警察に状況を説明している。
電話のベルが鳴る。現代尾浦造船イジョンマン入口の焼却場100m煙突の上から
来た電話だった。12月24日にソウルに来て8日目だ。
「われわれはだいじょうぶだ。たいへんでしょう?」電話機の向こう側から声が
聞こえる。キム・スンジン氏の声だ。キム・スンジン氏は、現代尾浦造船現場
労働者の会、『現場の声』議長だ。キム・スンジン議長の電話にキム・ソクチ
ン氏はイ・ヨンド氏の顔も思い出す。イ・ヨンド氏は民主労総蔚山地域本部の
首席副本部長だ。
「イ・ヨンド副本部長は元々からだが良くありません。度々腹がへったといい
ます。今日で8日何も食べていません。」
12月24日、イ・ヨンド副本部長とキム・ソクチン議長は、二本のミネラルウォー
ターと夏用寝袋一つを持って100mの煙突に上がった。イ・ホンウ現代尾浦造船
労組組合員が下請け業者のヨンイン企業労働者の原職復帰と現場弾圧中断を要
求して身を投げてから10日後だった。彼らは使用者側に事態解決を要求して煙
突に上がったが、使用者側は降りてくるか飢え死にするか選択しろと言って、
食事を煙突に上げることを防いだ。警察と話し、食べ物を上げようとしても、
使用者側が雇った警備員が阻止した。
▲イ・ヨンド首席副本部長とキム・スンジン議長が上がっている現代尾浦造船の前100m煙突。[出処:蔚山労働ニュース]
「昨日やっと五本の水とくつした二足、携帯電話バッテリー4つ、寝袋1つを上
げてやることができた」とキム・ソクチン氏は伝えた。キム・ソクチン氏も、
現代尾浦造船労組の組合員だ。年上だという理由(?)で3つの現場組織が集まっ
た対策委員会の招集権者になったと言う。
「明日から4日まで休暇だが、今日食べ物を上げなければ煙突の上の人はずっ
と食べられなくなります。」
昼休みと退勤時間には宣伝戦をして、対策委員会を構成して、使用者側と対話
しようとしているが、事態解決の兆しは見えない。労組まで味方する使用者側
がゆっくり動くわけがない。だからソウルにきた。現代尾浦造船の最大株主で
ある鄭夢準議員と会うために。しかし、国会にはつま先も入れられず帰ること
になった。国会議長が出したという『秩序維持権』ためだった。民主労働党の
補佐官1人でも出てきて同行してくれれば鄭夢準議員室の扉の取っ手ぐらい捉め
るだろうが、民主労働党もMB悪法を阻止するために本会議場から出るのが難し
いといったという。
▲キム・ソクチン氏
同席した民主労総のイ・ガビョン指導委員は「暖かいおかゆ一杯上げて送ろう
ときたのだが。鄭夢準議員が使用者側に電話一本すればいいのに」と残念がっ
た。
イ・ガビョン指導委員は国会に対する嘆きも吐き出した。
「私たちに国会議員五人がいれば何をするのか。重要なことは労働者たちが戦
える土台を作ることです。鄭夢準議員が電話一本すればあけられる警備員の壁
を今、現場の労働者たちが突破できないということです。現場の労働者たちが
力をつける基盤を作る国会議員になってほしいですが。国会は60年間たった一
回も労働者の味方ではなかったのです。韓米FTAに非正規法、夜間集会禁止など
は誰が作りましたか。李明博ではありません。みんな盧武鉉大統領が作りまし
た。」
電話機がずっと鳴り続ける。それでも対策委を代表して、人がソウルに来たの
に何か変わるだろうという期待が重くせまってくる。キム・ソクチン氏が電話
機を眺めて話し始める。
「それでも国会に行けば何か解決しないかと期待を持ってきました。交渉を提
案してくれというわけでもありません。ただとにかく食事だけ煙突に上げてく
れといいますよ。煙突の上に孤立している人々が極端なことを考えるかもしれ
ません。防がなければならないのではありませんか。鄭夢準議員が経営から手
を引いても最大株主なのだから、人道的次元でも責任を負うべきだろうという
ことです。」
2009年が新しく始まり、使用者は労働者に休みを出したが、彼らは煙突の上で
何も食べられない同僚を考えると休めない。1日からの上京闘争を準備している。
1月2日には集中集会も開く。
「またソウルにこようかと思います。蔚山では何もできません。国会の前で1人
デモもして集会もして問題の深刻さを知らせるべきですよ。」
▲国会議員は何を防いでいるのか。
彼らは重い気持ちで蔚山に足の方向を変えた。
「午後の集会に行って何と言えばいいのか。煙突の上からは何度も腹がへった
と言ってくるのに...」
バッテリー4つがみんななくなれば煙突の上の二人の生死も確認できなくなる。
煙突の上の二人はミネラルウォーター五本でこれから三日間がんばらなければ
