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韓国:MB 3年、『女性』が消えた
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MB 3年、『女性』が消えた

[連続寄稿、MB3年](12)性平等意識の不在と女性政策の失踪

イ・ミョンホ(慶煕大英文学科) 2011.06.07 00:47

韓国社会の重要な転換期だった1980年代を経て、韓国女性運動は飛躍的に成長 した。こうした女性運動の成果に基づき、1990年代から女性差別的な法制度と 社会文化的な慣行を撤廃し、性平等(gender equality)を指向する多様な政策と 制度改善が活発に進められてきた。制度化による副作用がなかったとは言えな いが、全体的には市民社会部門の女性運動と国家部門の女性政策は、肯定的な 相互作用を与え、同伴成長してきた。文民政府、国民の政府、参与政府を経て 本格化した女性政策は、女性発展基本法の制定(1995)、女性部の新設(2001)、 性別影響評価の導入(2004)、女性割当制の導入など、性主流化のための政策の 軸を作り、いわゆる女性人権3法(性暴力特別法、家庭暴力防止法、性売買防止法) の制定、戸主制の廃止(2005)など、女性の人権向上のための制度的な装置を ある程度用意した。こうした制度的な基盤の上で李明博政権が遂行すべき課題は すでに用意されている法と制度を補完し、これに実効性を持たせるように推進 することで、性平等社会に進む実質的な措置を実施することだった。

あってもなくても良い女性家族部、予算1兆1994億ウォン-〉539億ウォンに削減

だが李明博政権は、発足の初期から退行的な女性意識を表し、事実上、性平等 政策を放棄した。不適切な人物を女性部長官候補にして国民の嘲弄の中で落馬 することになり、女性意識や女性政策への専門性が疑われる人物を長官に任命 した。女性部の廃止を進め、女性界の強い反発にぶつかった。紆余曲折の末、 女性家族部は女性部として存続することになったが、保育を含む家庭に関する 業務を保健福祉部に移管し、予算や組織が大幅に削減され、その地位と影響力 も大幅に下落した。予算は2007年の1兆1994億ウォンから2008年は539億ウォン と、1年で95.5%も減り、職員の規模は100人程度の超ミニ部署に転落してしまった。 2010年に保育業務を除く家族、青少年業務を女性部に復帰させ、女性家族部に 拡大して予算もある程度増やしたが、女性政策を専門担当する主務部署としての 役割と地位を回復するには非常に不足だ。

執権3年間の李明博政権下で、女性家族部がした事は、女性部の基本業務である 女性の雇用創出、脆弱家族の支援事業だといってもいい。これで2007年大統領 選挙の時、「両性の平等に対する専門担当部としての機能強化が必要だ」とい う女性界との約束は破棄され、「先進国なみの両性の平等を実現した」という 李明博政権100の国政課題はむなしい修辞に終わっている。李明博政権執権以後、 性平等意識に基づく総合的な女性政策はなくなり、民主政府10年間で女性界が 精魂を込めて積み上げた女性家族部の役割と機能は縮小された。女性政策に関 しては、李明博政権3年は言わば『失われた時期』だ。一言で性平等専門機構と しての女性家族部が見えず、女性政策が失踪したことが李明博政権3年の女性政策 の実状だといえる。

[出処:チャムセサン資料写真]

アルファ・ガール? 意図的錯覚現象...貧困女性は生存の威嚇に

韓国は性不平等指数が138か国のうち20位(2010年国連開発計画)、性格獲得数 134か国のうち104位(2010年・世界経済フォーラム)を記録している。統計庁が 発表した2010年の15歳以上の女性が経済活動に参加している割合は49.4%で、 OECD平均の61.3%、日本の62.9%、米国の69%と比べて、大幅に低い。女性の賃金 労働者のうち正規職は47%でしかない。女性専門管理職従事者とホワイトカラー 事務職を含む、いわゆる『良質の雇用』の割合は、全女性就業者の39%に過ぎな い。女性人材は相変らずサービス、販売業、単純労務職、農林、漁業など単純 低賃金職種に集まっており、女性の賃金は男性の66.2%に留まっている。2010年 の合計出産率は1.24で、186か国のうち184位だ。

政府は先進韓国への進入を叫んでいるが、指標で現れている韓国女性の人生は、 後進国の水準から抜け出せずにいる。社会の一部では『アルファ・ガール』の 勢力拡大云々とし、まるで女性上位時代が到来したかのような錯覚効果が起き ているが、現実には多くの女性は相変らず貧しく、味気なく、職場と家庭の 両方に挟まれた境遇から抜け出せずにいる。

問題は、この状況が李明博政権になって改善されないばかりか、一部の中上流 層の女性を除いた多くの女性の生活の条件と質は、むしろ悪化している点だ。 仕事と家事労働の二重の負担で女性の苦痛は続き、女性が低賃金の非正規職に 追い出される現象も改善されるどころか、むしろ深刻になっている。経済危機 で女性の解雇と不利益は増加しており、物価上昇率にも満たない最低賃金引上 げで、最低賃金未達者の60%以上を占める貧困女性層は生存の危機に追いやら れている。失踪する性売買防止政策で、新種・変種の性売買と海外性売買が猛 威を振るい、家庭暴力と性暴力被害女性は相変らず国家から適切な救済と支援 を受けられない。移住女性は韓国の家父長的な家族構造を支える資源として 活用され、女性としての人権を尊重されない。

