レズビアン労働者ハナ、トランスジェンダークィアー労働者リナの話
[世界女/性労働者大会企画連載]N個の性、N個の労働、N個の労働者、N個の労働現場(2)
キム・ハナ、リナ 2018.10.05 16:32
[企画者の言葉]
10月27日に清渓広場プレミアビルの前で世界女/性労働者大会が開かれます。
世界女/性労働自大会は、労働の性別化と性的階層の中で非価値化されて行く労働を表わし、
直接私たちの労働を語り、宣言する場です。
この企画では、第1回世界女/性労働者大会準備委員会は、
今までなかった女/性労働の現場と多様な女/性労働者たちの話を伝えようと思います。
(
世界女/性労働者大会FaceBookページ/リンク
)
[出処:ピクサベイ]
レズビアン自動車整備労働者、キム・ハナ氏の話
大学に通ってからあれこれたくさんのアルバイトをしました。
飲食店、浴場清掃、遊園地運営者、ホテル調理士補助、
ウェートレス、バナナ農場、ホテル ハウスキーパー、スーパー販売員等等。
アルバイトをする時には最低賃金で働き、一番難しいことを引き受けると言いながらも、
分からない疎外感を感じました。
若いから、小遣儲ぎの水準だからなのか、
社会に出て就職をすれば変わるだろうと考えました。
27歳で法律事務所の事務職に就職しました。
専攻を生かしてがんばりたかったのですが、あまりにも曖昧な位置しか与えられませんでした。
朝に出勤して、昨日使ったカップを洗い、一日を始めました。
初めての6か月間はすべての職員が使った個人のカップまで洗いました。
後にはお客さん用のカップだけを洗うことを血を吹くように闘争して争奪しました。
私の次に入ってきた人に、これだけは譲りたくありませんでした。
私にとって重要で、経歴になるような仕事は与えられませんでした。
書類のお使い、郵便物のお使いをしながら1年経ったようです。
年が若くて経験がなく、実力が足りないからだろうと考えました。
時間が経って「私の仕事」というものができましたが、
実力と経歴を積んだというよりも、いつも代替可能な付属品のような思いが拭えなかったようです。
[出処:ピクサベイ]
ある日、周囲を振り返ると女性職員の姿と男性職員の姿が見えました。
主導的なことをする女子職員は実際、見つかりませんでした。
まるで班長は男が、副班長は女子が、といった感じが社会でも相変わらずで、
そこにこれ以上いることは無意味になりました。
そして30歳が近づく頃、私は仕事を辞めました。
技術を学んで歳を取っても仕事を辞めなくても良い職業を探したかったです。
しかし与えられた状況では選択肢は多くなく、
進入障壁が低くて、社会が提供する再就職教育で無償で6か月間整備学校に通い、
自動車整備技能士の資格を取って、やっとカーセンターに就職しました。
社長は私に女性として特別な何かがあると期待していたようです。
細心さ? 親切さ? まめ?
私には何もなく、その上技術もありませんでした。
学校で習い、国家が保証した資格は事実、実戦では使い道がありませんでした。
ミスだらけでご飯だけはたくさん食べる「女性らしい」ところのない女性整備士を
社長は最低賃金にも満たない1か月100万ウォンほどを払い、
それも惜しんで2か月でクビになりました。
再就職するまで3か月かかりました。
自動車整備職業群での女性の業務はほとんどがレセプション、経理の仕事で、
たまたまアドバイザーとして相談する仕事があるだけでした。
しかし私は直接車を直したかったし、そのような仕事を探すのはとても難しいことでした。
[出処:ピクサベイ]
だが奇跡的に、労働者30人程度で規模が大きい1級整備所の一般整備パートでまた働けるようになりました。
また働けるようになってうれしかったのですが、
大きな事業場なのでお客さんも絶えませんでした。
退勤して家に帰る時、焼酎1本を買って、ラーメンと共に飲んで寝て起きて出勤することを繰り返しました。
仕事を始めて1か月程度、この生活をしていたようです。
仕事がつらくて、全身が痛くて、家に帰れば何もできずに、睡眠ぐらいはしっかりとりたいというようでした。
その事業場も初めて女性を一般整備士として雇用した状況なので、
私の存在は実験対象で、すべて私が上手くやれるかどうかを見守っているようでした。
私は誰よりもよくやり遂げたい気持ちで本当にがんばりました。
そこは男性職員のシャワールーム、休憩室、更衣室、個人の衣装棚もありましたが、
女性職員にはありませんでした。
男の職員はほとんどが現場で働いてたくさん汗を流して服が汚れ、
退勤する時にシャワーをして服を着替えました。
しかし女性職員はほとんど受付に座って働き、職員数も男の職員と比べて少ないため、
女性職員の空間は作ってくれませんでした。
私には空間が必要でしたが費用をかけて作ってくれと言うのは負担で恥がないと思いました。
私だけでなければ何の問題もなかったでしょうが、
