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韓国:セウォル号惨事の診断と代案証言大会
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「韓国社会あちこちに『セウォル号』が漂っている」

セウォル号惨事の診断と代案証言大会、「労働現場の根本的な政策転換が急務」

キム・バルム記者 2014.05.30 00:21

「機関士どうしで話している時、地下鉄には『まさか…』という悪魔がいて、 いつか人の命を取って食うことがあるので気を引き締めてちゃんとやろうと話す」

「生まれた瞬間から霊安室を利用する瞬間まで、 ゆりかごから墓場まで利用する病院を、 医療民営化という巨大な津波が押し寄せている」

「労組がない所では、 たった一人の都市ガス点検員が70kmの配管を担当する」

「87%の非正規職で動く仁川空港、 事故が起きれば指揮権もない非正規職保安業者職員60人ほどが空港全体を担当する」

「国内建設現場では、 10mの塀の中で何が起きているのか誰も知らない」

「工場長はフッ酸が流出したのに逃げ、 消防署員はフッ酸業者とも知らずに思い切り撒いて、 警察はポリスラインを打った」

「火災警報が鳴っても3千人の造船労働者が待避できる階段は、 高さ30m、幅1mの階段3つが全て。 待避階段まで移動するだけで1時間かかった」

地下鉄、病院、発電所、都市ガス、空港、建設現場、化学工場、造船所。 各産業現場の労働者たちが一つの場に集まって、 この国の社会のあちこちのこれまで見えなかった多種多様な姿の 「セウォル号」らが漂っていると明らかにした。

5月29日午前、 民主労総と薛勲(ソル・フン)、金賢美(キム・ヒョンミ)、沈(シム)サンジョン、李仁栄(イ・イニョン)、金起式(キム・ギシク)、朴元錫(パク・ウォンソク)、徐基鎬(ソ・ギホ)、殷秀美(ウン・スミ)、張(チャン)ハナの 9人の国会議員が共同で主催した 「現場から見たセウォル号診断と代案-資本の貪欲は韓国社会をどう威嚇するのか」 討論会が、国会議員会館第3懇談会室で開かれた。

分野と場所が違うだけで、 彼らが指摘する危険の本質的原因は同じだった。 現場証言に出た労働者たちは、異口同音にコスト削減と構造調整、外注化、私有化などをあげて 韓国社会を蚕食する新自由主義労働政策を強く批判した。

2003年大邱地下鉄火災惨事の時に真相調査委員に参加したソウル地下鉄労組のソ・ヒョンソク首席副委員長は、 「当時、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が当選者の身分で現場に来た。 過去とは違ってこの政権ではもっときちんと政治をするのではないかとずいぶん期待していた」が 「結果は同じだったし、今も続いている。 国家の政策全体が新自由主義方向に逆らえなかったからだ。 この社会全体が金儲けに熱中していて、できる奴、できない奴をどう分けるのか」と話した。 続いて彼は「大邱地下鉄惨事があって88日間、組合員たちは再発防止対策を要求し、 道端でストライキをして闘った」とし 「100人ほどが懲戒され、まだ13人の解雇者が復職できない。 盧武鉉政権の時だった」と話した。

続いて5月27日に発生したソウル地下鉄3号線火災事故に言及し 「大邱地下鉄惨事の時と全く同じだった。 答は一つだ。人がいなければ防げない。 新盆唐線はまったく人が運転しない無人運転区間だ。 誰かが放火すれば乗客が消火して脱出しなければならない」と警告した。

保健医療労組のイ・ジョンナム中央大医療院支部長は5月29日に発生した 全南チャンソン医療院の火災事件に残念さを吐露して 「医療民営化が全面化すれば、全国民の約15%、300万人の低所得層の大虐殺劇が起きるだろう」とし 「安全が検証されない遠隔診療は、患者をマルタにする。 直接医師が見て、聞いて、聴診して、先端機械を動員して検診しても誤診が出るのに、 あの小さな医療機器で自分の体を見せるシステムを構築することが、 果たして患者のためになるのか」と尋ねた。