方向設定から間違っている低出産高齢化計画

柔軟勤務制は非正規職女性の賃金下落と雇用不安を誘発

韓国女性団体連合は、2009年2月、李明博政権の女性政策1年を「性平等政策の 失踪」、「女性の人権意識とジェンダーガバナンスの不在」、「家族保育政策 の後退」、「スローガンだけの女性雇用創出」の4つに要約した。不幸にも2年 という時間が流れた今、こうした評価は相変らず有効だ。2010年10月に確定した 第2次低出産高齢化基本計画は、政府が深刻な低出産問題の解決法を提示して、 目前に迫った高齢化社会対応政策を提示しなければならなかった。だが、方向 の設定から間違っているという激しい批判に直面した。

韓国女性の出産率が低い理由は、多くの女性が結婚を忌避し、出産を恐れてい るためだ。結婚して子供を産むことがあまりにも大きな負担なので、事実上、 結婚拒否と出産ストライキを選択しているのだ。したがって低出産問題を解決 するには、結婚、妊娠、教育問題を総体的に把握し、解決策を提示すべきであり、 狭い人口政策的な次元からのみ接近してはならない。女性は単に出産率向上の 対象ではなく、最適の環境を考慮して出産を選択する主体だ。女性の人格権と 自己決定権の省察のない低出産対策は無視されるほかはない。

第2次低出産高齢化基本計画案の核心は、育児休職40%定律制、配偶者出産休暇 有給3日、柔軟勤労時間制拡散、自律型保育園導入が代表的だ。仕事・家庭の両 立という政策をしっかり進めるには、市場や個人ではなく、国家が保育の基本 的な責任を一手に引き受けて、女性だけでなく、男性を含む社会全体が家族の ケアと児童養育を分けあう政策を提示しなければならない。最近の調査によれ ば、韓国の女性の71%は出産を契機に職場を止めており、妊娠と出産による人事 上の不利益を職場生活の最大の問題としている。

こうした現実で、果たして女性は育児休職と柔軟勤務制を自由に使用できるだ ろうか? さらに、女性労働者の53%を占める非正規職女性労働者が、『クビ』の 危険を甘受して育児休職と柔軟勤務時間制を申請するのは事実上、不可能だ。 非正規職の女性が産前・産後の休暇と育児休職を使えるようにするには、雇用 保険の加入率を上げる政府の努力が先行すべきで、最低賃金水準以上の給与が 支払われなければならない。こうした給与の引上げがなければ、育児休職 40% 定律制は育児休職費用の差別化、つまり低所得の女性は育児休職の費用も少ない という貧益貧現象を招くだろう。

柔軟勤務制は、一部の専門職女性を除く多数の非正規職女性労働者には賃金の 低下と雇用不安定を抱かせる口実として作用する憂慮が高い。柔軟勤務制を導 入するためには、短時間勤務と全日制勤労の相互移動と同等な待遇が保障され るべきで、公保育が画期的に拡充され、男女の賃金格差が是正されなければな らない。こうした措置を積極的に取った後、柔軟勤務制を導入しても遅くない。

失踪した性平等意識の回復が急務

李明博政権になって、性平等社会に進むための韓国女性の歩みにブレーキがか かった。何よりも性平等という問題意識そのものがなくなったことが、最大の 損失であり、後退だといえる。労働市場の性差別と貧困の女性化、女性内部の 二極化、女性のケア労働に過度に依存する家父長的な家族制度、相変らず続く 家庭暴力と性暴力、新種の性産業の奇襲と女性の体の商品化など、韓国の女性 が向き合う現実は厳しい。チャン・ジャヨンの自殺で克明にあらわれた女性の 芸能労働者の非人権的な状況は、新種の性奴隷社会を連想させる状況だ。だが、 自殺の形をとる事実上の他殺が女性に起きている一方で、今、女性問題はすべて 解決したという錯覚現象が私たち皆の目を曇らせている。

平等の主張は、女性の自由を遮る強要された性規範と性差別的な慣行の撤廃を 要求し、男と女を同じようにしようということではない。差別のない世の中が すべてを同じようにするのではない。差別撤廃と機会均等は、さまざまな差異 の存在を可能にする前提条件だ。私は、フェミニズムがこの前提条件を得るた めの闘争であり、この闘争を通じ、女性ばかりでなく、多くの社会的少数者の 人間的な可能性を拡大したと考える。人間的な可能性の実現のために、長い戦 いの過程を楽しく、愉快に、しかし真摯で激しく引っ張っていくためには、何 よりも李明博政権下で失踪した性平等という問題意識を回復することが急務だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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