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労働者が家を出た理由
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編集2002.03.03(日)20:13

労働者が家を出た理由/カンスドル

2002年2月25日、ストライキが始まった。 汽車を動かす労働者たち、電気を作る労働者たち、ガスを供給する労働者た ちが仕事を止めて立ち上がった。以前なら「交通大戦争」、「電力大乱」、 「ガス大乱」といった凄じい言語攻勢が出てきたが、テレビでは李漢東(イ ハンドン)総理がストライキ労働者たちに「幸福な家庭を守るために家に復 帰しなさい」と多少『やさしい』要請までした。

しかし、まさにその幸福な家庭を守るために、労働者たちはストライキに突 入した。数千、数万の労働者たちが家庭の幸福のために家を出ざるをえなかっ た理由は何か?

労働者たちに共通する要求を要約すれば、まず民営化反対、二つ目が解雇労 働者復職、三つ目が勤労条件の改善だ。こうした切迫した要求が、彼らをス トライキに突入させた。こうした要求が、労働者たちの幸福と何の関係があ るのだろうか?

まず、民営化反対の主張から見てみよう。ちょっと見ると、「民営化」とい う単語は「官営化」という言葉に比べて「民主的」な感じがする。ある面で は権威主義的で非専門家である官僚に運営を任せるよりも、創意的で専門的 な民間に運営を渡すことが正しいかもしれない。

しかし、民衆等の生活と直結するガス、電気、鉄道などは、農業、住居、教 育、医療などと同様、市場の利潤原理に任せないことがむしろ「民主的」だ。

また、今計画されている民営化は、不幸にも国内外の民間独占資本にその所 有権を渡すことであり、民営化ではなく「私有化」と呼ぶほうが正確だ。真 の代案は、所有権は公共領域に残し、運営は専門家と労働者が共同経営する ということだ。それでこそ、効率性と公共性、人間性という3匹のうさぎを 一度に捕まえることができる。

解雇労働者の復職問題は、単に仕事に戻ったり、所得源をとりもどすことを 意味するのではない。ちょうど独裁政権下で民主化運動をした人々が、あと でその功労を認められるように、人間らしく生きるために、また労働者の権 益のために運動した人々に、その行為の正当性を認めようとすることだ。

この問題は、法的な誤りを正すこととは異なる次元の問題だ。解雇労働者た ちは「解雇」という青天の霹靂のような会社の決定の前で、挫折感と背信感 を感じ、同時に敵がい心と怨恨、敵対感を胸中に積む。

信じてきた会社に背信されたという感じ、隣の同僚の解雇を見ながら、ある いは自分にも切っ先が向かうのではないかと萎縮する感じ、こうしたことが 労働者の創意と自発性、満足感と幸福感を抑圧する。これを解決する唯一の 代案は、誰もが安心して楽しく仕事ができる仕事場を作ることだ。

勤労条件改善の問題は、生活水準の問題だけでなく、生活の質の問題でもあ る。2万人が働く鉄道の分野で一年に30人が死んでいくというのは衝撃的だ。

朝9時に出勤して一日中、そしてまた夜を明かして働き、翌朝9時に退勤する という形で働く鉄道労働者が、果して家に帰って創造的な仕事をしながら幸 福な家庭を築けるのだろうか?

鉄道労組の家族対策委員会のある女性はこう語った。「以前は休みの日には 寝てばかりいる夫を理解できなかったが、ここきて他の家族と会って話をし てみると、みんな全く同じ境遇であった。」

彼女の結論はこうだ。「結局、うちの夫と私たちの家族の問題を解決する方 法は、共に戦うことしかない」。幸福であるため、人間らしく生きるために ということだ。これがストライキに参加した労働者たちが本当に幸福な家庭 を守る道なのだ。

カンスドル/高麗大教授・労使関係

ハンギョレ新聞 http://www.hani.co.kr/section-001057000/2002/03/001057000200203032013755.html


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