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エボラに飛びかかる奇怪な惨事便乗型資本主義

[寄稿]生命より利益を優先する災難

ピョン・ヘジン(健康と代案研究委員) 2014.08.08 14:29

地図でいつも無視されいた西アフリカに世界の耳目が集まっている。 致死率が60-90%に達するエボラウイルスのためだ。 世界保健機構(WHO)が集計して発表した感染者数は、8月6日現在で1711件。 2月からの合計死亡者数は930人を越えた。 死亡者数は一日ごとに数十人増加している。 米国がアフリカ植民地に作った国、リベリアだけでも282人が亡くなった。 そしてメガシティと呼ばれる2100万人の人口が密集するナイジェリアのラゴスへと、 エボラは移動している。

40年間、世界はエボラに無関心だった。 資本主義の「惨事保存の法則」であるかのように、アフリカ地域だけで発生した伝染病だったからだ。 その結果、エボラの治療剤もワクチンもない。 利益以外、何の動機もない製薬会社にとって、アフリカ地域の伝染病の治療剤は収益種目ではなかった。 製薬会社にとっては購買力のないアフリカの顧客より、 ガン、心臓病、肥満などの先進国型の病気の顧客が優先だ。 これがフォーチュン500大企業の中で製薬企業が最も高い純益を上げる理由だ。

幸いかも知れないが、米国人が感染した後にエボラに対する世界の反応は180度変わった。 この40年間、何の進展もなかったエボラ治療剤の開発に米国政府が動いた。 たった数日で、まだ安全が確保されていない米国製薬企業の薬品、ZMappは奇蹟の治療剤として登場した。

▲ガーナの女性が病院の入口で手を洗っている。[出処:http://www.vox.com/画面キャプチャー]

CNNの報道に続き、韓国内のマスコミ各社はカリフォルニアにある職員9人の小規模バイオベンチャー企業が死のウイルスから人類を救う治療剤を開発したと先を争って報道している。 株式市場ではエボラ・テーマ株が最高値をつけた。 米国イノバイオ社の子会社である(株)チノン生命科学の株式は急騰した。 製薬会社に臨床試験用動物を売る企業までがエボラ・テーマ株と誤認され、株価が暴騰した。 モバイルゲームの「伝染病株式会社」は、エボラで人類を破壊するプログラムを追加し、ダウンロード1位を記録した。

ナオミ・クラインは「ショック・ドクトリン」で、災難は当事者にとっては苦痛だが、市場にとっては機会になるという逆説を「惨事便乗型資本主義」と命名した。 大衆にショックを与え、パニックに陥った大衆を活用し、さらに多くの市場を創出して利益を上げる奇怪な方法だ。 今回も「惨事便乗型資本主義(Disaster Capitalism)」は正確に作動している。

多くの人々は望むだろう。 誰がどんな薬品を作ろうが、とにかくその薬品が安全な薬品で、また効果を発揮することを。 それで西アフリカの多くの人々の感染と死を止められることを。 これ以上、国境を越えて伝染しないことを。 しかし、私たちのこうした切実な気持ちには見過ごしてはいけないいくつかの問題がある。

ZMappに対する医学的情報は、職員が9人という零細なバイオ製薬社会が提供していること以外、まだ何もわかっていない。 エボラ・ウイルスに対抗する免疫システム形成を助ける一種のカクテル治療剤だという情報程度。 ネズミから取り出した抗体とタバコの葉から抽出した何かを混合したものだという程度。 それで皮肉にも今、ZMappの生産はタバコ会社のレイノルズ・アメリカンの子会社が行っている。

事実、ZMappを作ったマップバイオ製薬企業は空から降ってきた零細業者ではない。 この会社は2003年、ジョージ・ブッシュの「バイオシールド・プロジェクト(Biodhield Project)」で作られた企業だ。

