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韓国:不審検問強化法案、警察の統制が至急
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警察の『人権統制』が至急だ

『職務質問-身元確認-同行要求』に続く不審検問強化法案が国会に係留中

チェ・ウナ(人権運動サランバン) 2010.09.02 17:45

8月19日、国会図書館の小会議室で『人権保障のための警察官職務執行法(警職 法)の改善方向』討論会が、パク・ヨンソン(民主党)、イ・ジョンヒ(民主労働 党)、チョ・スンス(進歩新党)国会議員の共同主催で開かれた。この日の討論会 では、行政安全委員会の代案として4月の国会行政安全委員会を通過した警職法 改正案が集中して検討された。

8月19日国会図書館小会議室で『人権保障のための警察官職務執行法(警職法)の改善方向』討論会

国会行政安全委員会代案の警職法改正案(下改正案)の毒素条項は大きく△不審 検問の強化、△所持品検査と車両検索の強化、△留置場収容者の処遇の問題に 分けられる。改正案について、江原大学校法学専門大学院のムン・ビョンヒョ 教授は「個人の自由とプライバシーを広く侵害する恐れがあるなど、違憲の余 地がある内容を相当含む」、「憲法上の無罪推定の原則、比例の原則などに反 する内容を含み、警察の利害だけを反映し、国民の基本権保護の趣旨を無視し ている」と言う。つまり国民の基本権尊重を無視したままで警察の権限だけを 強化しているという指摘だ。

『職務質問-身元確認-同行要求』に続く市民の統制

改正案では、不審検問行為は『職務質問-身元確認-同行要求』の3段階に分けて 規定している。現在、不審検問は『質問と同行要求』と規定されているが、改 正案には不審検問対象者の『身元を確認』する権限も警察に与えている。

改正案を調べよう。警職法改正案(以下、改正案)は『不審検問』を『職務質問』 と変え(3条1項)、現行の警職法にある「意思に反して回答を強要されない」と いう条項(現行警職法3条7項)を削除した。特に改正案は不明確な表現が多く、 警察が恣意的に権限を行使する余地がある。改正案3条は「怪しい行動やその他 の周囲の事情を合理的に判断して次の各号のどれ一つ」とし、質問する警察官 が任意に判断できるようにした。

ムン教授は「『怪しい行動』という不明確な文句は削除すべきで、質問の内容 も氏名、国籍、住所だけに限定し、それ以上の質問には具体的な危険を防止す る目的だけを認めるのが妥当だ」と話した。またムン教授は第3条1項1号「何ら かの罪を犯したり犯そうとしていると疑われる理由がある人」の『何らかの罪』 という表現も非常に包括的で不明確だと指摘した。

身元確認制度を新設

今回の改正案で、警察の権限強化意図をはっきり見られるのは『身元確認制度 の新設』だ。改正案は身元確認制度を新設(3条2)し、職務質問の要件に該当す る者の身元を確認して身分証提示を要求できるように規定している。前に見た ように、職務質問の要件の「怪しい行動」、「何らかの罪を犯したり犯そうと していると疑われる理由がある人」等の表現は非常に不正確で包括的だ。この ような要件がそのまま身元確認の要件になる。

こうなると、怪しい行動や、何らかの罪を犯したり犯そうとしたことを判断す る主体の警察が、いつどこで誰にでも身元確認して国民を統制できる。警察の 統制は市民の権利の制限につながるのは明らかだ。ムン教授は「移動の自由の 制限だけでなく、無視できない時間の消失を伴う。彼が自分を証明できず、彼 の陳述が信頼されなければ、警察は彼を警察署に同行する可能性もあり指紋を 鑑識することもできる」と指摘した。改正案には身分証提示を要求できると規 定されているだけで、その拒否権の規定はない。ムン教授は「もし身分証提示 が強制される場合には、強制捜査の段階で認められる陳述拒否権が犯罪捜査と 区別される任意的手段の職務質問では認められない結果となる」と話した。続 いて「任意手続きが強制手続きに変質するので身分証の提示を拒否できるよう にする規定をおかなければならない」と指摘した。

指紋確認は自分の情報決定権の侵害

また改正案3条の2では、身元確認ができない場合、縁故者や対象者の同意を得 て指紋の同一性を確認する方法などで身元を確認できるようにした。ムン教授 は、「身元確認を目的として指紋の同一性を確認するのは、任意手続きとして の身元確認の範囲を越え、任意手続きに適した手段ではない。指紋確認は過剰 禁止に反しており、自己情報決定権を侵害する違憲的性格を持つので削除すべ き」と主張した。

