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「製造業派遣、本当に酷い差別でした」

[派遣労働者インタビュー]派遣業者管理者の顔は一回も見なかった

キム・ヨンウク記者 2010.08.25 08:44

「派遣業者がいくら持っていくのか知りません。一度も考えたことがありません」

現行の派遣法では、製造業で派遣人材を投入すると不法だ。7月22日、大法院が 現代自動車社内下請を不法派遣と判決したのは、独立した事業体と主張する請 負業者(社内下請業者)が、実は人材の供給しかしていなかったからだ。別名、 偽装請負と呼ばれる不法行為だった。しかし韓国の製造業の現場では、相変ら ず不法派遣が幅を利かせている。使用者は知っているが、派遣労働者は不法だ と知らないまま、いつ切られるのか不安な気持ちで働いている。派遣労働者は、 それでも派遣業者に不満はあっても表面には出さない。3か月、6か月単位の短 期契約だから、もっと良い業者を紹介してもらうには、派遣業者ににらまれて はいけないからだ。また、不法派遣判定が立ち上がっても、派遣労働者に戻っ てくるのは解雇や弾圧なので、立ち上がりもしない。

[出処:チャムセサン資料写真]

A氏もそうだった。チャムセサンが会った派遣労働者のA氏は今年大学を卒業し、 条件の良い職を探していたが、金を稼がなければならない状況になり、どこで もいいから就職しようという気持で各種の就職サイトに履歴書を出した。彼が 望む雇用は、からだはきつくても、少しでも賃金が良いという自動車部品会社 だったが、連絡は人材派遣業者からきた。

連絡が来た翌日、業者は面接しようといった。面接で知ったことは、自分の時 給が4110ウォンで水曜は残業がなく、週4日残業すれば150万ウォンを受け取れ るということだった。そして何よりも甘い話は、6か月頑張れば正規職に抜擢さ れ、採用されるという話だった。

「しかしそれは嘘っぱちでした。一日も欠かさず残業するのは我慢しますが、 6か月後に正規職になれるという言葉は真っ赤な嘘でした。後で知ったのですが、 正規職になった人はいたのですが、1年半ほど前に月給や手当てがはるかに少な い子会社の正規職になりました」

子会社の正規職になったという人も、結局賃金が少し上がった別の派遣職員と 違わなかった。

その上、派遣業者はA氏に3か月以内にやめれば不利益になると言った。しかし 派遣業者は面接でも、彼がどんな仕事をするのかは話さなかった。そして初出 勤の日。彼は同じ日、同じ所に売られる男1人、女1人とともに、ある地下鉄の 駅からワゴン車に乗った。ワゴン車の中でも、どんな仕事をするのか知らされ なかった。初出勤のワゴン車の中はぎこちない沈黙が流れた。同じ派遣会社に 所属し、初めて一緒に出勤するが、所属感などは全くなかった。

暫くしてある工団にある工場にワゴン車が到着し、彼らを迎えた人は元請会社 の某次長だった。A氏は次長に案内され、組み立てラインに配置された。初めて 見る各種の機械設備の前に立ち、自分が通信業者で働くことを知った。もちろ ん、A氏は通信業者に就職したわけではなく、人材派遣業者に就職したのだ。

元請業者で働きながら、一度も派遣業者の管理者に会わず

A氏は次長に引き渡された後、たった一回も派遣業者の関係者に会ったことがな い。ただ、時々A氏のように派遣労働者を引き渡す時、遠くから見たことがあっ た。「派遣業者から連絡がくることもなく、労務管理も全くありません」

その上、月給明細書を送る時、封筒の宛先には派遣業者名が書かれていて、作 業チョッキにも派遣業者名が記され、業者の名前は忘れなかった。A氏が派遣業 者に電話したことが2回ほどあった。賃金に関する問い合わせの時だ。一度は元 請会社の創立記念日が休日だが、有給か無給かと尋ねた。結果は元請業者の正 規職職員だけが有給だった。それを聞いて、気分が悪くなるだけだった。

月給を聞くと怒られる。「月給ですか? そんなこと言うな」と顔に怒りがちら つく。「残業すれば150万ウォンのはずだったのに、最初の月は129万ウォンを 受けとりました」

日給32,880ウォン、残業と特別勤務をしてもそれしか受けられなかった。「賃 金恐喝ではありませんが、とても少ないと思いました。あんなに働いたのに」。 彼が見せた月給明細書のある封筒には、送った人が派遣業者で受け取り人は元 請業者とA氏の名前が記されていた。まるで派遣業者が元請業者の職員に金を出 すという形だった。誰が本当に使用者で、どの会社に雇用されたのかは漠然と している。

