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韓国:誰が、なぜ、イルベに接続するのか?
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誰が、なぜ、イルベに接続するのか?

[コラム]韓国の青年、88万ウォン世代からイルベに、韓国社会を問い直す

ソ・チャンホ(人権運動連帯) 2013.06.17 16:09

韓国社会の深刻な問題である日刊ベスト保存所(イルベ)。このサイトは2年で一日平均掲示物の照会数が130万回に達するサイトに成長した。イルベ利用者の大多数が10〜20代と推定され、386世代など民主化運動時期を体験した40〜50代などの既成世代とは歴史的経験値が非常に違う世代だ。

「イルベ現象」とは何か?

イルベ利用者の多くは進歩陣営に対する極端な嫌悪感、5・18光州民衆抗争や、 5・16軍事クーデターなどの歴史的、社会的に評価されている事件に対し歪んだ 反発や称賛を吐き出している。また、こればかりでなく湖南地域を「エイ」と 蔑視し、5・18光州民衆抗争の時に犠牲になった犠牲者を「エイ宅配」と皮肉る などで社会に衝撃を与えている。彼らは地域感情と歴史的事実の歪曲だけでは 終わらない。相対的に保護されていないと感じている自分たちが、社会に保護 されていると感じる女性と移住労働者をすべて敵と規定して攻撃する。だから イルベで一番人気がある文章は、既成世代とその世代が信じている真実を逆転 することに合わされている。

イルベはインターネットの新しい現象と社会的な用語を生産した。「オフ会禁止」、 「敬語不使用」の規則がある。この規則の下で匿名性が保障される。匿名性が なければ、極端な表現で得る面白さもまた失われる。これはイルベが作り出した 隠語が早く拡散する基礎になる。

代表的なものが「民主化」だ。最近、某アイドルグループのメンバーが「民主化」 という表現を否定的な意味で使って大変な思いをしたことがある程、社会的に 広く一般化している用語だ。しかしこの民主化の意味をイルベは「下降平準化」、 「画一化」、「没落」などの意味で使う。いわゆる386世代などの民主化世代の 40〜50代が知っている民主化の意味を完全に逆転させている。これはイルベが 既成世代、あるいは386世代に抱く極端な反感と読める。それで5・18光州民衆抗争に 対する歪曲と反目も、386世代に対する反感の延長だと思われる。

「イルベ現象」彼らの行動は何が原因なのだろうか?

韓国社会は1997年のIMF救済金融以後、本格的な新自由主義社会に入り込んだ。 整理解雇、非正規職、失業など、極端な競争でいつクビになるかわからない 不安定な社会になった。イルベの主な利用者といえる10〜20代は、1997年の IMF救済金融以後、競争という社会的イデオロギーを成長の過程で全身で内面化 した新自由主義世代と見られる。基本的な政治制度は一定部分安定したものの、 社会・経済的には生き残るために自分のすべてを賭けなければならない教育と、 社会システムを受け入れなければならない世代と見られる。しかし多くは競争 から押し出されるほかはない絶望的な人生を強要される。

88万ウォン世代、イルベに話しかける!

新自由主義の論理が一般化した2007年の韓国社会は、20代を88万ウォン世代と 称する。88万ウォンは、わが国の非正規職の平均賃金、119万ウォンに20代平均 所得の割合74パーセントをかけて算出した金額だ。結局、88万ウォン世代とは、 大学を卒業した後も正規職ではなく非正規職として働く現実を表わしている。 88万ウォン世代は、自分の先輩の世代である386世代が容易に大企業の正規職に 就職することが可能だった「良い」前の世代に対する剥奪感の表現だ。88万ウォン 世代は、20代の悲しい名前だ。

しかし88万ウォン世代は、20代が体験する人生を示すが、相変らず20代の主体的 な見解はない。社会的権利を奪われた20代のかたくなで不透明な人生に対する 社会的理解を越えられない。彼らの怒りと苦痛をいかに表わし、勢力化するのかの 社会的関心は相変らずない。

だから88万ウォン世代は、不安定な雇用、学資ローン償還、約束ない就職準備、 高騰する家賃など、過度な生活の費用のために、恋愛も、結婚も、出産も放棄 するか約束なく先送りする青年層を称する「三放世代」でもある。10〜20代を 代弁する政治勢力もなく、社会的な権利を奪われた彼らに残されたものは何か? 生活の怒りを鎮めてくれる対象を探すこと、匿名性の中で世の中に対する怒り を表出させること、インターネットという「場」を通じて集団化すること、 たとえそれ自体が排泄であっても「イルベ現象」はとても自然な社会的現象 なのかもしれない。386世代として登場した民主政権に対する期待は高かったが、 自分は相変らずみじめな生活をし、守るべきものはとても多くなった。これへの 不満が爆発していると言うと誇張だろうか?

イルベのための弁解、そしてわれわれは?

イルベ現象は、単に口をふさいで罰すればなくなる程度の一時的・例外的逸脱 ではなく、中・長期的な構造の問題として見なければならない。しかし民主党 はすぐ「サイト閉鎖」を主張して、運営禁止仮処分申請と告訴告発などの法的 対応をすると言い出した。その上、進歩知識人を自任する人々は、刑事処罰が 当然だと主張した。

最近、イルベの「乱暴な」発言に怒るのは当然だ。しかし彼らを処罰しろと いう主張には、もっと慎重な悩みが必要だ。もちろん、表現の自由は一般化 されるものではない。社会的に抑圧され、差別と排除の中にある人々の声と 叫びが拡張され、普遍的人権と社会的な認められた。そのために権力を持つ者と 社会的少数者の社会的な権力関係を無視したままで、表現の自由を機械的に 動員し、イルベの抑圧と差別、不正を正当化することには同意できない。また、 社会的少数者を嫌悪して攻撃することは表現の自由からも全面的に反する。 明らかな問題提起と批判でなければならない。

ただし、彼らがなぜこのように極端で、破壊的な怒りの言語を吐き出すのかに 対する省察がもっと必要ではないだろうか? イルベに接続し、絶望の社会に怒り、 嘲弄しようとするのは何だろうか? また、歴史と社会を、そして、社会的弱者を 攻撃する「イルベ現象」から、われわれはどれほど自由でありえるのか? イルベの 乱暴な発言に対する問題提起と批判を越え、彼らの怒りと苦痛に、いかに共鳴 するのか、社会的・経済的権利の拡張のための共感がまず順序ではないだろうか? まだ相変らずイルベは「彼らの言語」で社会に叫んでいる。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-06-18 09:34:18 / Last modified on 2013-06-18 09:34:18 Copyright: Default

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