ならないかもしれない。国会が人を殺している。
▲キム・ソクチン氏はこの日、国会正門から帰ってこなければならなかった。
[手紙]今鄭夢準(チョン・モンジュン)最高委員が直接出るべきです
進歩新党蔚山ノ・オクィ委員長がハンナラ党鄭夢準最高委員に(出処:蔚山労働ニュース)
進歩新党蔚山市党準備委員長のノ・オクィです。
私は1979年、鄭夢準(チョン・モンジュン)最高委員のお父様の鄭周永理事長が
運営する現代所属の現代工業高校(今の現代情報科学高)の教師になり、蔚山東
区とともに鄭夢準最高委員との縁が始まったようです。私は当時、運動圏とは
距離が遠い大学生活をして、その後職場を求めて蔚山東区に来た、本当に平凡
な教師でした。卒業して労働現場に就職する弟子等を見て、労働問題に関心を
持つようになり、彼らの困難に小さな力にでもなりたいと思ったことが罪にな
り、教師生活8年ほどで解雇され、公立学校で特別採用されるまで13年間、解雇
生活をしなければなりませんでした。この解雇でまた拘束されたこともあります。
こうした歳月を暮しながら、現代という所で一人の人間が人間としての自尊心
を守って生きていくことがいかに難しいかを考えました。
その一方で私と周辺の問題で、こうして手紙を書かなければならないと思った
ことはたった一回もありませんでした。つらくても、私が十分に耐えられるこ
とだったからです。
しかし今、蔚山東区でのことはあまりにも悲しく、現代尾浦造船の最大株主の
現代重工業の最大株主として事実上、現代尾浦造船事態を一番早く解決する鍵
を握る鄭夢準最高委員に手紙を書かなければならないと思うに至りました。
現代尾浦造船のイ・ホンウ労働者をご存知ですか?
年を取った両親と二人の子供、そして夫人を残して38歳のイ・ホンウ労働者は
解雇されてから6年になるヨンイン企業の労働者が大法院で現代尾浦造船従業員
であることを認めるという判決で、復職闘争を展開した人と連帯したという理
由で同僚が懲戒され、弾圧されたので、自分の首にロープをまいて4階から飛び
降りることで、現代尾浦造船での労働弾圧を知らせようとしました。
「病気になってもちゃんと治療を受けられないこの現実、懲戒されて抑圧され
弾圧されるこの現実、このすべてをみんな私が担って行く。これからこんなこ
とは絶対に起きではならず、こんなことは絶対に無くなってほしいと思います。
仲間のみなさん本当に愛しています」(イ・ホンウ労働者遺言の一部)
現代尾浦造船は労組の活動家たちに現場活動を理由としてことごとに監視して、
時間をチェックして、不利益を与えて、働いて怪我をしても治療さえきちんと
受けられないようにしました。ある労働者が人間としての自尊心を守るには、
もう命も捨てなければらなない、そんな絶望の工場になりました。
人が命を捨ててまで主張することには、その理由を考えて解決するのが常識な
のに、東区庁と東部警察署はこの事態を解決するために尾浦造船の労働者が最
低の意思表現をするためにバス停留場に設置した雨よけのビニールさえ踏みに
じってしまいました。そして現場で活動する労働者には再び懲戒の威嚇で彼ら
を袋小路に追い込みました。こうしたことの結果が二人の労働者をこの真冬の
厳寒に100mにもなる現代重工業廃棄物焼却場の煙突にのぼらせました。
イ・ホンウ労働者が身を投げた時、会社と労働組合がすぐ事態解決に出ただけ
でも、労働者の最低限の意思表現である座込み場を壊さなくても、二人の労働
者は煙突に上がらなかったでしょう。
煙突座り込みをしていた労働者は現代の搾取と抑圧の象徴
この東区には、現代重工業と現代尾浦造船労働者とその家族が全住民のほとん
どです。この二つの会社は鄭夢準最高委員が最大株主で、実質的な使用者です。
最近、とても株価が下がったとしても3兆ウォンに達する鄭夢準最高委員の財産
のほとんどがこの労働者が稼いだのではないかと思います。
現代尾浦造船と現代重工業の労働者たちは、朝の6時30分にもならないうちに、
尾浦湾の激しい風を受けて工場に入ります。
私はイ・ホンウ労働者の投身を知らせるために朝の出勤宣伝戦をしながら毎日
こんなに早い時間に出勤する労働者を見て、色々な考えがうかびました。人は
働くために生まれたわけでもないのかもしれませんが、この労働者たちはなぜ
こんなにして暮さなければならないのか残念な限りです。
チョン最高委員は大統領選挙に関心を持っていると思います。チョン最高委員
が大統領になって作りたい大韓民国はどんな姿ですか? 現代重工業と現代尾浦
造船はすでに非正規職が正規職の数を越えました。二つの会社は活動家たちを
