本文の先頭へ
韓国:「サムスンMERS」、サムソン資本の本質
Home 検索

「サムスンMERS」、サムソン資本の本質

[寄稿]真実を隠すサムスンと朴槿恵政権

ソン・ミア(江原大学校予防医学教室) 2015.06.16 18:07

まだ「サムスン」に幻想?

朝起きれば今日のMERS患者が何人なのかを調べることが、もう一か月続いている。 2015年6月16日現在、MERS患者は154人、死者は19人、隔離者は5600人余りに達する。 これに加えてずっと続いている主題がもう一つある。 まさに「サムスンとMERS」で、寝て起きればサムスンとMERS関連ニュースで世の中が大騒ぎになる。

今回のMERS拡散は、全国民にサムスンへの幻想を破らせたばかりか、 サムスンの本質をまた知らせた事件だ。 サムソン資本がいかにMERS拡散に寄与したのかを具体的に調べよう。

まずサムソン資本は、MERSが全国的に広がる決定的な原因として作用したMERS14番患者が 5月27日から29日まで、サムスンソウル病院の応急室にいた時、 早急な確認も隔離措置もしなかった。 サムスンソウル病院はすでに5月20日、応急室にきた1番患者にMERSと診断していた。 では5月27日に来院した14番目の患者はなぜ5月29日まで、ただ応急室に置いておいたのだろうか? 一週間後に1番患者と同じ地域、同じ病院、同じ階の病室にいて、似た症状で来院した患者に、 それも居住地が平沢で、まさに平沢から来た患者にどこからきたのかと一言でも聞いていれば良かったのに、彼らは何の問診もしなかった。

ソン・ジェフン サムスンソウル医院長は6月7日の記者会見で 「応急室に置かれたMERS選別質問項目紙には中東旅行歴やMERS患者露出歴がなく、 当時はMERSが疑われる患者と見る根拠がなかった」と本当に恥ずかしい告白をした。 6月4日、セヌリ党との懇談会でソン・ジェフン サムスンソウル医院長は、 14番目の患者がMERS患者に接触していたという情報を5月27日の来院時点では患者も病院側も知らなかったといった。 ところが5月27日頃なら、すでに平沢聖母病院では5月15日から29日までに37人の患者が発生していた。 また、5月29日に平沢聖母病院は保健当局により閉鎖された。 それでも14番目の患者について何も知らなかったということは、 サムスンソウル病院側が嘘で自分たちの行動を弁護しているか、 患者を診断、治療する能力がないと告白しているのと同じだ。 釜山のある内科医院で釜山1号のMERS患者を発見した時、 その医院の医師は患者との面談で、患者がサムスンソウル病院に行った事実を確認してMERSと診断した。 一介の医師にもできることをなぜ巨大独占病院ができないのか?

二つ目に、サムスンソウル病院は5月29日以後も応急室を全面閉鎖せず、 露出患者の管理も不徹底だった。 平沢聖母病院は5月29日から自主的に閉鎖し、保健当局は5月15日から29日に平沢聖母病院の訪問者を全数調査した。 それなのに、サムスンソウル病院に対しては6月13日まで、応急室の閉鎖もしなかった。 サムスンソウル病院側はずっと「何の誤りもなかった」、「国家の手落ち」だと言い逃れを続け、 「疾病管理本部から14番目の患者がMERSが疑われる患者だという通報を受けた5月29日からは、 患者675人、職員218人の隔離を始めた」と主張する。 しかし彼らは決定的に6月13日まで、応急室の閉鎖も病院の閉鎖もしなかった。 今もサムスンソウル病院で接触した患者だけでなく、 医療陣、患者の家族、病院の訪問客に感染が広がっているのを見れば、 サムスンソウル病院側が公言する「隔離措置」が虚構だったことがわかる。

またサムスンソウル病院は6月7日に記者会見を行って、 「1番MERS感染者に接触した人数は患者285人と医療スタッフなど職員193人と確認され、 14番感染者に接触した人数は患者675人、職員218人」だと説明した。 彼らが1番MERS感染者に接触した患者と医療スタッフを実際に隔離していれば、 14番目の患者は自然に隔離されただろう。 だが彼らは隔離しなかった。 ソン・ジェフン院長が記者会見で言及した通り、 単に「5月29日の午後9時5分から14番患者を隔離して応急室を制限」したというだけだ。

サムスンソウル病院は6月14日、 「新規の外来入院患者を一時的に制限し、 応急手術を除き手術と応急診療も一時中断する」とし 「徹底した管理でMERSの追加拡散を防ぐ」と約束した。 だがその後もサムスンソウル病院で接触したが病院の防疫網の外にいて、 あとになってMERS感染と診断された事例が続々と増えている。 151番、152番、154番... 最近発生した患者ほど、サムソン資本の「放置」がMERSを拡散させたのだ。 「4次感染」である病院外での感染も、結局はサムスンソウル病院に少しでも立ち寄った患者の家族や訪問客によって広がっている。

三つ目、サムスンソウル病院が政府にMERS露出病院の発表を遅らせたことが、全国的にMERSが拡散する要因になった。 サムスンの力は政府が資料公開もできない程に威力的だった。 サムスンが資料公開を拒否したのは今回のMERS拡散において、最も決定的な原因になった。 こうしたサムスンの威力は、国家権力である政府も超越し、超国家的な力を見せ続けている。 サムスンソウル病院がMERS1番患者と診断された5月20日以後、6月7日までの19日間隠していたのは、 MERSが全国的に流行する決定的な契機になった。

サムソン資本の隠蔽事例は何度もあったが、その代表的な例が「サムスン労働者白血病」、「泰安半島油流出事件」だ。 これまでサムソン資本は「サムスン」という名誉を傷つけるようなことは、何も許容しなかった。 サムスン電子で働いていた労働者の白血病などのガン発生事例が続出し、これを隠すことに汲々とし、 泰安半島での油流出の時にも油を流出させた当事者は謝罪もせず「知らんふり」をし続けた。 今回のMERS患者の発生を隠蔽したことも、サムスン資本の隠蔽方式の一つだ。 サムソン資本は「サムスン白血病」に加えて「サムスンMERS」の汚名をかぶることになった。

「真実隠蔽」のサムソン資本と朴槿恵政権

今回のMERS伝染病の流行時期に政府はサムスンだけを見ていたし、今もサムスンだけを見ている。 MERS事態が悪化し、これ以上その震源地を隠せなくなると、ソン・ジェフン サムスンソウル医院長と崔炅煥(チェ・ギョンファン)国務総理職務代行が6月7日午前11時にほとんど同時に発表した。 いや、わずかな差でサムソン資本が先に発表し、続いて政府が発表した。 政府はサムソン資本に発表権まで譲歩した。 「国家は資本家階級の委員会」という言葉がぴったり合致する状況だった。

また、サムスンソウル病院と同時発表する前の6月5日、 政府(文亨杓(ムン・ヒョンピョ)保健福祉部長官)はMERS拡散の震源地として平沢聖母病院をあげ、 5月15日から29日間、この病院にいた人から患者が発生したといった。 すなわち、政府はサムスンソウル病院を保護するために、平沢聖母病院を指定したのだ。 また、6月7日にも患者が立ち寄った多くの小さな病院・医院を発表し、 サムスンソウル病院が震源地であることを隠すための煙幕を張った。

このように、政府は国民の健康を優先するのではなく、サムソン資本との関係を優先した。 こうした朴槿恵政権のサムスン伺いは、国民軽視で綴られ、 国民はMERSに感染して死んでいかなければならなかった。 サムソン資本一つを救おうとしたが、国家全体の経済が破綻した。 人間の関係が中心ではなく、資本と権力の関係の方が優先されたことによる結果だ。

MERSの流行をめぐるサムスンソウル病院の態度には、人間の生命の軽視とサムスン財閥が超国家的な権力をふるう姿が重なって現れている。 しかしこうした道徳的かつ倫理的な人道主義の側面を別にしても、すでにそこには利益追求という必然的な内在的な原因がある。 資本家は人格化された資本として機能するので、絶えることない利益追求運動だけがその真の目的だ。 利益追求を目的とするサムスン財閥のような巨大独占資本が人間の命を担保にする病院を運営するのは矛盾だ。 こうした矛盾が弾けたのが、まさにMERS事件である。 大病院ほど、患者の治療より患者を通じた利益追求を優先するのだということを今回の事例で見えてくるのではないか?

世界的な科学専門誌のネイチャーは言う。 「MERSは人間の間で広がるウイルスではない。ただし病院は例外だ」。 WHOの専門家は言う。 「MERSウイルスは風邪と同じだから大きな問題はない」。 しかしネイチャーが指摘したように、病院の資本主義医療システムは人間の間では流行しないウイルスも流行させる。 風邪のような軽い症状を起こすウイルスも、巨大財閥独占資本の手にかかれば凄じい兵器に変わってしまう。 その理由はまさにその資本が人間を無視し、金を再優先するからだ。 資本主義の物神崇拝思想のためだ。

サムソン資本は血も涙もなく、人間軽視が敷かれている。 物神性だ。 われわれは今、MERSの後には朴槿恵政権があることを、 朴槿恵政権の後にはサムソン資本があることを見るようになる。 もう本当にサムソン資本に対する幻想を破壊する時だ。 巨大財閥独占資本の非人間的な物神性に果敢に反旗を翻さなければならない。

労働者に転嫁されるMERS危機

サムスンソウル病院からMERSが全国に広がったことで、その危機がまた労働者に転嫁されている。 病院では病気を退治するために、最前線にいる病院のスタッフがMERSウイルスに露出している。 サムスンソウル病院で、5月31日に14番患者と接触した医師(35番患者)がMERSと診断され、 これに続いて6月14日にもやはり14番患者に接触した医師(138番患者)がMERSの診断を受けた。 この二人の医師はどちらも5月27日から29日の間に14番患者に接触したが、 ソウルサムスン病院は隔離措置を取らなかった事例だ。 6月13日には病院移送要員(137番患者)がMERSの診断を受けた。 彼はMERSの症状が出た後も、9日も患者の移送業務を続けてきた非正規職の職員で、 サムスンソウル病院が管理してきたMERS接触者リストには含まれてもいなかった。 建陽病院のある看護師(148番患者)は6月3日、36番確診者に心肺蘇生術(CPR)を施行する過程で感染した。

また、サムスンソウル病院でMERSウイルスに露出した後、地域社会に戻った労働者たちのMERS感染が広がり、その余波が労働者たちの職場に伝播している。 サムスン電子水原事業場の30代の労働者も5月26日から6月1日まで、サムスンソウル病院に入院していた妻の母を見舞って6月13日にMERS確診者であることが判明した。 結局、病院で、そして地域社会でMERS爆弾を受けている集団は、労働者たちだ。 サムスンソウル病院が伝染病の管理責務を放棄したことが、今になって全労働者に転嫁されている。

サムスンソウル病院を労働者と国民に還元させなければならない

ソン・ジェフン サムスンソウル病院院長は6月4日、セヌリ党との懇談会で 「MERS伝播を防ぐ簡単な方法は『隔離』であり、疑わしい患者の隔離さえきちんとやれば、伝播の輪を切ることができる」と語った。 しかし彼の言葉は口先だけの言葉に過ぎなかった。 彼の言う通りなら、5月29日当時、全国的なMERS流行の震源になったサムスンソウル病院を閉鎖しなければならなかった。 ソン・ジェフン サムスンソウル病院院長の口先だけの言葉には歴史的な意味がある。 歴史的に公衆保健は公共の力により形成されてきた。 私的な医療機関が公衆保健に費用を投資する事例は殆どなかった。 だからソン・ジェフン院長の口先だけの言葉は、結局は医療の公共化、医療機関の公共化は私的医療機関の撤廃により形成されるほかはないことを証明するものだろう。

サムスンソウル病院はサムソン資本のものではなく、病院に従事する4000余人の労働者たちのものであり、 社会の再生産に寄与するという面から見れば、社会的である。 病院は社会化されなければならない。 社会の中で、病気により社会活動ができない人たちのための、 再生産のための社会的な空間でなければならない。 今回のことを反面教師として、私的に所有される病院を全国民が使用できる公的な所有にしなければならない。 サムスンソウル病院を労働者と国民のものに還元させなければならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-06-17 06:31:06 / Last modified on 2015-06-17 06:33:13 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について