記憶を回復するためにもう少し付け加えれば、2001年9月「攻撃兵器に改造された」炭疽菌はブッシュに向かっていた。 この炭疽菌は、DNAを判読した結果、メリーランド州のフォート・デトリック陸軍研究所由来のものだと発表された。 内部の犯罪だったのだ。 その後、2002年末にジョージ・ブッシュはテロとの戦争を宣言し、「生物テロから国民を保護する主要研究および生産計画」という、 ブッシュの「バイオシールド・プロジェクト」を発表した。 そして10年間、公衆保健に使われる研究予算から莫大な金を生物テロ防御計画というプロジェクトに投与した。

バイオシールド・プロジェクトは、サダム・フセインが米国に対して生物兵器を使うかも知れないという恐怖を助長し、 イラク侵攻を支持するために考案されたプログラムでもあった。 マップバイオ製薬企業は米国立保健院(NIH)の公共支援により研究を続けていたのは事実だが、 国防部傘下の国防脅威削減局(DTRA)の保護の下にある細菌戦のための軍事戦略研究企業の一部であるわけだ。

よく知られているように、細菌戦と軍事戦略のおかげで、第3世界の風土病と思われていた、しかし多くの人々が命を失う病気の研究が続く。 パナマ運河を建設するために黄熱病が研究され、韓国の流行性出血熱に対する研究も朝鮮戦争の時に米軍が始めた。 国連は新千年開発目標を達成するために、2015年までこのような疎外された病気(neglected disease)に対し、各国家ごとに一定の後援支援金を出す公共ファンドも提案した。 しかし、相変らずマラリアをはじめ、多くの貧しい国、特に熱帯地域の病気に対する治療剤とワクチンの研究は疎外されている。

実験用治療剤ZMappの投与後に状態が好転したという知らせらは、米医学界と世界保健機構内で議論を呼んでいる。 米国の医学界の一部は8月6日に声明を発表し、実験用治療剤は今すぐアフリカの医療労働者にも投与されるべきで、そのために世界保健機構(WHO)がリーダーシップを発揮しろと強調した。 世界保健機構はこれに関し、来週、医療倫理学者を緊急に招集し、安全性が立証されていない実験用治療剤の人体への使用に対する立場を決めると明らかにした。

エボラ・ウイルスに対する世界の関心は、理由がどうであれ、幸いであることは明らかだ。 しかし、エボラ治療剤の開発が人類の安全と生命を優先する方式ではなく、利益に向かって行われる時、これはもうひとつの災難になりかねない。

まさに9月に行われる西アフリカ地域での臨床試験の過程での倫理問題がある。 さらに他の問題がある。 米国立保健院などの公共機関の支援で作られた治療剤に高い価格が決められ、特許がかけられれば、これは西アフリカ数百万人の住民にとっては高価すぎて接近できない薬になるという点だ。 そうでないことを期待するが、タバコ企業家のレイノルズ・アメリカンがタバコの葉から抽出した方法に特許でもかければどうなるだろうか?

国境なき医師団は、数十年間アフリカで荒れ狂ってきた各種の伝染病を無償で治療してきた。 そしてまだ国境なき医師団に所属する医療スタッフと活動家の感染と死亡は報告されていない。 まだ国境なき医師団は、安全性が確定していない実験用治療剤を要求していない。 ただし、1万ウォンあれば医療スタッフが患者を治療するための安全な手袋を購入でき、 2万ウォンあれば医療スタッフが感染を防止するための長靴を履くことができ、 7万ウォンの後援支援金があればエボラ感染を保護する何重もの保護服1セットを着られるとし、後援を訴えている。 そして感染した患者でも安全な飲料水と隔離病棟、そして衛生施設さえあれば、空気感染しないエボラの拡散を防げると言う。

エボラ治療剤の開発がどんな方式であれ、人類の生命を利益とをバーターする方式で開発される時、 災難は国境を越え、まさに私たちの前に来ているのであり、 その時はすでに遅れになっているかもしれない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-08-09 16:51:53 / Last modified on 2014-08-09 16:51:55 Copyright: Default

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