イ支部長は「医療民営化ではなく、もっと人員を拡充して医療公共性を強化し、 患者がもっと安全に、価値ある生命が尊重されなければならない」とし 「生命を担保にして金を稼ごうとする政府の医療民営化政策に国民が鉄槌を下さなければならない」と話した。

都市ガス労組協議会のチェ・グァンウォン事務局長は、1994年の阿蜆洞バルブ基地の爆発事故、1995年の大邱上弦洞地下鉄工事現場の爆発事故、1996年の大韓都市ガス定圧期連鎖噴出事故の後、 2000年代になると事故が少なくなり、安全管理と規制を緩和する流れが登場したと指摘しなて 「全国に労組がある都市ガス会社は33社のうち13社に過ぎない。 労組がない所は安全についての牽制勢力が何もない」と話した。

続いて「この前、ある事業場で朝、現場安全管理をしていたガス安全点検員が飲酒運転のひき逃げで殉職し、今日が出棺だ」とし 「事故が起きると、都市ガス公社は事故処理と遺族の配慮ではなく、 現場できちんと安全装具を着用していたのか、 安全規則遵守は守っていのかを問い詰めた。 遺族への補償金を一銭でも削る心づもりだった」となげいた。

チェ事務局長はガス事故を予防するために、配管15kmごとに安全点検員を選任する原則を例外なく強化して、 もっと安全巡回査察基準も強化しろと主張した。 また現在、苦情サービスを担当する外注の顧客センターを公社が直接投資し、 運営すべきだと付け加えた。

仁川空港地域支部のシン・チョル政策局長は 「仁川空港は派手な表面の裏で、87%の非正規職労働者を雇用している」とし 「9年連続世界空港評価1位を誇っているが、 評価1位の項目はまさに『サービス』部門だ。 サービス部門では、乗客の手荷物をいかに早く見つけるかで決まる。 こうした評価は安全には何の意味もない」と指摘した。 続いて「現在、空港公社が人員構造の改善を研究用役に出している」とし 「セウォル号惨事が起きたため、安全部門でごく一部を直接雇用しようということだが、 根本的な解決策にならない。 事故が発生した時、配慮されず酷使される労働者たちに犠牲を強要することは、 奇蹟を望むようなものだ」と指摘した。

化学繊維連盟のヒョン・ジェスン労働安全室長は、 2012年に発生した亀尾フッ酸漏出事件とセウォル号惨事の類似性を指摘した。 ヒョン室長は「予防の面と規制緩和、事件発生当時の安易な初期対応が、 亀尾フッ酸流出事件当時ととてもよく似ている」とし 「現在も全国1万6千の化学繊維事業場で取り扱われている化学物質を公開したのは10%に過ぎない。 その情報を知らずに、政府はどう管理するのか」と声を高めた。 ヒョン室長は唯一の代案は、地域社会と住民の監視を保障することだと主張して、 最近殷秀美(ウン・スミ)議員が代表発議した地域社会知る権利法の早急な通過を要求した。

最後の証言者に出てきた現代重工労組のキム・ドッキュ労働安全室長は 「現代重工には直営所属労働者が2万7千人、下請企業所属労働者が3万7千人いる。 再下請け非正規物量チームまで入れれば7万を越える」とし 「その全ての人員に安全管理要員は200人ほどしかいない。 安全関連の資格証明もないアルバイトがほとんどだ」と指摘した。 続いて「労災死亡時に元請責任者を拘束処罰する法律を制定すれば、 造船業現場の安全システム問題が改善される」と話した。

彼らは全員、現在のような状況ではいつ第2、第3のセウォル号惨事が発生しても全くおかしくないということに同意した。 これを防ぐためには、労働権の強化と団体交渉での安全条項挿入拡大など、 労働現場からの根本的政策転換が必要だと意見を集約した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-05-31 06:48:21 / Last modified on 2014-05-31 06:48:22 Copyright: Default

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