韓国:長期化する密陽送電塔の戦場 | |
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雲がかかりガンが治る村に76万V密陽送電塔[現場]長期化する密陽送電塔の戦場...「電気は大切だが正しい送電を」
キム・ヨンウク記者 2013.10.11 19:08
▲密陽市府北面ピョンバ村の127番送電鉄塔予定地の近くからの密陽の風景 76万5千ボルトの送電塔に反対している密陽の村には、嘘と政府に対する不信、そして死という単語がさまよっている。面積799.01平方km。605.25平方kmのソウルの1.3倍だが、人口はソウルの1/100程度の平和で美しい密陽の田舎の村は、戦場になってしまったか、あるいは戦争を準備していた。 住民から一番よく聞く言葉は「韓電のやつらは口さえ開けば嘘をつく」だった。 密陽市庁の5-6級公務員への深刻な不信と「こんな扱いを受けるなら、いっそ 死んだほうがましだ」という言葉が対話のたびに出てきた。 ▲ピョンバ村127番現場の穴 朝晩、木のツエをついて、ふろしき包みを持ち山を上り下りする避難民のような 70-80代のお年寄りに、安らかな老後はなかった。ソウルでは、基礎老齢年金の 議論で真っさかりだが、都市の媒煙と騒音から離れた老境の暮らしには、静かな 老後がもたらす満足感ではなく、敵対的な感情がみなぎっていた。 工場もないばかりか、人口密度が低く、車両が少なく、空気はとびきり良い ところ。北東側には華岳山、加智山と山脈が延び、険しい山間地帯に囲まれ ながらも、南は洛東江と密陽川流域の広大な平野が穀倉地帯を作る所が密陽だ。 今年の夏、最高気温を記録した密陽は、昼夜の気温差が大きく、栗やナツメの などの農作業に適している。密陽のナツメはリンゴほどに糖度が高い。だが 栗とナツメは送電塔工事のおかげで、ただ地面に落ちる危機にある。ナツメは 少し赤くなる頃に取って、適当な時に乾燥器にかけなければならないのだが、 収穫時に韓電が工事を再開したので老いた農民の怒りはさらに大きい。彼らは 送電塔ができれば永遠に農作業ができなくなると判断し、今年の農作業は放棄 しようという心情を吐き出した。 密陽の昼夜の気温差は、秋の朝、密陽を取り巻く山々を中心に雲霧を作り出す。 智異山の高峰から見るようなすばらしい雲霧は、警察のブーツと住民の声で破 られる。夜には広大な平野と、こじんまりと取り囲む山々は、どこの田舎より 華麗な天の川を作ってくれる。カシオペアが輝く空の下で、警察の厚い盾が 住民の頭の上で城壁を作っていた。 ▲126度送電鉄塔工事現場近隣で毎日ヨス村の住民は警察、韓電職員と工事中断を要求して衝突している。 ▲ヨス村の住民たちは、警察が消火器で焚き火とガスバーナーを消し、強く怒った。 天恵の自然環境ピョンバの竪穴で70-80代のお年寄りが座り込み10月2日の晩、韓電工事再開初日。密陽市府北面ピョンバ村に近い高度400mの 127番送電鉄塔工事予定地にあるビニールの竪穴座込場では、チャン某おばさん (57歳)の手が忙しく動いていた。ソウルではおばあさんと呼ばれる歳だが、 ここでは末っ子のようなチャンおばあさんは、秋夕の後から竪穴で暮らす 70-80歳のおばあさんたちの食事を準備していた。 新聞紙を敷き、キムチと菜っ葉の汁、海苔など簡単なおかずの夕食は、30人分 程になる。住民は山に狂った登山家でもないが、1か月以上、山の中でこうして ご飯を食べていた。 登山客にはよく知られている華岳山腹の標高400-600mの所にあるピョンバ村に 76万ボルトの送電線路が通る予定だ。ピョンバ村の近くには127-129番の3本の 送電鉄塔が予定されているが、まだ工事の気配はない。 韓電と政府は送電塔工事を再開するにあたり、相対的に村から少し離れ、住民 が強く抵抗する難しい場所を選んだ。5月に工事を強行した時、韓電の作業員は 真っ先にピョンバ村(127番鉄塔予定地)に押しかけた。ピョンバ村は、イ・チウ おばあさんが送電塔工事に反発して焼身自決したポラ村とともに強硬な送電塔 反対のお年寄りが多いところだ。 当時、韓電は反対の声が強いところから工事を再開し、密陽全体の反対住民の 勢いをくじく戦術を使ったが失敗した。70-80代のおばあさんたちは、韓電が 先に工事現場に入ると翌日の午前3時に現場に進入し、上衣を脱いで屎尿を撒き、 首にロープを巻いて抵抗した。おばあさんたちのすさまじい抵抗に言論の関心 が集まり、世論と国会で袋叩きにされた韓電は退くしかなかった。 今回、韓電と警察はピョンバ村(127番鉄塔予定地)には現れなかった。ただし、 ピョンバ村の送電塔予定地で低い稜線を一つ越えただけの126番予定地に進入 して工事を強行している。工事の再開とともにヘリコプターが休む暇もなく ピョンバ村の竪穴の上を飛び回った。