用役業者が人材紹介料としていくら持っていくのか知っているかと尋ねると、 「そうですね?」と首をかしげた。用役業者にいくら行くのか、初めて考えた という。「賃金や休日を尋ねれば、元請の方針が私たちの方針だといいます。 いつもそんな調子で、そうしたことはただ忘れて暮します」

A氏が見るに、元請業者全人材は200人程度だ。生産職は150人程度だが、無期契 約職と思われる準正規職女性が30人ほど(彼女らは基本給は上がらず賞与金があ るという)だ。派遣は100人ほどで、あとは男性正規職が50人ほどだ。男性正規 職はほとんど30代の中後半で、10年前に通信業界が急成長して正規職新規採用 で大挙して入り、その後、正規職の新規採用は全くなかったことが分かった。

元請社の組み立てラインは80%が派遣職だった。この会社に入った用役業者は 5-6社だ。A氏の仕事は、正規職と完全に混在している。チームに分れているが、 チームが混ざってひとつのラインで働く。核心業務という一部の業務は少数の 正職員がする。その他は正規職と混じって仕事をする。典型的な製造業不法派 遣だ。核心業務と呼ばれる工程も「正職員はスキルが必要な仕事をするという が、3-5か月で正規職と業務シンクロ率が90%以上になる」と言う。

差別がひどくて初日でやめることも

派遣で来た人は、かなりの数がすぐに出て行った。ほとんどは正規職と同じ仕 事をするが、賞与金もなくボーナスもなく、金にならずに差別が酷いのでやめ る。初日に昼食を食べて消える人も多い。それで、入ってから3か月になるA氏 は、もう用役業者から来た人の中で最古参級だ。A氏もいつ解雇されるか分から ない。用役業者はその時になれば一括で電話をかけるらしい。電話の内容は、 「0日まで働いて、出てくるな」だ。

こんな調子で、中小の製造業の派遣労働者たちは、労組などは夢にも見られな い。どうせすぐ他に売られることを知っているから、派遣業者に睨まれないよ うにすれば派遣業者が良いところを紹介してくれるからだ。「派遣は仕事が無 茶苦茶でも仕方ありません。考えてみれば、元請会社はとてもうまく労務管理 を構成しています。初めて入った時から正規職は7-8年になる人で、派遣は6か 月後に分かれるのが当然だと思う感じがします」 A氏が属する元請業者の社長 も「労組を作ればすぐ会社を売ってしまう」という言葉を頻繁に言っている。

同じ派遣労働者の間でも、6か月以内に出て行く人なので、互いに紐帯関係を結 ばない。5-6社の派遣会社が混じり、横で仕事をするが、派遣労働者どうし一度 も会食などをしたこともない。派遣業者が違うと、労務管理や経営が独立して いて、他の派遣業者の間でなじめない。元請や派遣業者に所属感もなく、不満 はあってもそれまでだ。「正規職も『いつやめるか』というほど処遇は良くな いが、それでも働けさえすればという気持なのでしょう。それで労組を作る気 は全くないようですね。韓国で暮す普通の人が税金を払い、家賃を払って、積 金払って暮しますが、命賭けで頑張らなければいけません」

一度元請業者に売られたら、派遣業者の管理者の顔を一度も見ない派遣労働者 のA氏は、誰が自分を雇ったのか、毎日あやふやだ。月給明細書を送ってくる所 は派遣業者だが、まさに勤怠管理は元請業者がする。それでも賃金問題を聞く 時は派遣業者に聞く。答は元請の方針に従うというだけだ。「派遣勤労者保護 などに関する法律(派遣法)」は、コスト削減のために人材供給業者による労働 者の買売をわからなくさせる手法だと言っても言い過ぎではない。

製造業派遣問題は二極化などの深刻な社会問題になっているのに、雇用労働部 は製造業不法派遣の全体を実態把握することは不可能だとだけ言う。さらに大 きな問題は、不法派遣業者とわかっても処罰が軽いことにある。だが派遣労働 者は解雇されたり、また他の便法で偽装請負の仮面をかぶって請負社職員とい う名で残る。派遣地獄の悪循環だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-08-27 03:49:13 / Last modified on 2010-08-27 03:49:17 Copyright: Default

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