恣意的な任意同行

職務質問は身分証提示などの身元確認につながる可能性が高く、身分証がない と任意同行につながる。市民の立場で警察の任意同行要求だけでも萎縮したり 脅迫的になる。ムン教授は「任意同行は任意手段だけで、原則的に任意同行そ のものを認めてはならない」とし、任意同行を要求された相手方は同行の要求 を拒絶できず、警察官は同行要求をする時に拒否する可能性があることを相手 方に知らせなければならず、こうした内容が含まれるのは当然だと指摘した。 一方、改正案は3条の3第1項2号で質問や身元の確認が交通の邪魔になる場合、 任意同行を要求しているが、これに対してムン教授は削除すべきと主張した。

改正案3条3の4項では、弁護人の参加権を規定しているが、例外理由を大統領令 で規定すると、あるいは弁護人の参加権が制限される可能性があるため、例外 の理由を法律に明確に規定するように提案した。

所持品検査拡大および車両検問検索の根拠を用意

改正案3条2項は物品の所持に関して、凶器、武器に限定せず、『その他、危険 な物』を含め、所持品検査の範囲を大幅に拡大した。また3条3項で、現行の警 職法にはない車両などに対する職務質問および車両積載物検査に対する根拠を 用意した。

これに対してムン教授は「外側の検査だけを認めるいわゆる『stop and frisk』 原則の範囲をはるかに逸脱した検査を認めており、令状のない事実上の押収捜 索を広範囲に許す可能性がある」と指摘した。ムン教授は「警察の任意的な判 断で自動車検問の対象が拡大する恐れがあり、令状なく無制限な自動車検問が 行われる可能性がある。強制手続きで用意されないようにするのなら拒否権が 明示されなければならない」と話した。

改正案9条の留置場内の処遇問題に関してムン教授は「警職法が留置場に関する 規定をおくだけでなく、留置人への身体検査、所持品検査、危険物提出要求な どを規定するのは、警察法の体系上問題がある」と指摘した。代案としてムン 教授は、改正案ではなく現行法の内容通りに留置場をおくという内容だけで、 身体検査などの内容を含む新設内容を廃棄するか、ドイツ警察法のように受刑 者または未決収容者と区別される処遇内容を規定することが必要だと提案した。

改正案は警察装備の種類を10条2に規定して、装備の使用基準は大統領令(警察 装備使用基準などに関する基準)で規定する。これに対してムン教授は「警察装 備の使用は国民の身体を侵害し、国民の基本権を直接制限するので種類別に法 律で使用基準を明示するのが妥当だ」と話した。また改正案10条5項は催涙剤お よびその発射装置を新しく導入したり変更する場合、公聴会を開催して国会に 安全性検査報告書を提出すると規定しているが、その対象を催涙剤以外の装備 にも拡大しようと提案した。

不審検問の強化方向には啓明大警察行政学科のイ・ソンヨン教授が「テロや多 重犯罪から法益を保護するという行政警察的な目的を補完するのは、司法警察 と行政警察作用の適切な均衡をとるという点で肯定的に評価」した。イ教授は 「爆弾テロや地下鉄放火など、重大な法益侵害の危険を防止する行政警察作用 としての所持品検査は、令状主義が適用される対象ではない」と反論した。ま たイ教授は「改正案に『危険物』でも『公共の安寧に危害を及ぼす恐れがある 物』等を調査対象に追加し、その対象が不明確で過度に拡大するのは立法技術 的な側面で不確定な概念を使用するのは避けられないだけでなく、その判断に おいて警察の裁量が認められず完全な司法的審査の対象になるという点で論争 の対象にならない」と話した。

この日の討論会でムン教授は「現行法にある既存の手段でも警察業務を遂行し 危険を防止するのに不足しないのに、警職法改正案に△身元確認、△留置場で の身体検査、△危険物提出要求などを新設して警察の権限強化を試みるのは納 得できない。したがって改正案は直ちに撤回されなければならず、もし改正す るのなら国民の人権を保障する方向で新しく議論しなければならない。」と話 した。ムン教授は安全のために自由を放棄すると安全さえ保障できなくなると し、安全は自由のために必要で、二つは選択事項ではなく両者は同等に並行す べきだと表明した。

一方、警職法改正案は国会法制司法委員会に係留中だ。改正案が言論を通して 報道されて、警察は不審検問を拒否する権利を入れるなどの補完措置を発表し たが、全般的な骨格はそのまま維持するという立場だ。(人権オルム)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-09-03 17:13:56 / Last modified on 2010-09-03 17:13:59 Copyright: Default

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