私に仕事をさせてくれることだけでも感謝するのに、
そんなものまで作ってくれと言うことができませんでした。
少し親しくなった同僚は私の結婚、容貌、態度について話す時、
礼儀など最初からなかったかのように「ハイヒールを履いて働け」、
「いくら油で汚れる仕事でも、出勤する時は化粧してスカートを履いて、
作業服に着替えなければならない」、
「女なら女らしくふるまえ」といったセクハラになりかねない言葉を何ごともなく吐きだしながら、
私を心配するかのように話しました。
それでも私が耐えられたのは、ある程度平等な位置で同僚として「お前もな」
というような返事ができたためです。
しかし実は傷を受けないわけではありませんでした。
そんな言葉を聞きながら、私は「社会性を育てろというのが、こうした言葉を聞き流せということなのか?」と悩みました。
そして経営者は、毎月達成した技術工賃(売り上げ)が多い人を優れた労働者であるように褒め、
低い工賃を記録した労働者は能力がないと追い立て、
賃金を上げない根拠に使いました。
何人かの同僚と私はこれは不当だとし、工賃を平準化するために努力しました。
こうした努力にもかかわらず、劣悪な労働環境、低い賃金、構造的な搾取でこれ以上は耐えられず、
少しでもより良いところを探して離職し、
今はそれでも少し良いところで仕事をしています。
私が身を置いていた職場には一か所も差別がなかった所はありません。
少しずつ良くなっているようですが、すでに男性中心の労働社会で、
女性の私の労働力の必要性と価値を自ら証明しようと努力しました。
しかし今考えてみれば、重いものは一緒に持てばよく、
誰かに仕事が集中しないようにうまく分配すればよかったのです。
事実、労働者を一つになれないように、大きく女性、男性に分け、
生産力の基準で分け、
職級で、年次で分けるのは、
資本家が労働者をもっと簡単に搾取するための手段なのではないのかと思います。
[出処:ピクサベイ]
トランスジェンダーサービス職労働者リナ氏の話
「装い労働に賃金を払え!」
2016年、女性労働者だけにメーキャップなどの「容貌装い」を要求したCGVを糾弾するアルバ労組デモのスローガンでした。
見た瞬間、一発頭を殴られたような衝撃を受けました。
何年間も毎日出勤すると同時に化粧をしてきましたが、
化粧もまた労働であり、
私が社会で女性として認識される労働者なので不当に強要されてきた、
賃金を受け取れない労働だという考えは一度もしたことがなかったからです。
これは私が経験した消された女/性労働の話です。
サービス職女性労働者が持つ顔
私はトランスジェンダーです。
自らをFTMトランス男性スペクトラムのどこかに位置する人と正体化していて、
まだ医療的なトランジションはしていません。
同時に10年近くサービス職で「女性労働者」として働いてきたりもしました。
女性労働者だけに強要される化粧は私にとって空気のように当然のことでした。
メーキャップやヘアーが少しでも乱れれば、指摘されて罰点が賦課されるなど、
人事上の不利益があるのは日常でした。
同じ業務を遂行する男の同僚は「すっきりしたヘアーと髭そり」だけでも働くのに何の支障もありませんが、
女性職員は眉毛やアイシャドウ、唇の色、ボールタッチまでいちいち指摘されたりしました。
「きれいな赤いリップスティック」など、メーキャップカラーが具体的に指定されたところもありました。
上司はデパートブランドのリップスティックを模範的なカラーの例にあげました。
10時間を越える勤務時間に落ちないメーキャップを維持しなければなりませんが、
女子職員のユニフォームにはポケットがなく、
別にパウチを持って歩かなければなりませんでした。
女性はフルメークすることが勤務中に持つべき顔の基本価値のようでした。
同じように、何も正しくないマン唇でも、
「病気に見える」、「唇に何かちょっと塗れ」という指摘は私だけに戻ったりしました。
サービス職では女性労働者が持つことができる容貌は決まっています。
男のユニフォームは大きくて太めのサイズもいくらでも備わっていますが、
女のユニフォームは55、66までしかないという勤務先も多かった。
明らかに規定上では女子職員もショートカットにできると出ていましたが、
実際の勤務現場で短い髪の女性職員はたった1人も見つからないことも多かったです。
[出処:ピクサベイ]
「もう男の更衣室に行かなければならない?」
私がトランス男性ではなくても「私たちの店の花」である女子職員なので、
あれこれ考えてみると容貌を計画しろという指摘は相変らず負担でした。
そういう状況で、ジェンダーディスフォリア
(gender dysphoria:
トランスジェンダーが指定性別と性自認が一致せずに感じる
身体的・社会的な不便や不快感)は大きくなって行きました。
そんなある日、サービス職として勤務を始めてから、
初めて髪をバッサリ切って出勤しました。