竪穴に集まった住民は、ヘリコプターが 飛ぶたびに罵声を浴びせ、「われわれは絶対負けない」と大声を張り上げる。 ▲127番の竪穴の前に座る80代の強硬反対派おばあさんたち ▲127番の竪穴に堀た墓穴 ▲標高350mの山で座り込んで食事をするヨス村の住民 雲がかかってガンも治す村なのにポラ村は、イ・チウ老人の焼身のため住民の怒りが強く、強い送電塔反対闘争 が展開されるのは当然だが、ピョンバが強硬反対の村になった理由は何か。 住民たちは、ピョンバ村はガンも治す所だと異口同音に言う。実際に一部の 住民は、10年ほど前、釜山などの外地で働いてガンや脳梗塞などの病気にかかり 植物人間のようになって、財産を処分してここに戻ってきた。そしてほとんどが 病気が治り、健康に暮らしている。密陽市の空気が良い上、ピョンバ村は海抜 400m〜600mの華岳山の裾にあるので、毎日フィトンチッドやきれいな空気を 吸えるからだ。そんな村に送電塔と76万ボルトの電線が平行に通るようになる。 すべての人生をかけて定着した一部の住民にとって、送電塔は人生を揺るがす ガン細胞そのものだ。 400mほどの高地にある127番に近い竪穴で眠った翌朝は、智異山の山荘で目覚 めた時のような深い自然のさわやかさを与えてくれる。特に竪穴の付近から見 る密陽市内方向の雲霧が作り出した稜線の風景は、ここでなければ見られない。 清明な秋の朝、山麓の野原の向こうにあるの村には雲霧が広がっていた。 智異山の碧宵嶺や山小屋のようなところで起きた朝でなければ見られない風景 と似ていたが、智異山とは違う味がある。 チャン某おばさんは「ここは雲が山にかかり、写真を取りやすい美しい村」とし 「しかし雲が多くて湿気が多い。それが電磁波の影響をとても大きくするという。 その上、鉄塔の予定地に同じ高さまでアドバルーンを上げると、すぐ窓の前に 見えるほど鉄塔と村が並んでいる」と話した。 ▲避難生活のようなヨス村126番鉄塔座り込み現場 ▲ヨス村の住民たち ▲ピョン里の入口で警察に座込場への進入を要求する住民 127番の竪穴に集まった住民、韓電と長期戦に備えるピョンバの竪穴には、ピョンバ村の住民しかいないわけではない。周辺のウィ ヤン里、チンシゴル、トバン洞で強く反対しているお年寄りも集まっている。 このように、ピョンバには強硬なお年寄りが多く、ピョンバは韓電との長期戦 を緻密に準備している。 500年続く安東権氏の集まって暮らしている村もここ127番予定地の周辺にある。 17歳の時に安東権氏の門中に嫁いできたソン某おばあさん(85歳)は、3日の午後、 127番の竪穴の前でそわそわしていた。一部のマスコミが、工事が再開されれば ソンおばあさんが墓穴に入り、命をかけても送電塔を防ぐとインタビューに答 えたため、江原道で暮らしている息子が母を降ろすと言って夜に竪穴に来る 予定だった。 ソンおばあさんは生涯、田畑を耕してここで暮らしてきた。ソンおばあさんは 「ここは先祖代々、暮らし続けてきたわれわれ権氏の宗山だ。私が座っている この場所は、500年の場所だ」とし「ここが私が埋められる穴だ。工事が始まれ ば私は穴に入る。私が死ねば、その時ここに鉄塔をたてろ」と憤怒した。 だが50代の息子夫婦が来ると、「ここには外部の人もたくさん来て助けてくれて、 三食の食事もしっかり食べてゆったりと過ごしている」となだめた。息子は 「戦うにしても、体を大事にして安全に戦ってくれ」とし、「前は私たちが母に 心配をかけたが、最近は母が私たちを心配させる」と心配した。幼いころから ソンおばあさんの息子を見てきた近所の竪穴のおばあさんたちは、「私たちが 一緒にいるからあまり心配するな」と息子を安心させた。結局、息子はソン おばあさんの意地を挫くことはできなかった。 ピョンバ村に集まった住民は竪穴の入口に墓穴を掘った。工事再開の知らせが あった初日、近くの126番鉄塔の予定地からチェーンソーの音が聞こえ、数人の おばあさんが反射的に何度も竪穴に駆けつけたという。126番鉄塔の工事現場前 150mほどの山の中では、ヨス村のお年寄りが一日数回、韓電職員と警察と衝突 して工事の中断を要求している。またパル里入口、ピョン里入口、桐花田村、 金谷4工区現場事務所の前で、工事中断要求集会と座り込みは絶えず続いている。 ▲金谷4工区現場事務所前の竪穴で、行政代執行を阻止して疲れた住民たち ▲4工区現場事務所の前で対峙していた時、あるおばあさんの頭上に工事資材を運ぶヘリコプターが離陸した。 こんな状況なのに、韓電はここの住民に送電塔を建てる理由を説得できず、 ただ警察力による工事強行だけを予定している。住民たちは韓電を知るほど、 不信と闘争心が強まった。 住民たちは韓電と政府の偽りに基盤する事業のごり押しに驚いている。