弾圧監視することで有名で、民主派代議員の当選どころか安心して立候補もで
きない工場になっています。87年当時も活動家には日常的に尾行監視テロなど
が行われ、20年が過ぎた今もあまり変わりません。前の大統領選挙期間ムン・
グキョン候補のように自分が影響を行使できる事業場の労働者のために何をし
たのか、自分に尋ねてみて下さい。こうした問いへの回答がなければチョン最
高委員のお父さんの失敗を繰り返すだけではないかと思います。チョン最高委
員とその後に見える現代資本の搾取と弾圧を切り離して説明できるのか、私に
は想像が難しいです。
今、鄭夢準最高委員が直接始めろ
87年の労働者大闘争を憶えていますか? 現代に労働組合を作るのは決して容易
なことではありませんでした。しかしこれまで静かに過ごしてきた労働者たち
が、与えられれば与えるまま、させればさせられるままにする奴隷ではない人
間であることを、労働者であることを堂々と宣言しました。誰も防げませんで
した。この時、鄭周永会長は事態の深刻さを看破して労働者と談判しました。
今、鄭夢準最高委員が直接出るべきです。現代尾浦資本は自らこの問題を解決
する意志と能力がないように見えます。二人の労働者が一日も早く安全に降り
られるよう決断して下さい。
「一日一日が不安と苦痛の連続です。一言でとても寒くて腹が減っています。
毎夜吹き付ける激しい風は彼らの弾圧以上に恐ろしいです。彼らが焼却場の稼
動を中断し、煙突から感じられた一点のぬくみも消えました」(煙突座り込み中
のイ・ヨンド氏の手紙より)
100mの上空の煙突で座り込みをしている二人の労働者は、毎日寒さと空腹と死
闘を繰り広げています。煙突に上り、すぐ焼却場の稼動が中断し、座り込み8日
が過ぎて、まともな食事と体温を維持する最低の物品さえ入れずにいます。地
域の労働者たちは彼らがおかしなことをしないか、とても恐れています。夕方
になると煙突に物品を上げようとする労働者と現代重工業の警備員が勝負をし
ています。それでも警察は公権力を利用して法の通り、労働者の安全のための
措置を取らず、現代の表情だけを見ています。東区庁長も国会議員も事態の解
決に出ようとしません。
東区を住民に、現代を労働者たちに
一つの国を率いる意志があるのなら、この東区と現代の垣根を越えて立って下
さい。東区と現代が構成員が自分で判断してつくりあげられるように、もうそ
ろそろ東区をそっとして置いて下さい。すべての会社組織を動員しても執権で
きないことは、もうチョン最高委員のお父様で証明されませんでしたか? 今こ
の東区を東区の住民に、現代重工業と現代尾浦造船はそこで働く労働者に返し
て下さい。警察署長と区庁長、国会議員が鄭夢準ではなく、東区住民を見るよ
うにして下さい。
鄭夢準最高委員様!
もうそろそろ王子の席を抜け出して下さい。生老病死の問題を悟るために王宮
を離れたシッタルダのように、今ここ東区と周辺の家臣から独立して下さい。
そうでなければ決して「バス料金70ウォン」という汚名を拭えないでしょう。
あなたがこの東区に来るときは全工場と学校が洗って磨いて大騷ぎになるとい
う事実を知っていますか? こうして作られた指導力でどうして国を率いられま
すか? ありのまま見て現実を直視する目を持つよう願います。既存の関係を越
え、対話する政治指導者として出なおして下さい。
100mの煙突で空腹と寒さに震えて過ごす二人の労働者と、自分の命を投じて弾
圧される労働の現実を知らせようとしたある労働者の心を推し量って下さい。
こうした醜い真実を無視して、どうして国民に支持される政治指導者になれる
でしょうか? あなたが金持ちのお父さんを持たなければ今日の地位にあるのか
を振り返って下さい。国民はそんなに愚かではありません。保守だろうと進歩
だろうと自ら逆境に打ち勝ち、成長してきた指導者を選ぶと私は堅く信じます。
今、もっと低い所に、国民の近くにおりてきて下さい。その初の出発が現代尾
浦造船労働者の問題の解決であることを切実に祈ります。
いつも健康でいて下さい。責任ある回答を待ちます。
2008年12月31日蔚山東区でノ・オクィ拝
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可(仮訳)に従います。
Created byStaff.
Created on 2009-01-15 04:08:56 / Last modified on 2009-01-15 04:08:58 Copyright:
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