そして小さな逸脱ではない逸脱をずっと続けていきました。
これまで着ていたユニフォームが小さいという言い訳で、
男性用ズボンのユニフォームを着ました。
性別を問わずにメガネを着用してはいけないという規定がありましたが、
男の職員は眼鏡をかけて働いてもあまり指摘されません。
なぜか負けん気がわいて、
隅っこに放り込んでおいたメガネをかけて出勤しました。
初めは丁寧な言葉で指摘がありました。
私が担当するポジションは、ほとんどが顧客と直接向き合って応対するので、
職場の「花」なのに、とても簡単なことではないかと。
前の方が可愛かったって。
私は今の方が良いと思いますが、と叫びながら、
変えた服装を固守すると、ある上司はこうも言いました。
「リナさん、もう後ろ姿だけを見ると女かどうかもわからない。
男の更衣室に行かなければならないんじゃない?」
今は笑いながら、裏で思いがけず性自認を尊重されたと冗談で言いますが、
当時はただ不快でしかありませんでした。
それでも実際に男の更衣室を利用できたとかどうしたという事はありませんでしたから。
私が働いていた所で「女性」とは何だったのでしょうか?
髪が短くてズボンを履いた女性は、サービス職労働者として、
また勤労者として存在することもできませんでした。
髪の毛の長さと化粧の有無が顧客に対する態度に支障を与えるわけでもないのに。
私が女でなければ変わる問題でしょうか?
実際にも私の性自認は女性ではないので、
もしトランス男性だとカミングアウトすれば
不要な化粧労働から抜け出せますか?
トランスジェンダー、または性少数者として働くこと
多くのトランスジェンダーが求職そのものが困難だったり、
医療的トランジションを行うことで、
これまでキャリアを積み重ねてきた分野での経歴の断絶を経験します。
私はまだ医療的トランジションをしていないのですが、
職場でカミングアウトせずに女性として働けば
「トランスジェンダーだから体験する」労働現場での困難は相対的に小さいのではないかと考えたことがありました。
相対的にユニフォームや化粧の規定が自由な職場で働くようになりました。
たまたまガールフレンドがいるという事実を上司に見つけられ、
レズビアンかという質問に対して率直にトランスジェンダーだと答えました。
その後、ズボンのユニフォームを着たりすると
「そこまでやるのか」とし、
これまでにはなかった容貌指摘が突然入り始めました。
カミングアウトしなかったのにトランスジェンダーとして威嚇を感じたこともありました。
あるホテルのレストランで働いていた時、
トランスジェンダー女性のように見える客がレストランを訪問しました。
ある職員は他のポジションで働いていた私をわざわざ無線で呼び出して、
その客を見物させ、
「おもしろいものを見せたのに私が有難くないのか」と言いました。
本当にトランスジェンダーがおもしろい見せものだと信じている好意(?)からの行動でした。
男だろうか、女だろうか、鳥肌が立つ、と言い、
職員が集まる空間でその客についてしばらく騒いだりもしました。
共に働いていた職員にトランスジェンダーとは、ただ不思議な見せものでしかなく、
自分の近くにいるかもしれない同等な存在ではありませんでした。
当時、私はほとんどの知人にカミングアウトを終えた状態で、
トランスジェンダーの人権に関するさまざまな活動もしていましたが、
それでも職場ではカミングアウトはできませんでした。
トランスジェンダーであることを表すことができていれば、
果たして当事者の私にも、その客を見物させてくれたでしょうか?
サービス職。
カミングアウトしないトランスジェンダー。
女性。
性少数者。
労働現場での私は、多様なアイデンティティの中で存在してきました。
女性労働者だったので業務外でも化粧労働を強要されなければならず、
トランスジェンダーとして異なるジェンダーの表現をするたびに圧迫を受け続けてきていました。
カミングアウトしなくても他の性少数者が味わう差別と暴力を見て、威嚇を感じたりもしました。
労働現場での差別と排除は一つの名前では説明できません。
われわれはいつも多くの名前を持って生きていくからです。
より多くの人々が自分が経験した生活の様相を、
差別されたり排除された労働の経験を、
それにより消されてきた名前の労働を語れればと思います。
いつかはその名前がそのまま静かに尊重されるようにね。
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
Created byStaff.
Created on 2018-10-11 09:00:32 / Last modified on 2018-10-11 09:27:01 Copyright:
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