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韓国:「セウォル号の殺人者は船長ではなく新自由主義」
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在独哲学者ハン・ビョンチョル、「セウォル号の殺人者は船長ではなく新自由主義」

セウォル号船長、労働市場柔軟化政策の結果...「責任感を持てず」

チョン・ウニ記者 2014.04.29 17:27

現代社会を「疲労社会」と呼び、ヨーロッパの学界に大きな反響を生んだドイツ、ベルリン芸術大学の在独哲学者、 ハン・ビョンチョル教授がドイツの有力日刊紙FAZに今回のセウォル号の災難について 「殺人者は船長ではなく新自由主義」と明らかにして注目されている。

4月26日(現地時間)、ベルリン芸術大学のハン・ビョンチョル教授は 「この船は私たちすべてだ」という題名で、ドイツのフランクフルト・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)に寄稿し、 「沈没したセウォル号は韓国人だけの問題ではなく、沈む船から脱出した船長は、公共心をただ妄想にという新自由主義イデオロギーの肉身」と明らかにした。

ハン・ビョンチョル教授は今回のセウォル号事故について、 「単に乗務員の不注意や非専門性、または韓国の国家的な特色に原因を求めるべき事故として見過してはならない」とし 「これは私たちの世界そのものについて、多くのことを表す、つまり今日の韓国社会に対する一つのメタファーと解釈される」と前提にした。

ハン教授はまず 「すべての面で船長が単独で責任を負い、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は彼に殺人行為の責任があると非難」したが 「この不幸に対する責任は、現代の元経営者だった李明博(イ・ミョンバク)前大統領の新自由主義政策にある」とし、これを反証する三つの事項を提起した。

[出処:http://www.faz.net/画面キャプチャー]

セウォル号を飲み込んだ新自由主義:労働柔軟化、国家機関民営化、規制緩和

ハン教授が最初に提起した新自由主義の事例は、規制緩和だ。 彼は「一般的に、船舶の生命は20年間続く」が 「2009年に企業側寄りの政府がこれを30年に延長させた」とし 「こうした改革は、当時の李明博政権が集中した新自由主義的な規制緩和の線上で始まった」と伝えた。 彼はこれに対して「20年の制限規定が続いていれば、日本で廃船直前だった18年も経つこの船は輸入されなかっただろう」とし 「ただ利益だけを追求する企業の政策は、事故の危険を深刻に増大させる」と提起した。 「費用を下げて効率的に運営するという、こうした新自由主義の教理は、人命と人間的な尊厳を費用として要求する」ということだ。

ハン・ビョンチョル教授は国家機関の私有化にも誤りがあると指摘した。 彼は「韓国では、海洋事故救助業務が部分的に私有化されている」とし 「費用を削減するための救助措置の民営化は危険なこともある」と明らかにした。

彼は最後に「セウォル号の乗務員のほとんどがいわゆる非正規職だったという点」に注目した。 ハン教授は「彼らは短期契約職だった」とし 「船長さえ非常に低い賃金の1年任期の短期契約職」、 「権威はなく、単に名前だけの船長」だったと指摘した。

ハン教授は「このような労働条件では、いかなる義務、船に対する強い拘束と責任感も持てない」とし 「だから人々は、まず可能なら自分を救う」と明らかにした。 そのため彼は「殺人者はそもそも船長ではなく、新自由主義制度だ」と強調した。

セウォル号船長、労働市場柔軟化政策の結果...「責任感を持てず」

ハン・ビョンチョル教授は、セウォル号惨事の時代的な背景になった新自由主義政策的な問題を提起しつつ、 哲学者としてこのイデオロギーがどんな倫理的な問題を生み、これがまたどう事故につながるのかについても暴いた。

ハン教授はまず 「韓国では正規職は非常にめずらしい」ということに注目し、 「しかし一般的に、契約職労働は道徳を害する」と見た。 彼は「正規職がアジア危機の時にIMFが苛酷に貫徹させた新自由主義アジェンダにより急激に廃止され、(...) 経済の新自由主義化以後、韓国の社会的な雰囲気は非常に険悪で非人間的」とし 「皆が自分自身、そして自分の生存だけを考え」て、「公共心は壊滅した」と明らかにした。