実際に、 送電塔から近いところで暮らし、一番大きな利害関係がある住民が反対してい るのに、2-3km離れた山の反対側の相対的に反対が弱い住民と合意して、多くの 住民が合意したと言うという調子だ。 127番鉄塔の竪穴でソ・ジョンボム氏(55歳)は「賛成側委員という人々を見れば 送電塔と直接関係ない人がたくさん座っている」として「送電塔の近くで暮らす 人を中心に意思を聞くべきなのに、むしろ近い村は排除する」と非難した。 彼は「韓電という企業は口さえ開けば嘘をつき、田舎者だと馬鹿にする」とし 「韓電の職員があるお年寄りに『送電塔で土地の値段も下がらず、健康上何の 被害もない』と言うと、そのお年寄りが『何の被害もないのなら、なぜ補償を するのか』と聞くと、『送電塔はとても大きいので、見たくないだろうから、 補償してやる』と言った。どれだけ私たちを馬鹿にすれば、そんな形で話すのか」 と声を高めた。 韓電の表現のとおりなら府北面は70-80代のお年寄りは強硬派だ。強硬派の お年寄りのおかげで、50代のおじさん・おばさんも強硬になった。 ソ・ジョンボム氏は「私もおばあさんたちのために、反対闘争を始めた」とし 「警察と韓電は府北面が転べば(降参すれば)みんな転ぶという。だから5月には 一番最初に攻め込んできたが、逆にやられた。今回ははぐらかし作戦で、警察 が全然来ない。もしここで事故が起きれば、他の場所で(送電塔工事を)できない。 他の場所ですべて済ませてここを孤立させる作戦」だという。 ピョンバは秋夕の翌日から韓電の工事再開に備えてきた。長期間頑張る食糧も、 すべて準備している。山の下の村の入口はトラクターと耕運機で防ぎ、竪穴 までは住民の車両だけが移動できる。住民は抜け道と山のあちこちから韓電と 兵力が入ってきても工事を防ぐ自信があるという。韓電と警察がここを占領 するには、126番鉄塔現場などから山を越えてこなければならない。 韓電の工事再開から4日目、ペ某(56)氏は朝のニュースを見て怒った。彼らの 根拠地を守るために支援に来た人々に対し、密陽ニューシスを始めとする保守 言論が大々的に外部勢力攻勢をかけてきたからだ。 彼は「厳密に言えば、総理や韓電社長、産業部長官、みんな外部勢力だ。韓電 の作業者、職員、警察はみんな退いて、密陽の韓電、密陽の警察、密陽の住民 だけで戦わなければならない」とし「国民の痛みがわかると言って来る人たちが、 なぜ外部勢力なのか」と憤激を放った。 ペ氏も「韓電が言うように本当に送電塔に問題がないのなら、なぜソウルに作 らないのか」とし「自分たちもどこかに被害があるかもしれない、気になるこ とがあるから補償をするというのではないか」と疑問を表わした。 「私たちも電気の大切さは分かる。きちんと送電しろということ」工事現場で会った韓電関係者の言葉を総合すれば、政府や韓電からはとにかく 相対的に工事の阻止が難しい一部の送電塔を早く完工させようとする意図が伺 えた。その場合、強硬派のお年寄りの勢いもくじけると判断しているようだった。 こうした判断は完全に誤っている可能性が高い。すでにピョンバの住民も密陽 送電塔の戦いの最後の激戦地の一つがピョンバ村になると見て、どんな結論が 出ようがお互い、最後を見届けようという話をよくする。 密陽市庁は送電塔工事と無関係な金谷4工区現場事務所前の小さな竪穴に、粘り 強く行政代執行を試みてきた。これは村ごとに対峙している現場の連帯動力を 分散させる役割を果たす。反対に、各村の住民による工事現場付近の座り込みは、 警察力が強硬反対の村に集中することを防ぐ役割を果たしている。韓電がピョンバ村 などの村に隣接する送電塔工事を強行すれば、本当に送電塔をめぐる戦争が始まる。 チャン某おばさんは「韓電は、他の場所をすべて攻略してからここを攻撃する 戦略かもしれないが、ここさえ防げばどうせ送電線はつながらない」として 「府北面のおばあさんは普段は強くない。政府と韓電がその気になれば、私た ちを片づけられないはずがないけれど、生きている人を引っぱってでも、 私たちを埋めなければならないだろう。そんなに人殺しをしたければ(工事を) しろ」と怒った。 また「私たちも電気を使っており、電気の有り難みも知っている。電気を使え なくしようとしているのではない。正しく送電をしろということ」と話した。 ▲5月に工事が中断された鉄塔付近現場に韓電が放置して撤収した掘削機。 ▲ピョンバ村の入口に集まった住民 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2013-10-12 13:30:36 / Last modified on 2013-12-17 09:52:58 Copyright: Default 世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ |