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韓国:蔵が空になった地方自治体…対策ない「過剰福祉」のため?
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蔵が空になった地方自治体…対策ない「過剰福祉」のため?

「福祉拡大の成果は朴槿恵政権が、責任は地方政府に」

ハ・グムチョル記者 2014.09.05 23:39

増える福祉財政負担の責任について、 地方自治体と中央政府が正面から衝突している。

地方自治体は最近施行された無償保育科基礎年金により増加した福祉予算の負担により、 地方自治体が破産する危機に直面しており、 そのため国庫補助割合を増やすべきだと主張している。 だが政府・与党はこれを「野党の政治攻勢」と規定したり、 地方自治体の放漫な財政運営せいにして逆攻勢をかける姿勢だ。

全国市長・郡守・区庁長協議会(代表会長チョ・チュンフン順天市長、以下 協議会)は 9月3日に全国226人の市長・郡守・区庁長共同で声明書を発表し、 「過重な福祉費用の負担で地方政府が破産の危機に処している」とし 「早急に政府の対策がなければ『福祉デフォルト』(支給不能)事態が避けられない」と明らかにした。

協議会によれば最近の高齢化および低出産対策による福祉政策の拡大で、 自治体の最近7年間の社会福祉費の年平均増加率は11%を記録しているが、 これは地方予算増加率の4.7%の2倍を越える。 さらに昨年から施行されている無償保育全面拡大と今年の7月から施行されている基礎年金により、 地方福祉財政の支出はさらに大幅に増加する展望だ。

このように「金を使う所」は増えるのに、まさに「金が入ってくる穴」は増える兆しが見えない。 協議会は「不動産景気沈滞と取得税永久引き下げなどにより、 地方の歳入条件はますます悪化している」とし 「226の市郡区のうち125か所(54.4%)が地方税で人件費を解決できないのが実情」と吐露した。

そのため協議会は国家的福祉事業の安定的推進のために、 △基礎年金全額を国費支援または平均国庫補助率90%以上に拡大、 △保育事業国庫補助率ソウル40%・地方70%まで引上げ、 △地方消費税率を現行の11%から16%に即時引き上げおよび段階的に20%まで拡大 を要求した。

朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長も9月4日、 民選6期ソウル市政4か年計画を発表する場で、 実際に地方政府の「福祉デフォルト」の可能性があると述べ、 「中央政府が政策だけを決定し、その負担は地方政府がそのまま抱え込んでいるのが実情だ。 このような形で締めていけば、私たちが夢見る普遍的福祉のサービスができなくなる」と指摘した。

政府「ばらまき福祉政策の乱発が問題」

しかし、こうした呼び掛けに対する政府と与党の反応は冷たい。 セヌリ党は9月5日、金賢淑(キム・ヒョンスク)院内報道担当者のブリーフィングで朴元淳市長を狙い 「福祉という緊急性がある問題を政略的に活用し、 最低の財政作りの自救努力もせず、中央政府を揺るがそうとする姿を見せている」とし 「今は民生問題を解決するために、 中央政府と地方自治体が共に協力する時期」と強調した。

文亨杓(ムン・ヒョンピョ)福祉部長官も9月3日、政府のソウル庁舎で記者会見を行い 「昨年末、すでに保育料と養育手当ての国庫補助率を15%に引上げるなどの措置を取ったので、 これから地方自治体の負担は減るだろう」とし、事実上、国庫補助率をさらに上げろという地方自治体の要求に 「反対」の立場を明確にした。

文長官はむしろ問題の原因を「放漫な地方財政運用」に回し、 今後、関係機関の合同作業チーム(専門担当班)を構成して 放漫な地方財政運用の実態を総合点検する意向を明らかにした。

このような文長官の発言は9月5日に崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副総理が冠岳の老人総合福祉館を訪問した場で 「地方自治体は政府の追加支援を性急に要求するのではなく、 歳出構造調整と地方税非課税・減免縮小などの自助努力をまず強化しなければならない」とし 「一部の地方自治体で財政不足を訴えて、 ばらまき福祉施策を乱発するのは矛盾」という指摘と一脈通じるものがある。

地方自治体が福祉財政に対する「中央政府の責任性」を要求しているとすれば、 政府はこれに対して「地方自治体のばらまき福祉政策が問題」という調子で対抗している局面だが、 ここに一部のマスコミも政府に加勢して「ばらまきでは福祉政策」を問題にし始めた。

世界日報は8月29日「『無償昼食』の深刻性を悟る地方自治体の『福祉デフォルト』」という題名の社説で 「教室の壁が割れ、天井が落ちても手を回せないのが地方財政が処している現実」とし 「『対策ない過剰福祉』の後遺症はすでに現実になっている」と強い語調で批判した。

続いて世界日報は「蔵の状態を考えず、選挙のたびにふんだんにばらまき公約を乱発したため」とし 「福祉災難の火を広げないためには、 事業全般の再検討と補完作業が必要」と指摘した。 事実上、普遍的福祉のような福祉拡大政策の中断を注文したわけだ。

専門家「政府は増税の議論を封鎖して地方政府に責任を転嫁」

だが福祉の専門家たちは、問題の原因を 「普遍的福祉拡大」にあるかのように言うのは適切ではないと指摘する。

私が作る福祉国家のオ・ゴノ共同委員長は本紙との通話で 「無償保育の拡大と基礎年金の実施は、すでに大統領選挙の時に政治・社会的合意により実施したもので、 事実上、当時の合意にも至らない水準で施行されている」とし 「ばらまき福祉とは見られない」と断言した。

実際に朴槿恵政権は、大統領選挙の時に無償保育の国庫負担を20%増やすという約束を破り、 基礎年金支給も全老人に払うといっていたのを所得下位70%に制限した。

オ共同委員長はまた 「保守言論は地方政府の放漫な財政運用、 つまり歳出に問題があるかのように話しているが、 本当の問題は劣悪な地方政府の歳入」とし 「今年、中央政府も30兆ウォン内外の財政赤字が予想される状況で、 画期的な国庫補助率の増大は難しいかもしれない。 では財政の拡充についての意志決定権限が中央政府にあるのだから、 中央政府が対策を用意しなければならない」と指摘した。

オ委員長は 「したがって、全国民的な増税の議論が必要だが、 中央政府がそのような議論そのものを封鎖して地方政府に責任を転嫁している」とし 「こうした状況が続けば、地方政府は自主的に行ってきた脆弱階層を対象する福祉事業を減らすほかはなくなり、 その被害はそのまま地域の貧困層が抱え込む状況になる」と見通した。

社会公共研究所のチェガル・ヒョンスク研究員も9月4日、 ビーマイナーが主催した特講で 「政府が拡大した福祉政策に合わせて年末精算の適用率を調整し、 税収を確保するなど、中央政府の歳入構造は一部改善したものの、 地方自治体の収益構造は全く保障していない」とし 「結局、朴槿恵政権は保育科基礎年金など、一部の福祉拡大の成果は自分たちがすべて持っていき、 その責任をそのまま地方政府に押し付けている」と指摘した。

付記
ハ・グムチョル記者はビーマイナーの記者です。この記事はビーマイナーにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-09-07 17:32:52 / Last modified on 2014-09-07 17:32:53 Copyright: Default

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