彼はこのような事例として、まず朴槿恵(パク・クネ)大統領をはじめとする韓国の政治家が、自分の履歴のために事故現場に急行して写真を撮った点を上げ、 これは単に制度的な強要に隷属させる新自由主義、いわゆる代案のない社会の症状だと見て、これは韓国でだけではないと強調した。

しかしハン・ビョンチョル教授はこうした公共心の壊滅は「労働政策の結果」だとし、 この原因を新自由主義労働市場柔軟化政策に求める。

ハン教授は「さらに多くの利益と効率のために労働を柔軟化するのは、われわれの新自由主義世界の一般的な傾向」とし 「今日、人々はしばしば一つのプロジェクトのためだけに採用されるが、それでは会社に対する強い拘束力が生まれない」と見た。

彼は代表的に「現在の経営者は会社に対するアイデンティティが非常に弱い」とし 「彼らは会社が沈み始めれば、多少誇張して言えば、一番先にこの会社から離れる」と明らかにし、 「新自由主義は効率を上げるために一般的に拘束力、信頼を破壊する」と診断した。

そのためハン教授は 「韓国の船長の態度は、部分的には新自由主義労働政策の結果」とし 「これは船長に対し道徳的な責任を賦課する『私の船』という強調を全く不可能にした」と見た。 これについて彼は「どんな船長も『自分の船』から一番先に離れることはない」とし 「20年前、韓国で発生した同じような恐ろしい船舶事故での乗務員たちの態度は全く違っていた」とし、当時「乗務員はすべて災難から生き残れなかった」と伝えた。

しかしハン教授は「一般的に船長は、強く自分の船と自分を同一視して、船と自分の運命を共にする」とし 「これは名誉に関する質問」と明らかにした。 しかし彼は「こうした精神は、今日全く存在せず、これは韓国に限られない」とし 「イタリアのコンコルディア号の船長もまず自分の生存だけを考えたのは偶然ではない」と強調した。

「私たちすべてが、自分の生存のためにもがく」

そのためハン・ビョンチョル教授は 「今日の社会自体は生存の社会」で 「皆が自分の生存にもがかなければならない」と見る。

ハン教授は「新自由主義」概念の考案者である経済学者のアレクサンダー・リュストウ(Alexander Ruestow)を引用し、 「彼は人々が単に社会を完全に市場に任せれば、社会はさらに非人間的で、さらに麻痺すると主張した」とし 「そのため彼は、連帯、公共心と人間性を再生させる『重大な政策』を要求」したが、 「新自由主義の今日の形態はこれとは反対に、さらに大きな自我、彼ら自身の企業家を生産する」と憂慮した。

そのため彼はリュストウが見たように、 「競争は市場経済領域の一つ組織原則だが、人々が社会全体を構築する原則ではない」とし 「道徳的かつ社会的な観点で、競争は一つに固まらせる原則ではなく解体させるものであり、今日の全社会の競争は社会の没落、人間的な関係の解体に導く」と主張した。

ハン・ビョンチョル教授はまさにこれにより 「船長だけでなく、まず自分自身の生存を考えるのは今日では典型的」とし 「公共心の解体が続けば、(セウォル号だけでなく)われわれの社会は沈没するだろう」と警告した。

ハン教授はこれ以外にも、今回の災難によって政治家たちが透明性と統制を強化するかもしれないが、これは本質的な原因ではないとし、信頼を失った社会において透明性が、連帯と公共心が消えた社会では統制が強調されるが、透明性と統制は腐敗を防ぐとしても、これは単に症状を除去するだけだとし、その限界を指摘した。

彼は災難の「原因である揺れる公共心、または漸増する利己主義は続くだろう」とし、 彼が当初提起した新自由主義政策の変化についての根本的な省察を提案した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-04-30 06:04:02 / Last modified on 2014-05-01 01:07:47 Copyright: Default

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